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側弯症には、明らかな原因がなく発症する特発性側弯症と、明らかな原因を有する先天性側弯症(先天性の椎体変形による側弯)や神経、筋性側弯症(脊髄空洞症、脳性麻痺、筋ジストロフィーなどによる側弯)、神経線維腫による側弯症(レックリングハウゼン病などによる側弯)、間葉系疾患による側弯症(マルファン症候群などによる側弯)、外傷性側弯症(頭部外傷や脊椎外傷などによって起こる側弯)に分かれます。 |
特発性側弯症について |
特発性側弯症とは、明らかな原因がなく脊柱(背中の骨)が捻じれを伴って左右、側方に曲がる脊柱変形です。乳幼児期特発性側弯症(3歳以下)と学童期特発性側弯症(4~9歳)と思春期特発性側弯症(10歳以上)に分かれます。発生頻度は2%程度です。最近では小中高の学校側弯症健診が制度化されたために重度の症例はあまり見られなくなりました。 |
診断 |
●姿勢検査 ①立位で肩の高さに左右差 ②肩甲骨の位置に左右差 ③ウエストラインに左右差 ④脊椎前屈(前かがみ)で肋骨隆起や腰部隆起に左右差を調べます。 ●レントゲン検査 コブ角を調べます。コブ角とは側弯の程度を角度で表したものです。正常は10度未満です。軽度側弯は10度~25度です。中等度側弯は25度~45度です。重度側弯は45度以上です。なお、90%が軽度側弯です |
治療 |
保存的治療(経過観察と装具療法)と手術的治療に分かれます。 治療法は年齢や性別、骨成熟度、コブ角、によって判断されます。 ●骨成熟度 ①stage0 :思春期前で腸骨の骨端線の骨化がみられない時期です。 ②stage1 :10歳前後で骨化が25%の時期です。 ③stage2 :12歳前後で50%の時期です。 ④stage3 :14歳前後で75%の時期です。 ⑤stage4 :16歳前後で100%ですが、まだ骨盤と融合していない時期です。 ⑥stage5 :18歳前後で骨盤部と完全融合した時期です。 ●コブ角 ①正常(10度未満) ②軽度側弯(10度~25度未満) 定期的にレントゲンで側弯症の進行をチェックします。 ③中等度側弯(25度~40度未満) 装具療法の適応となります。骨成熟前の16歳以下が対象です。装具にはアンダーアームブレースが主流です。その他、ミルウォーキーブレースやボストンブレースなどがあります。装具装着時間は1日に18時間以上が推奨されています。着用期間はコブ角やリッサーサインを参考にして決定されます。 ④重度側弯(40度以上) 手術的治療が検討されます。術式は前方矯正固定術と後方矯正固定術があります。近年ではロボット手術やAIの側弯症手術への応用で比較的安全な手術となりました。なお、稀に骨成長後に側弯が進行する症例がありますので、十二分な経過観察が必要です。 なお、現在の高齢者は側弯健診が確立されていなかったため小児期の側弯変形を有し方が、高齢者となり骨粗鬆症による後弯変形が発生して、呼吸器障害や循環器障害、消化器障害を併発し苦しまれている方をよく経験いたします。小児期のおける側弯症健診と中高年における骨粗鬆症健診は大切です。 |
最新の情報 |
●目立ちにくい装具 目立ちにくい装具として、スコリオフィットブレースが開発された。プラスチックや金属などの硬い素材を大幅に減らし、人目に付きにくく、着脱や締め具合の調整も簡単で、長時間の装着が可能になったそうです。(2023年12月13日 福島民友新聞) ●脊柱側弯症の早期発見 思春期の女子に発症することが多い、背骨がねじれるように曲がる疾患、脊柱側弯症の早期発見に、徳島県では、最新型の検査機器を用いたモデル事業に取り組む。最新機器を用いて見落としを防ぎ、手術が必要になる前段階での治療につなげる。側弯症の手術は、背骨にスクリューを埋め込んで固定するという大がかりなものになり、体への負担も大きい。早めに発見できれば、装具による治療で進行を食い止め、手術を回避できる可能性がある。側弯症の検診は、日本では1979年から学校保健法で義務付けられ実施されてきた。2016年からは、小学生から高校生までの運動器検診のチェック項目に側弯症が含まれている。13、14歳女子の側弯症の有病率は2、5%とされる。しかし、学校検診などでの発見率は全都道府県の平均で0、9%とする調査もあり、視触診では見落としが少なくない。こうした状況を踏まえ、最新型の検査機器を購入し2023年に約800人に検査を実施したところ、女子では、約15%が2次検査が必要な要受診となり、受診者のうち8割近くが側弯症と診断された。この検査機器は、裸の背中に赤外線を当てて等高線を映し出し、左右のしま模様の違いで側弯の有無を判別する。(2024年6月4日徳島新聞) |
たはら整形外科 |