更年期障害について


女性の健康、5万人10年間追跡 ホルモン薬の影響調査

更年期障害の治療に使われるホルモン薬や生活習慣が女性の健康にどんな影響を及ぼすか――こんな研究を群馬大の林邦彦教授(医療基礎学)らが始めた。看護師5万人に協力を求め、10年間調査する。主目的の一つはホルモン薬の影響。乳がんのリスクを高めると指摘されるが、効果も副作用も欧米のデータによるのが実情なので日本人での評価を目指す。 女性の健康に焦点をあてた大規模で長期的な研究は国内では例がない。 研究は日本更年期医学会と共同。各地の看護協会が協力する。30歳以上を対象に、更年期障害で女性ホルモンを補うホルモン補充療法(HRT)を受けているかどうか、その薬はどんな種類か、がん検診の受診の有無とその結果、運動や食事など50項目を調査する。 女性の健康に関して、25万人を対象にした米国の調査で、HRTが骨折を防ぐという効果や、ビタミンEをとると心臓病の危険性が減るといった結果が報告されている。 一方で、HRTは乳がんの危険性を高めるといった報告も昨夏、米国で公表され、日本の治療現場にも混乱を与えた。 しかし、米国では乳がんの発病率は日本の3倍以上あり、喫煙率も高いなど生活習慣が異なる。そんな米国のデータをそのまま日本人にあてはめるのは無理もあるのに、日本に長期にわたる大規模研究はなく説得力のある説明はできなかった。 林さんは「閉経後30年生きる時代になり、女性の生活習慣と健康についての研究が求められている。医師が自信を持って患者さんの心配に答えられるデータを蓄積したい」と話している。(平成15年3月29日 朝日新聞)

SSRIが更年期症状の「のぼせ」を改善、プラセボ対照交差試験で判明

抗うつ薬の選択的セロトニン受容体阻害薬(SSRI)を用いた第3相試験で、更年期症状の一つである「のぼせ」(ホットフラッシュ)が、SSRIの服用で改善することがわかった。欧米では更年期女性の7割がホットフラッシュに悩まされており、ホルモン補充療法(HRT)で症状が改善することが知られているが、乳癌の罹患歴がある人などはHRTを受けられない。今回の研究報告は、こうした患者にとって大きな朗報となるだろう。研究結果は、Journal of Clinical Oncology(JCO)誌3月15日号に掲載された。この研究を行ったのは、米国MayoクリニックのCharles L. Loprinzi氏ら。Loprinzi氏らは、ホットフラッシュに悩んでいたある患者が、「SSRIの塩酸フロキセチン(商品名:Prozac、本邦未発売)を飲んだら、症状が劇的に良くなった」と話したことに注目。他のSSRIでも同様の報告が出てきたため、Loprinzi氏らは塩酸フロキセチンを用いたプラセボ対照交差(クロスオーバー)試験を行い、同薬のホットフラッシュ改善効果を検討した。臨床試験の対象は、頻回(週に14回以上)のホットフラッシュ発作に悩まされている女性患者81人。全員、乳癌の罹患歴があったり、罹患リスクが高いため、通常のHRTは受けられない。うち半数強が乳癌の再発予防薬として女性ホルモンの働きを抑えるタモキシフェン(商品名:ノルバデックスなど)を服用しており、約6割の患者ではホットフラッシュ発作が9カ月以上続いている。研究グループはこれらの患者を無作為に2群に分け、臨床試験の前半と後半で服用薬(プラセボまたは実薬)を交換するクロスオーバー試験を実施。患者にホットフラッシュ発作の頻度と強度を毎日記録してもらい、発作スコアを算出した。服薬期間は4週間ずつで、実薬の服用量は1日20mgとした。その結果、最初の4週間に塩酸フロキセチンを服用した患者では、ホットフラッシュの発作スコアが50%減少。プラセボ服用者ではこの減少幅が36%であり、交差解析からも、塩酸フロキセチンにはホットフラッシュを有意に軽減する効果があることがわかった。さらに、塩酸フロキセチンの服用時には、ホットフラッシュを訴える患者によくみられる不眠症や性機能障害の改善効果も認められた。一方の副作用は、塩酸フロキセチンの服用で食欲不振や悪心、めまい、便秘などがみられたが、いずれプラセボ群との差がなかったという。ホットフラッシュは、更年期の不定愁訴の中でも最も多い症状であり、乳癌の再発予防のためタモキシフェンを服用した患者にも、副作用としてよく現れる症状の一つだ。女性ホルモンのアンバランスにより引き起こされる自律神経系症状だと考えられており、HRTが奏効するが、HRTを行えない患者では決め手となる治療法がなかった。SSRIがどのようなメカニズムで効果を発揮するかは不明だが、研究グループは「乳癌などのためHRTを受けられない患者にとって、塩酸フロキセチンは現実的な代替療法になるだろう」と結論付けている。(平成14年3月29日medwave)