外傷性股関節脱臼について 外傷性股関節脱臼は転倒や転落、交通事故などの強い外力で発生します。脱臼は後方脱臼、前方脱臼、中心性脱臼に分かれます。大半が後方脱臼です。なお骨頭骨折や大腿骨近位部骨折、骨盤骨折などの合併症を高頻度に認めます。 症状と診断 症状は股関節部の痛み、脹れ、運動障害、歩行障害です。後方脱臼では膝をくずして座った状態、いわゆる「女の子座り」(股が内転位、内旋位、屈曲位)の肢位になります。前方脱臼ではあぐらを組んだ状態(股が外転位、外旋位、屈曲位)の肢位になります。いずれも大腿部が短縮します(足が短く見える状態になります)。なお、後方脱臼の際、坐骨神経を傷めると坐骨神経麻痺を来たしますので要注意です。診断にはレントゲン検査やCTが必要です。 治療 腰椎麻酔や全身麻酔にて早期に愛護的に徒手整復術(引っ張るなどして脱臼を元に戻す治療法)を行います。直ちに整復しないと後日、大腿骨頭壊死が高率に発生しますので、6時間以内の整復が望ましいと考えます。整復後は再脱臼防止に入院して下肢の牽引を行います。早期より股のストレッチング、股の筋力強化訓練を開始します。荷重歩行は大腿骨頭壊死の発生を考慮し、整復後1〜3ヶ月目より開始します。 徒手整復が困難な症例や骨折を認める症例では手術的治療(骨接合術や骨片摘出術)が行われます。なお、大腿骨頭壊死や二次性変形性股関節症の発生には注意深い経過観察が必要となります。
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