腰の解剖 |
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腰椎は5個の椎骨(レントゲン側面像)からなります。前方部分と後方部分で構成されています。前方部分は椎体や椎間板、横突起よりなります。後方部分は椎弓根や椎弓 、椎間関節、棘突起よりなります。前方部分と後方部分で囲まれたスペースを脊柱管(脊髄が入っている管)と言います。脊柱管内には馬尾や腰神経、仙骨神経が存在します。馬尾から左右5対の腰神経・仙骨神経が枝分かれします。腰神経は椎間孔(腰神経が出てゆく穴)より出て坐骨神経となり臀部から大腿〜下腿〜足先へ下降します。 |
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腰椎すべり症 |
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腰椎すべり症とは椎骨が前方へずれる状態を言います。腰椎は生理的な前弯 (腰椎を横から見ると腹に向かって前方凸の弓状の姿勢)を呈しておりますので、下部の腰椎(第4腰椎や第5腰椎)は、常に力学的に前方へずれようとする力が働きます。特に反り腰で著明となります。名称は、前方にずれている腰椎で表現されます。例えば、第5腰椎と第1仙椎間でずれていれば、第5腰椎が前方にずれていることにより第5腰椎すべり症と呼びます。 腰椎すべり症は分離症を認めるタイプの腰椎分離すべり症と、分離症を認めないタイプの腰椎変性すべり症に分かれます。メカニズムは分離症の有無にかかわらず腰椎症性変化(加齢的変化)が基盤となってすべり症が発生すると考えられます。稀に先天性な形成不全によるすべり症も経験します。なお、「症状」と「すべりの程度」の間に相関関係はないようです。すべりの程度が大きいから、症状が強いと言う訳ではありません。 ●腰椎分離すべり症 腰椎分離すべり症とは腰椎分離症とすべり症を認める疾患です。腰椎分離症の30%程度に腰椎分離すべり症が発生すると言われています。大半は第4腰椎や第5腰椎に好発します。若い頃は無症状に経過しますが、加齢的変化が加わると腰椎の支持性が低下し、次第に分離とすべりが進行するようです。 症状・診断 症状は腰痛と運動障害です。時に馬尾神経や腰神経が圧迫されて根性坐骨神経痛(お尻の痛みや足先へ放散する痛み、シビレなど)を訴えることもあります。馬尾神経の圧迫が進行すると間欠性跛行を訴えます(数10mから数100m程度歩くと休憩が必要となります)。診断はレントゲン検査で分離とすべりを同時に認めれば容易です。なお、詳細な情報収集にはCTやMRIが必要です。 ●腰椎変性すべり症 腰椎すべり症は加齢的変化が基盤となって発生します。しかし「年齢」と「症状」と「すべりの程度」の間に必ずしも相関関係はありません。すなわち年を取るにつれ、すべりの程度が進行して症状が悪化すると言う訳でもありません。時に腰椎の前弯(腰椎が弓状に前方に反っている状態)が過度になっている反り腰の方は、いつの間にかすべり症が出現し進行する症例も経験します。女性や高齢者に多く、第4腰椎や第5腰椎によく認められます。 症状・診断 症状は腰痛ですが、時に馬尾神経や腰神経が圧迫されて根性坐骨神経痛や間欠性跛行を認めることもあります。診断はレントゲン検査で腰椎すべり症を認めます。しかし分離症はありません。詳細な情報収集はCTやMRIが必要です。 治療 1)保存的治療(手術しない方法)が原則です。 症状を誘発する作業やスポーツ活動を極力制限していただきます。疼痛緩和に物理療法やアセトアミノフェン、炎症緩和に非ステロイド性抗炎症剤を処方します。改善されない症例はトラマドール塩酸塩やデュロキセチンを検討します。さらにトリガーポイントブロックや分離部ブロック、椎間関節ブロック、神経根ブロック、仙骨部、腰部硬膜外ブロックなどの神経ブロック療法を試みます。 また、腰部を安静にするために簡易コルセットやダーメンコルセット、ジェット式コルセット(後屈を制限するコルセット)をすすめることもあります。再発予防に腰部のストレッチング、股関節のストレッチング、腰部筋力強化訓練、股関節の筋力強化訓練などの運動療法を指示します。 2)手術的治療 保存的治療で症状が改善されない症例、現状の仕事や趣味、競技生活を継続したい症例では手術を検討します。術式は、病態が馬尾神経由来か腰神経根由来か椎間板由来か分離部由来か決定されます。後方椎間固定術、前方椎間固定術、経椎間孔椎体固定術などが行われます。
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