リハビリテーション(運動療法)


心機能アップに筋トレ効果

腕や太ももなどの骨格筋を鍛えることで、心機能が高まることが日本女子体育大などの調査で分かった。大きな筋肉を動かすことで血液の流れがよくなり、心臓を刺激するためとみている。同大プロジェクトチームは「特に高齢者は有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせることで心機能の衰えを防止できる」と提言している。研究チームは運動による健康、体力作りのためのプログラムを作るため、骨格筋と血流の関係を分析した。小学1年生から高校3年生まで、ジュニア強化選手などさまざまな運動経験を持つ計57人(男子32人、女子25人)と、高齢者15人(平均76歳)を調査。心臓と太もも、腕の筋肉の厚さを超音波で調べ、心筋の厚さから心臓の重さを推計した。その結果、腕や太ももの筋肉が増えれば心臓も重くなる比例関係にあることが分かった。高齢者では太ももの筋肉が200立方センチの人の心臓は127グラムだが、800立方センチの人は182グラムだった。加賀谷淳子・同大名誉教授(健康・スポーツ科学)は「有酸素運動で心臓の容量が大きくなることが知られていたが、筋力トレーニングで心筋が厚くなり心機能が高まることが初めて分かった」と話している。(平成21年4月11日 毎日新聞)

ランニング、老化防ぐ

ランニングの習慣に老化を遅らせる顕著な効果があることを米スタンフォード大の研究チームが突き止めた。 20年以上にわたる追跡調査の結論という。調査期間は、1984年から2005年まで。チームは、ランニングクラブに所属し、週4回程度走る男女538人(84年当時の平均年齢58歳)に毎年質問票を送り、歩行や着替えといった日常の行動能力や健康状態などを調査。走る習慣がない健康な男女423人(同62歳)も同様の方法で調べ、比較した。 その結果、走る習慣のないグループは、2003年までに34%が死亡したのに対し、習慣的に走るグループの死者は15%にとどまった。また、走るグループは、走る習慣のないグループに比べ、日常の行動能力が衰え始める時期が16年ほど遅かった。チームは「年齢を重ねても健康的に過ごすために何かひとつ選ぶとすれば、(ランニングのような)有酸素運動が最も適している」と結論づけている。(平成20年8月16日 読売新聞)

よく動く人、がん遠ざける

仕事か余暇かにかかわらず体をよく動かす人は、そうでない人より、がんになりにくいことが厚生労働省研究班の調査で明らかになりった。男性は大腸、肝臓、膵臓のがんで、女性では胃がんでそうした傾向が目立った。詳しい原因は解明されていないが、研究班は、運動で肥満が改善されたり、免疫機能が高まったりすることなどが関係しているのではないか、と推測している。調査は、岩手から沖縄まで9府県の45−74歳の男女約8万人を約8年にわたり追跡。期間中に約4300人が何らかのがんにかかった。激しいスポーツをした時間や、歩いたり立ったりした時間、睡眠時間などをアンケートし、対象者の平均身体活動量を算出。その量の多さによって4グループに分け、がんとの関連を分析した。その結果、身体活動量が最多のグループは最少グループに比べ、がんになるリスクが男性で13%、女性で16%低かった。(平成20年7月13日 中国新聞)

善玉コレステロールを増やすには

善玉コレステロールを増やすには、少なくとも1回に30分以上、1週間で計2時間以上の運動量が必要であることが、お茶の水女子大の研究グループの調査でわかった。血液中の余分なコレステロールを回収することから「善玉」とされるHDLコレステロールは、運動によって増えるとの指摘はあったが、どの程度行うべきか明確な指標はなかった。同大生活習慣病医科学講座の児玉暁研究員と曽根博仁准教授は、ウオーキング、ジョギングなど有酸素運動によるHDLコレステロールの変化に関する25の研究論文のデータを解析した。 それによると、HDLコレステロールの上昇には、週当たり推定消費エネルギーで900キロ・カロリー、時間にして2時間以上の運動量が必要だった。一般に1時間の速歩きで300キロ・カロリー程度消費するとされる。運動1回当たりでは、30分以下ではほとんど効果がなく、以降10分増すごとにHDLコレステロールは約1・4ミリ・グラム上昇した。運動の激しさとは無関係だった。足腰を鍛えたり体脂肪を減らしたりするには、短時間の運動をこまめにすることも効果的とされるが、「HDLコレステロールの改善には、ウオーキング、水泳など30分以上のまとまった運動を週に数回行う必要があるとみられる」と曽根准教授は話している。(平成19年5月29日 読売新聞)

運動による降圧作用は週に1時間半で最大化

有酸素運動が降圧に有効なのはよく知られているが、有酸素運動の時間と降圧度の関係を検討した国立健康・栄養研究所 健康増進研究部主任研究員の高田和子氏らによると、中高年では少なくとも1週間に1〜1.5時間運動すれば降圧作用は最大になるようだ。 American Journal of Hypertension誌の8月号に掲載された。同氏らは、心血管疾患を認めず、降圧薬を服用していないステージ1〜2高血圧(140〜159/90〜109mmHg)の207例(およそ50歳)を対象に、8週間の有酸素運動が血圧に及ぼす影響を検討した。これら207例は、歩数計を装着するだけの対照群(39例)と、スポーツクラブで指導のもとに運動を行う群に割り付けられ、運動群は1週間の運動時間により、「30〜60分/週」群(55例)、「61〜90分/週」群(54例)、「91〜120分/週」群(21例)、「超120分/週」群(38例)の4群に分けられた。試験開始時の「男女比」、「年齢」、「身長」、「肥満度(BMI)」、「摂取総カロリー」、「食塩摂取量」に、5群間で有意差はなかった。 有酸素運動はウォーキング、ジョギング、自転車ないし水泳で、最大酸素摂取量の50%の強度で統一した。8週間後の血圧は、対照群では試験前と同等だったが、運動群ではいずれも試験前に比べ有意な低下を示した。 また拡張血圧は運動時間と相関を認めなかったが、収縮期血圧は「30〜60分/週」群(およそ7/6mmHg)よりも「61〜90分/週」群(およそ12/7mmHg)でより大きな降圧が認められた(p<0.01)。 また、「91分/週」以上運動しても降圧度は「61〜90分/週」群と有意差を認めなかった。興味深いのは「運動回数」と「降圧度」の関係で、1週間の運動時間が同じであれば、「1〜2回/週」、「3〜4回/週」、「5回以上/週」の3群間で降圧度に差はなかった。これらより筆者らは「1週間に30分〜1時間の有酸素運動でも降圧が認められる」、「1週間に61〜90分の有酸素運動で降圧作用は最大となる」、「週のトータルの運動時間が同じであれば運動回数は関係ない」と結論付けているが、「毎日の運動推奨を否定するものではない」との警告も記している。 いずれにせよ、毎日ジムに通うなどが現実的に不可能な生活をしている我々にとって、この研究は、「休日に2時間弱汗を流せば運動療法の恩恵にあずかれる」という福音ではなかろうか。(平成15年8月20日medwave)

痴ほう・パーキンソン病予防にカルシウムと運動が有効

海藻や牛乳などカルシウムが豊富な食事や日々の運動が、パーキンソン病や痴ほう症の治療や予防に役立つことを筑波大医学系の須藤伝悦(でんえつ)博士らが動物実験で初めて明らかにした。 生活習慣の大切さが改めて注目されそうだ。 手足のふるえや筋肉硬直などが特徴のパーキンソン病や、痴ほう症のうちでパーキンソン病に似たDLB型、高血圧症、てんかん症などは、脳内の情報伝達に使われる物質の一種ドーパミンが減ってしまうことがその一因になっている。 須藤博士らはネズミを使った実験で、餌として摂取したカルシウムが、脳内のドーパミン合成を実際に促進する仕組みを突き止めた。また、毎日の運動で、体内のカルシウム代謝が活発化し、骨の中のカルシウムが血流を通じて脳に供給され、ドーパミンが増えることも分かった。 海外では近年、山歩きや散歩、ストレッチなどの運動を1か月程度続けると、パーキンソン病や痴ほう症が改善したとする報告が増えている。 また約4300人を追跡調査した海外の研究では、運動習慣がある人は、ない人に比べて痴ほう症になる割合が半分程度だった。(平成15年6月24日読売新聞)

運動すると長生き・・・・心臓病36%、がん51%危険度減る

年をとってから始めた運動でも、健康に効果があることが確かめられた。 米疾病対策センター(CDC)などの研究チームは、65歳以上の女性約7500人を対象に、1日に歩く距離、ダンスや水泳などで楽しむ頻度などを聞き、約12年間にわたって彼女たちの健康状態と生活習慣を追跡調査した。 その結果、座りがちで活発度の低いお年寄りたちより、調査期間中に活動的になった人は、全体で死亡危険度が48%減少していた。疾患別に見ると、心臓病は36%、がんは51%も危険度が減っていた。 もともと活動的だったお年寄りも、同様に死亡危険度が低くなっていた。 ただし75歳以上のお年寄りの場合や、もともと健康状態がよくなかった人の場合は、運動の効用は薄れた。この成果は米医学会誌に発表された。(平成15年5月27日読売新聞)

寝たきり予防に筋力体操

お年寄りが寝たきりにならないようにと、東京都荒川区と、地元の都立保健科学大(同区東尾久7)が共同で「転倒予防体操」を“開発”した。実際にお年寄り約20人が1か月半の間、この体操を試した結果、筋力がアップするなどの効果が現れたという。 同区は、この体操を普及させ、区内のお年寄りの健康作りに役立てたい考えだ。 今年1月現在、区の人口のうち、65歳以上のお年寄りが占める割合は20・47%で、東京23区内では台東、北、千代田に次いで4番目に高い。 お年寄りの中には転倒して足や腰の骨を折って動けなくなり、そのまま寝たきりになってしまう人も少なくなく、高齢者の健康作りは区の大きな課題だ。 都立保健科学大の山田拓実・助教授が運動開発の中心となり、58歳から82歳までのお年寄り計19人に体験してもらった。19人は10月半ばから12月初めまで週2回、同大に通い、体操を続けた。 体操は自宅などで簡単にできるよう、いすを使ったものやストレッチ運動が中心。片手を上に掲げ、片方の足で立ち、体全体のバランス感覚を養う「バランス立ち」や、座った状態で腕を大きく振り、勢いを利用して、立ち上がる「立ちしゃがみ」などだ。 運動の途中で参加者の脈拍を測るなどして、試行錯誤を繰り返した結果、適度な運動時間は約15分間であることもわかった。 最終日には、効果を調べるために体力測定が行われた。山田助教授は「全体的に、筋力やバランスの能力がアップした。予想よりいい結果だった。普段の体力作りが、転倒を防ぐ最も効果的な予防法だ」と話す。今後、1人1人にどの程度、効果があったのか、詳しく分析するという。 参加者の1人、宮脇元代さん(70)は、「自転車に乗っていても、危ない時にすぐに停止できるようになり、判断と反応が速くなった気がする。夫にも教えてあげたい」と、うれしそうに話していた。(平成14年12月8日 読売新聞)

中高年女性への運動処方、水泳は逆効果

中高年女性を対象にオーストラリアで行われた無作為化比較試験で、定期的なウォーキングでは血圧が下がるが、水泳では血圧が上がることが明らかになった。定期的な運動に降圧効果があることはよく知られているが、運動の種目によっては逆効果になることもあるようだ。研究結果は、6月24日の一般口演「Salt Intake and LifeStyle Modification」で、オーストラリアWestern Australia大学のKay Cox氏らが発表した。Cox氏らは、運動の降圧効果を調べた研究では、運動種目として主にウォーキングやジョギング、ランニングが採用されており、水泳の降圧効果について調べた研究がほとんどない点に着目。水泳選手では他の持久系スポーツ選手より血圧が高いとの報告はあるが、水泳は体への重力負荷が少なく、高齢者や関節障害がある人でも行えるとのメリットもあるため、無作為化試験で血圧に対する影響をウォーキングと比較した。試験の対象は、50〜70歳で運動習慣がなく(中等度運動を週30分未満)、体格指数(BMI)が34未満の「肥満ではない」(Cox氏)中高年女性。血圧は160/100mmHg未満で、25m泳げることも条件とした。新聞広告などで参加者を募り、応募してきた116人を無作為に2群に分け、水泳またはウォーキングを1回当たり30分間、週3回6カ月行ってもらった。参加者の平均年齢は55.5歳で平均BMIは26.4。仰臥位で測定した血圧は116/67mmHg、心拍数は67回/分で、12人(10%)は降圧治療を受けていた。運動の実施率は水泳、ウォーキング共に7割以上。定期的な運動を6カ月行った後は、水泳群(56人)とウォーキング群(60人)のいずれも歩行能力(一定距離を歩く時間で評価)が向上していた。一方、水泳能力(一定時間に泳げる距離で評価)は、水泳群でのみ向上がみられた。次にCox氏らは、定期的な運動を行う前後での血圧の変化を調べた。すると、座位および仰臥位で測定した血圧値や24時間血圧の平均値は、ウォーキング群で有意ではないものの低下する傾向が認められた。ところが水泳群では、24時間血圧には違いがないものの、座位や仰臥位で測定した血圧が、運動前と比べておよそ3/1mmHg有意に上昇していた。試験参加者には閉経前の人も含まれているが、両群でのばらつきはなく、また閉経しているか否かは血圧の変動とは無関係だったという。定期的な水泳でなぜ血圧が上がるのか、女性特有の現象なのかなど解明すべき点は残るものの、「少なくとも中高年女性に対して運動処方を行う場合は、種目として水泳は避けた方がいいだろう」とCox氏は述べた。(平成14年6月25日medwave)