橈骨遠位骨端線損傷

骨端線(骨の成長線)は、骨や靭帯、腱よりも力学的に弱いため、軽微な外力(ケガ)で容易に損傷します。橈骨遠位骨端線損傷とは、小児の手首の橈骨の遠位骨端線に発生する骨折です。転位(ずれ)のない骨端線損傷転位を認める骨端線損傷に分かれます。なお、成人では骨端線はありませんので、骨端線損傷は存在せず、橈骨遠位端の骨折として起こります。

症状:手首の痛みや脹れで、手関節の変形や運動制限を認めます。診断はレントゲン検査で確定されます。しかし、転位のない骨端線損傷は注意深く観察しないと「単なる捻挫」として取り扱われ見逃されることがありますので要注意です。したがって、小児が手首を捻挫した際は、常に骨端線損傷を念頭に置き注意深く観察することが肝要です。骨端線の損傷が疑わしければ、2〜3週間後に再レントゲン検査を行います。骨の硬化像(新しい骨が出来る現象)の有無を確認することが大切です。

治療:保存的治療(手術しない方法)が原則です。転位のない骨端線損傷は2〜3週間のギプス包帯(前腕から指の根元まで)を行います。転位を認める症例は、徒手整復を行い3〜4週間のギプス包帯(上腕から指の根元まで)を行います。時に、良好に整復されても、すぐに再転位する(再びずれる)ような不安定な症例は、再転位防止のために経皮的骨接合術(釘やピンのような器具で皮膚の上から骨折部を固定する手術)を行います。徒手整復が困難な症例や粉砕骨折例(バラバラに骨折して関節面がずれている症例)では、内固定術(皮膚を切って骨折部を展開し、プレートやピンなど器具で骨折部をつなぎ合わせる手術)を検討します。

 たはら整形外科