保険


75歳以上に「かかりつけ医」 

厚生労働省は75歳以上の高齢者向けに、公的な「かかりつけ医」制度を2008年をめどに創設する方向で検討に入った。特定の開業医が患者の心身の状態を普段から把握し、外来診療から在宅ケア、みとりまで対応する。患者が信頼できる医者をもつことで、入院から在宅治療への高齢者医療の転換を促し、医療費を抑制する狙いもある。厚労省は今秋までに独自の診療報酬体系の骨格をつくる予定で、すでに方針を固めている外来の「定額制」とともに、かかりつけ医の導入をその柱とする。 かかりつけ医の条件は(1)高齢者が抱える複数の疾患を総合的に診断・治療し、必要なときには心のケアも行える (2)介護保険のケアマネジャーらとも連携をとり、患者の生活に合わせた在宅療養のアドバイスができる (3)積極的な訪問診療を行う (4)痛みを緩和するケアなど末期医療に対応できる、など。 厚労省は、こうした条件を満たす医師を公的に認定。 患者の合意を得たうえで「かかりつけ医」として扱う。かかりつけ医を持つかどうかは高齢者本人の意思に任せるが、できる限り利用を勧める。かかりつけ医がいる場合でも、病院など他の医療機関も直接受診できるようにする方針だ。だが、開業医でも専門分野ごとに細分化が進んでおり、患者の心身を総合的に診断できる医師は少ないのが実情だ。このため、かかりつけ医に必要な緩和ケアなどの技能を身につけられるよう、開業医に対する研修制度も充実させる。(平成19年3月3日 朝日新聞)

医療費一定の「包括払い」、対象病院を大幅増加へ

政府は16日、医療費の支払いを病気や治療法により一定額とする「包括払い」方式の対象病院を2006年度から大幅に増加させる方針を固めた。既に導入している大学病院など82病院に加え、試行中の62病院も対象とするほか、新たに協力を得られる病院を積極的に募る。将来は全病院への導入も視野に入れている。現在は原則、治療、投薬を行った分だけ医療費を払う「出来高払い」方式が採用されており、「検査漬け、投薬漬け」医療につながっているとの指摘がある。包括払い方式では、投薬や検査回数が増えても医療費は一定額しか払われない。厚生労働省は、この方式が増えれば病院運営が改善され医療給付費の抑制につながると期待している。厚労省は03年度、包括払い方式を全国約9000病院の約1%の82施設で導入。04年度からは、検証データを提供できる62病院でも試行している。ただ、包括払い方式は、必要な治療をしなくても支払額が同じなため、「手抜き、過少医療につながる」との批判が日本医師会などにある。昨年末の厚労省調査では、包括払い方式での患者の平均在院日数は02年の20・37日から05年の17・56日に短縮された。一方で、同じ病気での再入院者が2・54%から4・26%へ増える弊害も見られた。(平成18年1月17日 読売新聞)

診療報酬、心臓移植など公的医療保険の適用対象に

厚生労働省は11日、06年度診療報酬改定方針を中央社会保険医療協議会(中医協)に示した。医療技術の評価に関し、心臓移植、脳死肺移植、脳死肝臓移植、膵臓移植を新たに公的医療保険の適用対象とするとともに、臓器提供施設での脳死判定や脳死判定後の患者の医学的管理について、診療報酬の対象とする方針を盛り込んだ。脳死移植に関し、97年に臓器移植法が施行されて以降、通常の医療として普及が進んだと判断した。 また、移植を行う医療機関、移植を受ける患者の双方の経済的負担を少なくし、移植の普及をはかる狙いも込められており、厚労省は今後、高度先進医療専門家会議の議論も踏まえて検討を進める考えだ。臓器移植のうち、現在医療保険の対象となっているのは腎臓移植、生体肝移植、眼球移植に限られ、他の移植は原則として全額が患者の自己負担となっている。厚労省によると、例外的に混合診療を認めている「高度先進医療」で心臓移植を受けた場合、患者の自己負担分は約300万円だが、医療保険が適用されれば自己負担額は約90万円以下に収まる見通しだという。厚労省はこのほか、高齢者の入院日数を短縮し、在宅医療を推進するため、「在宅療養支援診療所」(仮称)制度を創設する方針も打ち出した。地域の診療所が病院と連携し、24時間体制で往診や訪問看護を可能とする体制を整えた場合、診療報酬を手厚くする方針だ。(平成18年1月12日 毎日新聞)

国保保険料、年金から天引き

厚生労働省・社会保険庁は2008年度から、公的年金の受給者が国民健康保険に加入している場合、国保の保険料を年金から天引きして徴収する仕組みに変える。年金を受け取った後、国保の保険料を改めて納める仕組みでは加入者の手続き忘れなどで未納が起こりやすいためだ。年金から直接天引きし、拡大する未納を減らし、医療保険の財政悪化を防ぐ。政府は医療制度改革の一環として08年度から75歳以上の高齢者が入る新医療制度を作り、その保険料を加入者の年金から天引き徴収する。これに合わせて、新制度の対象とならない74歳以下の国保加入者に対しても年金からの保険料天引きを始める。老齢年金だけではなく障害・遺族年金を受け取っている加入者も対象とする。(平成18年1月7日 日本経済新聞)

医療費、「包括払い」の病院拡大へ 

厚生労働省は来年度、医療機関への医療費の支払いについて、あらかじめ設定した一定額しか払わない「包括払い」(DPC)の対象病院を現在の82病院から拡大する方針を決めた。試行的に実施している62病院すべてを対象に加えるほか、調査に協力している228病院の多くにも広げる考え。また、現在「1日当たり」の金額設定を、将来的には「1入院当たり」に変更するよう検討を進めている。DPCは、例えば注射を打てば打つほど病院の利益になる現在の出来高払い制を改め、何本注射をしても一定額しか支払わないようにする制度。入院中の注射のほか、検査、投薬などを対象としている。医療費膨張に歯止めをかけるのが狙いで02年度に導入され、現在は大学病院などで実施されている。同省はDPC対象病院を今年7〜10月に退院した52万人について、平均入院日数を調査。02年同期に比べ2.81日減の17.56日に短縮されるなど、毎年着実に入院日数が短くなっているという。ただ、同じ病気で6週間以内に再入院した人の割合は毎年増加している。02年は2.54%だったのに対し、05年は4.26%に増えた。こうした点を日本医師会は「診療内容がよくなったとは言えない」と批判している。(平成17年12月23日 毎日新聞)

一定所得の高齢者3割負担に

06年度から実施する医療制度改革案を取りまとめる政府・与党医療改革協議会の2回目の会合が14日、首相官邸で開かれ、70歳以上の高齢者の窓口負担について、一定以上の所得がある人については現行の2割から3割に引き上げることで合意した。患者負担引き上げのうち、長期入院している療養病床患者に食費・居住費の負担を求める案についても異論はなく、基本的に了承された。いずれも06年10月から実施される見通しだ。一定以上の所得は、高齢者夫婦世帯の場合で、現在年収約620万円以上だが、06年からは制度改正で約520万円以上に変わるため、70歳以上の約11%(約200万人)が対象となる見込みだ。現在原則1割となっている70歳以上の一般の高齢者の窓口負担を一律2割に引き上げる案などには、与党側から「高齢者の多くは年金受給者であり、配慮が必要」と異論が出た。 長期入院患者の食住費自己負担は、厚労省が示した標準的なケースでみると、現在の食費の自己負担は材料費の月2万4000円だが、新たに調理コストが上乗せされ計4万6000円に。これに居住費として光熱水費相当の1万円も加わり、計3万2000円の負担増になる。介護保険制度の改正で、今年10月から介護保険での施設入所者の食住費が自己負担となっており、対応を合わせる。ただ、食住費負担を一般病床にも拡大する財務省の主張については、与党側から「慎重であるべきだ」との意見が出た。医療費の一定額を保険給付の対象から外す保険免責制度に対しては与党側から強い異論が出され、見送られる方向だ。一方、高齢者を対象にした新たな医療保険制度については、運営主体を市町村としていることから竹中総務相が「市町村の負担が重すぎる」と懸念を表明。ただ、与党側から「中長期的には避けて通れない課題だ。これを抜きにして改革したとは言えない」との意見も出された。 公明党は少子化対策の観点から、医療保険から給付される出産・育児一時金を大幅に増額することを提案。さらに予防対策の充実として、たばこ税を増税して健康増進の費用に充てることを求めた。(平成17年11月14日 朝日新聞)

新高齢者医療保険の検討

厚生労働省は医療制度改革で2008年度の新設を目指している高齢者医療保険について、財政基盤を安定させるために再保険制度をつくる検討に入った。新保険は市町村が運営するが、一定額以上の高額医療費は再保険の形で都道府県と国が負担する。都道府県ごとに基金も設置し、保険料の未納などで資金繰りが悪化した市町村に資金を貸す仕組みもつくる。厚労省は先月公表した医療制度改革試案で、高齢者保険の創設を医療費抑制策の柱に位置づけた。高齢者は今は現役世代と同じ医療保険に加入しているので、医療費がかさんでも本人の保険料負担には直接響かない。そこで現役世代とは別に75歳以上の人だけが入る保険を市町村単位でつくり、地域の医療費が増えると高齢者の保険料負担も重くなる仕組みで過度の診療を減らす考えだ。(平成17年11月13日 日本経済新聞)

高齢者の長期入院、調理・光熱費を自己負担

政府・与党は12日、医療給付費抑制策として、治療のため療養病床に長期入院する70歳以上の高齢者の食費・居住費の一部を保険適用外の自己負担とする方針を固めた。調理の経費と光熱・水道費が対象。12月上旬に策定する医療制度改革に関する大綱に盛り込み、2006年の通常国会に関連法案を提出して同年10月からの実施を目指す。 療養している高齢者の入院費用は現在、食費のうちの食材費は自己負担だが、治療費や居住費は保険対象で1割負担となっている。しかし、自宅で介護を受けたり、療養したりしている人は通常、食費・居住費とも全額を負担している。公平性を保つため、先の通常国会では、療養病床の入院者で介護を受けている人については、05年10月から調理費や光熱・水道費を自己負担とする介護保険法の改正が行われた。今回の措置は、治療のため療養病床に入院している人についても、対応をそろえるのが目的だ。食費のうち、献立の決定などの栄養管理の費用は、保険適用を維持する方針だ。厚生労働省が10月にまとめた医療制度改革の試案の中で、こうした方向を打ち出していた。同省は、月に2万4000円の食材費と他の費用の1割で計6万4000円を支払っている人のケースで、調理費の2万2000円と光熱・水道費の1万円が上積みされ、自己負担が9万6000円に増える試算を示している。最終的な増額幅は個別のケースで異なるが、低所得者には、自己負担の一部免除などの救済措置を設ける方針だ。(平成17年11月13日 読売新聞)

紹介状ないと、大学病院は保険対象外


厚生労働省は9日、06年度診療報酬改定で、病院(20床以上)より診療所(20床未満)に対し高く設定している初診料を一本化し、現行水準よりも引き上げる考えを中央社会保険医療協議会の小委員会に示した。 病院の引き上げ幅を大きくし、外来患者を病院から診療所にシフトさせるのが狙い。診療報酬総額は引き下げる一方、メリハリをつける同省の改定方針に沿ったものだ。値上げ幅は今後詰めるが、実現すれば来年4月以降、診療内容によっては患者負担がアップする。病院は現在、初診料が2550円、再診料は580円なのに対し、診療所は初診料2740円、再診料730円と格差がある。病院が外来患者を診た場合の収入を低くし、患者を診療所に誘導する狙いがあった。しかし、患者が初診料の安い病院に集中するという、当初の想定とは逆の現象が生じていた。次期改定では初診、再診料とも、病院、診療所で一本化し、初診料は引き上げる一方、再診料は下げる。初診料のアップは、あらゆる疾病の可能性を考える必要があるなど、医師の負担が重い初診を重視する考えに基づいているが、患者の受診手控えによる医療費抑制も見込んでいる。また同省は、同じ日に同一病院内で複数の診療科にかかった場合、初診料負担は現在1科分だけだが、それぞれの診療科ごとに初診料を払う制度に改める方針を示した。このほか、大学病院などの大病院に紹介状を持たずに来た患者への初診料を保険対象外とする方針も提示した。大病院は保険外で初診料の上乗せ請求をできるが、実施が3分の1程度にとどまっているため。(平成17年11月9日 毎日新聞)

高齢者医療費、現役並み所得者80万人が「3割負担」に

医療費の窓口負担が一般高齢者の2倍の2割となっている70〜74歳の「現役並み所得者」が、06年度の税制改正で約80万人増えることが2日、厚生労働省の調べで分かった。同省は06年度の医療制度改革で「現役並み所得者」の窓口負担を現役と同じ3割に引き上げる方針。このため現在窓口負担が1割の80万人は税制改正で「現役並み」への移行を経て、一挙に負担が3割にアップする。同省は新「現役並み」の80万人について、段階的引き上げなどの激変緩和措置を導入する意向だが、高齢者層の強い反発を招きそうだ。現在、70歳以上の人の窓口負担は1割。しかし、厚労省は年間課税所得が145万円以上ある人を「現役並み所得者」と位置付け、2割負担を求めている。年金受給世代で課税所得が145万円となるのは、単身世帯なら年収484万円で、夫婦世帯は621万円。06年4月の税制改正で老年者控除が廃止となり公的年金等控除も縮小されるため、「現役並み」収入基準は単身世帯は約380万円、夫婦世帯は約520万円に下がる。これにより、現役並みの人数は現行の約110万人から約190万人に増え、70〜74歳層に占める割合も6%から11%に増加。 厚労省は医療制度改革関連法案に、現役並みの負担を3割にアップさせることを盛り込む考えだ。新たに現役並みとなる80万人の負担は、来年4月から現行制度に則して2割となり、同法案が成立すれば、来年10月にも制度上3割となる。 また、医療費の自己負担限度額は、一般高齢者が月額4万200円なのに対し、現役並みは「7万2300円+医療費の1%」。同省は自己負担限度額もアップさせる方針で、新「現役並み」は、窓口負担同様、負担増の幅が大きくなる。(平成17年10月3日 毎日新聞)

軽い病気「患者負担を」 

低額の医療費は公的医療保険の対象から外して患者の自己負担とする「保険免責制度」が、医療費抑制のための検討項目として、10月中旬に厚生労働省が公表する医療制度改革試案に盛り込まれることになった。1回の診療にかかる医療費のうち500円、1000円などの一定額を患者負担とし、保険の適用はそれを超える分とする方法。軽い病気から重い病気まで広くカバーする今の医療保険制度の根幹にかかわるだけに、政府・与党内でも大きな論議を呼びそうだ。 免責制度は、保険は生死にかかわるような重い病気の時にこそ必要で、風邪などの軽い病気には適用しないという考え方に基づく。自己負担を増やすことで患者にコスト意識を持ってもらい、過度な受診を防ぐ効果も狙う。 財務省が02年度の医療制度改革時に「外来1回、入院1日あたり500円」を提案。今年6月の政府の「骨太の方針」決定の際には経済財政諮問会議が検討課題として明記を求めたが、厚労省や与党側の反対で見送られていた。総選挙での圧勝を受け、小泉政権内で医療費抑制論が強まる中、厚労省も議論は避けられないと判断した。 今回の改革試案では、「免責額500円」「1000円」など複数のケースごとに患者負担や医療費抑制効果の試算を示し、導入の是非を議論する材料としたい考えだ。 ただ導入すると、高齢者ら受診回数が多い人ほど負担が重くなる。医療関係者の中には、症状が軽い間は受診を控えるため、重症になってから受診する人が増え、かえって医療費がかかるという指摘もある。 もともと医者にかかる機会が少ないサラリーマンら現役世代からは「保険に入っている意味がない」と不満が出ることも予想され、厚労省内にも慎重論が根強い。 さらに、サラリーマンの窓口負担を3割に引き上げた際の改正健康保険法の付則には、保険給付を「将来にわたり100分の70を維持する」と明記されている。免責制度を導入すれば実質的には7割給付を割り込むため、厚労省には実現性を疑問視する意見もある。 (平成17年10月2日 朝日新聞)

65歳以上の扶養家族から健康保険料徴収を検討

厚生労働省は医療制度改革の一環として65―74歳の高齢者のうち、現在は健康保険料を負担していない会社員の配偶者や親などの扶養家族から保険料を徴収する案を検討する。75歳以上のすべての人が保険料を払う新たな高齢者医療保険の創設をめざすのに対応74歳以下にも応分の負担を求める。 対象世帯の反発が強まる可能性もある。現在、会社員が入る健康保険組合、政府管掌健康保険の保険料は会社員本人だけにかかる。扶養家族は保険料を払わず、医療費給付の負担は保険料を納める会社員で分担している。新たに保険料を求めるのは65―74歳の「前期高齢者」の扶養家族で、対象は約170万人の見込み。(平成17年7月13日 日本経済新聞)

高齢者医療、自己負担を一部3割に引き上げ検討

厚生労働省は年内にまとめる医療制度改革案に、70歳以上の高齢者の窓口負担引き上げを盛り込む方針を固めた。現在は2割負担となっている一定所得以上の人を、現役世代と同じ3割負担とする方向。 原則1割負担の人を2割とする案も浮上している。 窓口負担が一定額を超えた際に還付される高額療養費制度の上限額も引き上げる方針。 ただ負担引き上げには、受診抑制を心配する日本医師会が反対しているほか与党の反発も予想され、曲折がありそうだ。 厚労省は、(1)国民医療費の中で老人医療費の割合が大きくなっている (2)現役世代の負担感が強いなどの点から、高齢者にも負担を求めざるを得ないと判断。一定の負担能力のある2割負担の人については負担増に理解を得られるとみて、現役世代並みの負担を求める考えだ。 さらに同省内では、高齢者の大半を占める1割負担の人についても、2割に引き上げる案が浮上している。原則2割負担、一定所得以上の人を3割負担とした場合、年8000億〜1兆数千億円規模の医療費削減効果があると試算されている。ただ、一定所得以上の人の負担増に理解を示す与党厚労族議員でも、1割負担の2割への一律の引き上げには、1割負担の介護保険との整合性などを理由に反対論が強いため、調整は難航しそうだ。 一方、高額療養費制度の適用で負担には上限があるため、実際の医療費負担は1割負担の人で実質8%程度、2割負担の人で16%程度にとどまっているとされる。 このため、負担限度額についても引き上げを検討している。 厚労省はこの案を、秋に提示する医療制度改革案に盛り込み、来年の通常国会に関連法案を提出する方針。ただ、法案作成までの政府・与党協議で修正を迫られる可能性もある。
〈窓口負担〉 
患者が窓口で払う医療費の自己負担は現在、現役世代が3割。70歳以上の高齢者は原則1割だが、様々な控除を受けた後の課税所得が年124万円以上(8月からは同145万円以上)の人は2割となっている。年収換算で夫婦2人世帯で621万円、単身世帯で484万円程度とされ、2割負担の人は02年度で70歳以上の約8%にあたる121万6000人。(平成17年7月9日 朝日新聞)

医療費の「包括払い」で入院日数短縮 

病気の種類ごとに医療費を定める新たな「包括払い」の仕組みを導入した病院で、患者の平均入院日数が導入前より短くなったことがわかった。患者が受ける検査や薬の数を絞り込み、医療の効率化を進める病院も目立った。調査した中央社会保険医療協議会(中医協)の分科会は「緩やかに医療費抑制効果がみられる」としている。この仕組みは1日の入院治療費を定額制にするもので、DPC(診断群分類別包括評価)と呼ばれる。 03年4月に大学病院などで導入され、民間病院での試行も含めると04年時点で144病院が導入。診療分が収入になる「出来高払い」と違って、むだな投薬や検査が減ると期待される。一方で「粗診粗療」を招くとの指摘もあり、中医協の診療報酬調査専門組織(DPC評価分科会)が医薬品の使用状況や検査の実施状況、患者の満足度などを調べた。 04年の患者の平均入院日数は19.11日で、02年の21.22日よりも短くなった。手術前の入院期間を短くしているケースが目立ち、導入前の4.47日が04年は3.74日に。手術後の入院日数は02年が9.22日、04年は9.27日で大きな変化はなかった。 抗がん剤や放射線治療が継続して必要な患者を、長期入院させずに短期入院の繰り返しで対応する病院も増えた。厚生労働省は「在宅の機会が増え、患者の生活の質(QOL)の向上につながっている」とみる。 また、導入病院の6割以上が患者への臨床検査数を減らしたり、外来で検査したりするようになった。薬については、5割が後発品の安い薬に切り替えたり、中止できる薬の処方をやめて数を減らしたりした。(平成17年4月16日 朝日新聞)

混合診療、「例外」拡充を決定 

政府は15日、保険診療と保険外診療を組み合わせる混合診療について「原則解禁」はせず、未承認の抗がん剤を使えるようにするなど、例外的に併用を認めている特定療養費制度の拡充で対応することを決めた。04年度から見直しを始める。小泉首相は9月に解禁の方向で指示したが、厚生労働省の「安全性が確保できない」との主張が通り、「原則禁止・例外容認」の方針は変えないことになった。尾辻厚労相と村上規制改革担当相が同日の折衝で合意し、小泉首相に報告した。尾辻氏は「抜本的・画期的改革だ。小泉総理の指示にもしっかりこたえた」とし、村上氏も「解禁に近い結果だ」と評価した。合意の柱は、(1)国内で未承認の抗がん剤の使用などについては専門家会議を設け、併用が認められている治験制度を迅速に適用する。(2)高度、中度の医療技術については審査の手続きを緩和。技術ごとに一定の水準を設け、該当する医療機関が届け出れば併用を可能にする。(3)がんの検査に使う腫瘍(しゅよう)マーカーなど保険適用回数に上限がある医療行為についてはルールを設け、超過分の併用を認めるなど。 いずれも患者や医療現場から、全額自己負担になり負担が大きすぎる、と批判が出ていた。 その後は、06年に予定されている医療保険制度改革で特定療養費制度を廃止し、将来保険適用が見込まれるものは「保険導入検討医療」に、保険導入を前提としないものは「患者選択同意医療」(いずれも仮称)に分けて再構成する。(平成16年12月15日 朝日新聞)

混合診療解禁、反対を採決へ

保険診療と保険外診療の併用を認める「混合診療」の解禁をめぐり、2日の参院厚生労働委員会で、日本医師会と35の医療関連団体でつくる国民医療推進協議会が提出した解禁反対の請願が全会一致で採択される見通しとなった。小泉首相は解禁の方向で検討するよう厚生労働省に指示している。しかし、混合診療の全面解禁には健康保険法の改正が必要とされており、仮に政府が解禁の方針を決めたとしても、改正案成立は難航が予想される。請願は「解禁は公的医療保険の縮小と私的保険の拡大により、国民皆保険制度を崩壊させる」という内容で、約600万人の署名とともに衆参両院に提出されていた。解禁については民主党や共産党など野党内にも「金持ち優遇になる」との反対論があった。請願を機に自民党の理事が働きかけたことで、全会一致で採択する方向が固まった。衆院では、2日に厚生労働委員会の理事懇談会が開かれ、採択するかどうか協議することにしている。(平成16年12月2日 朝日新聞)

生活保護負担率引き下げを決議

自民党厚生労働部会(田村憲久部会長)は16日午前、国と地方の税財政改革(三位一体改革)について、生活保護の国庫負担割合を4分の3から2分の1に引き下げることなどを決議した。生活保護は最低限度の生活を保障するため低所得世帯に現金などを渡す制度。現在の給付総額は年間約2兆3000億円で、負担割合が2分の1に引き下がれば、約5700億円の国庫負担削減となる。厚労部会では生活保護のほか、国民健康保険、児童扶養手当の国庫負担割合の引き下げなどで地方向け補助金削減を実施することも決議。また、総額については地方提案とほぼ同額の9000億円を超える額には応じられないとした。(平成16年11月16日 日本経済新聞)
 
政管健保黒字 本人3割負担などで

中小企業のサラリーマンらが加入する政府管掌健康保険(政管健保)の03年度決算が647億円の黒字になったと、社会保険庁が5日発表した。黒字転換は11年ぶり。ボーナスからも月収と同率の保険料を徴収する総報酬制が導入されて収入が増え、医療費の本人負担が2割から3割に引き上げられて保険からの支出が減ったことが主な要因だ。被保険者数は企業の倒産やリストラの影響で02年度より約17万人減り、6年連続減少の約1899万人。保険料を算出するもとになる標準報酬月額や賞与月数の平均は賃金カットなどで02年度より減ったが、総報酬制の導入で保険料が実質的に引き上げられたため、総収入は3.7%増の7兆3037億円となった。一方、高齢者の医療費を各保険で分担する老人保健拠出金や保険給付費などの総支出は4.8%減の7兆2389億円となった。 過去最悪の5588億円の赤字だった02年度からは大幅に改善したものの、貯金にあたる事業運営安定資金残高は依然として106億円のマイナスとなっている。 (平成16年8月6日 朝日新聞)