関節リウマチ


リウマチ薬でがんリスク上昇 

米食品医薬品局(FDA)は4日、日本でも使われている腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬と呼ばれる新しいタイプの関節リウマチ薬について、小児、青少年が使用した場合にがんの発症リスクが上昇するとして、注意書きで、強く警告するよう製薬会社に指示した。対象は、レミケード(一般名インフリキシマブ)、エンブレル(エタネルセプト)、ヒュミラ(アダリムマブ)など5種類。関節で骨を壊すTNFというタンパク質と結合して、その働きを抑える作用があり、関節リウマチのほかクローン病、潰瘍性大腸炎などに処方される。ロイター通信によると、改善効果が高いため、米国で最も人気があるリウマチ薬となっている。同局の調査では、TNF阻害剤を使用した小児、青少年のうち48人がリンパ腫を中心とするがんを発症。2年半使用した場合、がんのリスクが高まることが分かった。(平成21年8月5日 日本経済新聞)

リウマチ薬エンブレル、因果関係否定できぬ死者84人

関節リウマチ薬「エンブレル」(一般名エタネルセプト)を使用し、同薬との因果関係が否定できない死者が84人に上ると、日本リウマチ学会の特別調査委員会が21日、札幌市で開かれた同学会シンポジウムで発表した。一部の専門家からは「感染症発症の危険が高い患者などへの処方には、より注意が必要だ」という声も出ている。エンブレルは05年1月に厚生労働省の承認を受け、同3月から製造販売元ワイスが武田薬品工業と販売している。発表によると、昨年4月までに薬を使い始めた登録患者1万3894人のうち、薬との因果関係が否定できない感染症、間質性肺炎などで死亡した患者は84人だった。使用後に何らかの症状を訴えた患者は31%で、結核感染者は12人いた。エンブレルを使用する前に別の感染症にかかった経験がある患者や、ステロイド剤を併用している患者で感染症発症が高かった。一方、エンブレルの使用で、85%の患者の症状が改善した。関節リウマチ患者の死亡率は一般の1.5〜2.0倍とされるが、エンブレル使用者は1.46倍だった。臨床試験で副作用や長期使用での安全性に疑問が残ったため、厚労省は発売後一定期間、使用した患者全員を登録、追跡調査することを義務付けていた。昨年12月の両社の発表では、登録患者で薬との因果関係が否定できない死者は76人、昨年6月の登録終了後の死者は3人だった。(平成20年4月21日 毎日新聞)

抗がん剤がリウマチに効果 

抗がん剤として開発された薬が、関節リウマチ治療に効果があることを東京医科歯科大の上阪等准教授らのチームが動物実験で確認した。関節の痛みの原因となっている炎症や、細胞の異常増殖を直接抑える画期的な薬として期待される。免疫の過剰な働きによって起こる関節リウマチの薬のほとんどは免疫力を抑える治療を目指していたが、患者の病気への抵抗力を低下させるという問題があった。この薬が実用化されれば、こうした副作用を避けられる可能性があるという。関節リウマチは、関節で「サイクリン依存性キナーゼ」という物質が活性化、滑膜細胞が異常に増殖するのが主な原因。(平成20年1月26日 中国新聞)

膝軟骨の人工培養技術

従来は難しかったひざ軟骨の人工培養技術を東京大学などが開発した。体内と同じ高圧環境下で培養するもので、変形性膝関節症の患者などへの再生医療に道を開くと期待される。東大では軟骨がすり減るため、膝が痛み、歩行や階段昇降が困難になる変形性膝関節症の患者を3000万人と推計している。一部の患者には、膝から採取した健康な軟骨細胞を培養した後、患部に注入する治療が試みられているが、培養中に病的なたんぱく質を持つ異常細胞ができる問題があった。牛田多加志教授は、関節内で体液の入った袋に包まれた軟骨には、歩行時に約50気圧の圧力がかかることに着目。プラスチック製の培養袋にウシの軟骨細胞を入れ、体内と同じ水圧をかけて4日間培養したところ、球状の正常軟骨(直径1ミリ)ができた。ヒトの細胞で球状軟骨を多数作り、体内の軟骨と同じ形の型に詰めて成形すれば、移植可能な人工軟骨が作れるようになるという。東大病院整形外科・脊椎外科の中村耕三教授は「減量や運動が治療の基本だが、傷んだ軟骨を再生医療で治せるようになれば治療手段が増す」としている。(平成19年6月14日 読売新聞)

抗リウマチ薬「エンブレル」副作用の発現率

抗リウマチ薬「エンブレル」(一般名:エタネルセプト)の約1万3000例を対象に市販後に行った調査の結果がまとまった。懸念された感染症の発現率は、関節リウマチ治療に用いられる「レミケード」とほぼ同様との結果だった。また、皮下注射による皮膚軟部組織での感染症も低値だった。エンブレルは、皮下注射型の完全ヒト型可溶性TNFα/LTα受容体製剤で、投与後1カ月の間に重大な問題が発生しない場合に自己注射に切り替えることができる。1328施設で1万3477例を登録、データ回収が可能であった7091例を解析した。 その結果、副作用発現率は30.64%で、重篤な副作用の発現率は5.68%。懸念された結核が0.1%の7例、結核疑いが0.04%の3例であった。そのほか、細菌性肺炎が1.35%の96例、間質性肺炎が0.62%の44例、ニューモシスチス肺炎が0.23%の16例であった。皮下注射による皮膚組織などでの感染症は0.56%の40例であった。 また、エンブレル単独投与による副作用の発現率は35.3%に対して、メトトレキサート(MTX)との併用で26.8%だった。投与法の違いによる安全性も評価。通院して投与した場合の副作用発現率は34.2%だったのに対し、自己注射に切り替えた場合は27.5%、6カ月間自己注射した場合は22.6%で、自己投与による副作用の増悪はみられなかった。今回の全症例調査終了により、エンブレルを処方できる医療機関が拡大。(平成19年5月21日 薬事日報)

人工股関節、長持ち技術開発

人工股関節の摩耗を防従来の5倍以上も長持ちさせる新技術を、東京大バイオマテリアル工学の研究グループが開発した。人工股関節は、高齢者に多い変形性関節症や関節リウマチなどの病気の場合に用いられる。合金でできた脚側の球状の骨頭部を、骨盤側に埋めたポリエチレン製のカップで繰るんで関節の代わりにする仕組みで、国内では年間約10万件の手術が行われている。しかし、使っているうちに摩耗してポリエチレンの微粉末が生じ、周辺の骨を溶かすため関節が緩んでくる。痛みや歩行障害が生じるため、患者は10〜15年で取り換えなければならないという欠点があった。石原教授らは生体や水になじみやすい「リン脂質ポリマー」という新しい高分子化合物を開発してポリエチレン製カップの内壁を覆い、関節内に水の薄い膜を作ることで摩耗を防いだ。65年分の歩数に相当する6500万回の稼働テストでもほとんど摩耗がなかった。石原教授は「一度手術すれば生涯使え、患者の負担や医療費を大幅に減らせる」と話している。(平成19年3月9日 毎日新聞)

リウマチ発症に4倍の差 遺伝子のわずかな違い

関節リウマチに関係があると思われていなかった遺伝子が発症に関係し、わずかな構造の違いで発症の確率が4倍以上違うとの研究結果を板倉光夫徳島大教授らがまとめた。構造の違いは、遺伝子の塩基配列が1つだけ異なる一塩基多型(SNP)で、これを調べれば、リウマチになりやすいかどうかを診断できるとしている。 板倉教授らは、関節リウマチに関する遺伝子があると考えられていた14番染色体に注目。リウマチ患者とそうでない人950人ずつの塩基配列を比べ、細胞内の情報伝達に関係することが知られていた「PRKCH」という遺伝子の特定のSNPが最も違いが大きいことを突き止めた。 さらに周辺の3カ所のSNPの組み合わせで、最もリウマチになりやすい場合は最もなりにくい場合の4倍以上発症しやすいことが分かった。板倉教授は「治療薬開発につながるので、この遺伝子の機能解明を目指したい」と話している(平成18年9月22日 中国新聞)

関節リウマチ薬とがん

関節リウマチの治療で高い効果が知られる「生物学的製剤」が、悪性リンパ腫など、がんのリスクを高める可能性が指摘されていることから、日本リウマチ学会は長期の安全性調査に取り組むことを決めた。 これらの薬をめぐっては17日、がんのリスクが約3倍高まるという米英グループの新たな報告が米医師会雑誌に掲載された。 関節リウマチは免疫細胞が信号物質を過剰に出すことで、全身の関節の痛みや骨の破壊を招く。 「TNF」という信号物質の働きをじゃまする生物学的製剤は、国内では2剤が販売され、2万人ほどが使っている。 約9割の患者で効果がみられる一方、免疫力にかかわるTNFを抑えることで、感染症やがんになる確率が高まることも心配されている。 「関節リウマチ自体ががんのリスク要因」との報告もあり、結論は出ていない。 学会調査の中心になる宮坂信之・東京医科歯科大教授は「海外とは薬の用量も異なり、米英の報告をそのまま国内にあてはめることはできない。 やはり日本人でのデータが必要だ」と話す。(平成18年5月18日 朝日新聞)

C型肝炎・リウマチ薬剤、自己注射可能に 

中央社会保険医療協議会の診療報酬基本問題小委員会は30日、慢性のC型肝炎患者と既存治療では効果がみられない関節リウマチ患者が自宅などで自分で注射することを認めることを決めた。対象の薬剤は、C型肝炎がインターフェロンアルファ製剤、リウマチがエタネルセプト製剤。週に2、3回の投与が必要なため、患者の利便性を考慮して認められた。 両製剤の利用者は、それぞれ約3万人と約1万5000人と推定される。自己注射を希望する場合でも、副作用の危険性があるので2週間に1度は医師の診察を受けなければならない。(平成17年3月31日 朝日新聞)

リウマチ症状が微量の放射線で緩和

電力中央研究所は自然界に存在する放射線など低線量の放射線に長期間当たると、慢性リウマチなどの自己免疫疾患の症状が軽減することをマウスの実験で確かめた。 低線量放射線の働きを細胞や遺伝子のレベルで解明できれば、人の自己免疫疾患の治療に応用できる可能性があるという。 放射線は自然状態でも存在し、人間は宇宙から届く放射線などで平均で年間約1.1ミリグレイ(グレイは放射線の吸収線量を示す単位)を浴びている。一度に多量の放射線に当たると発がん作用があることが分かっているが、低線量の作用はよく知られていない。 研究チームは慢性関節リウマチなどの症状が全身に表れた自己免疫疾患の実験用マウスを使用。生後7週目から約5週間にわたり1時間当たり1.2ミリグレイの放射線を当てると、症状の軽減に最も効果があることを突き止めた。(平成16年5月24日 日経産業新聞)

関節リウマチ、患者の血中に特定酵素多く

手足の関節に炎症や変形が起きる「関節リウマチ」の患者の血中に、特定の酵素が健康な人よりも多く存在することが、滋賀医科大の牛山敏夫講師(整形外科)の調査で明らかになった。16日に岡山市で開かれた日本リウマチ学会で発表した。関節リウマチの診断は難しく、明確な基準がない。牛山講師は「新たな診断基準としてこの酵素を使うことができる可能性が高い」と話している。牛山講師は、関節リウマチの患者と健常者を各119人、リウマチ以外が原因で関節の軟骨がすり減って痛む変形性関節症の患者76人の血中成分を分析した。関節リウマチ患者は炎症を起こした関節付近でホルモン様たんぱく質「プロスタグランジン(PG)」が大量に検出されたため、PGを合成する酵素の濃度を調べた。その結果、関節リウマチ患者の酵素の血中濃度が、健常者や変形性関節症の患者の1.5〜2倍近くになることが明らかになった。また患者の症状が重いほど、酵素の濃度が高い傾向があった。牛山講師は「炎症が起きた関節付近で、この酵素が作られているようだ。関節リウマチの新しい診断基準に使えそうだ。さらに、この酵素が病気の原因にかかわっている可能性がある。関節リウマチの原因究明につながるかもしれない」と話している。(平成16年4月16日 毎日新聞)

リウマチ治療、若い世代にも人工関節推奨

全国に60万〜70万人の患者がいるとされるリウマチの治療ガイドラインを、日本リウマチ学会の研究班がまとめた。若い世代からの人工関節の導入や、強い薬を早い段階から併用する薬物療法の注意点などを盛り込んだ。15日から岡山市で開く学会総会で発表する。人工関節は骨と接する部分の素材の改良などで長持ちするようになり、比較的早期の方が定着しやすいことも分かってきた。「年配者だけでなく、20代の人にも勧められる治療法」と位置づけた

最近、早い時期から強い薬を併用することが増えている薬物療法では、死亡例が報告されたレフルノミドで間質性肺炎に注意が必要なことなどを解説した。今後、患者向けの冊子も作る予定だ。研究班代表の越智隆弘・国立病院機構相模原病院長は「患者さんが治療内容を理解する助けになれば。 医師も内科系、整形外科系が互いの治療法を理解し、相互補完的な治療をするために大いに活用してほしい」と話している。(平成16年4月14日 朝日新聞)

リウマチにおける骨破壊の仕組み解明

関節炎から始まるリウマチが重くなると、関節周辺の骨がもろくなってしまう。なぜ骨の破壊が進むのか、国立相模原病院を中心とする厚生労働省の研究班がその仕組みを解明した。50万人ともいわれる国内のリウマチ患者のうち3、4割が重症化し、骨の破壊抑制は大きな課題となっている。今回の成果は治療法開発の手がかりとして期待される。4月に岡山市で開かれる国際リウマチシンポジウムで発表される予定だ。

同病院臨床研究センターの鈴木隆二室長、塩野義製薬医科学研究所の前田朋子主任研究員らの研究班が、リウマチ患者から取った関節液を電子顕微鏡などで調べた。その結果、成熟する前の未分化細胞がいくつも集まり、骨を壊す巨大細胞(破骨細胞)に変化していることが分かった。 また、関節液の中で、さまざまな細胞の増殖を助けるナース細胞が異常に活性化していることにも着目

研究班は、未分化細胞が破骨細胞に変わるときに、ナース細胞が深くかかわっていると考えた。関節液内のこのような状態を実験的に作り出したところ、血液にごく普通に存在する細胞が変化して破骨細胞ができた。変化するときに細胞内に現れる遺伝子を取り出すことにも成功した。 研究班を立ち上げた同病院の越智隆弘院長は「リウマチの重症患者は骨折で寝たきりになることもある。今回の成果を、破骨細胞への変化を止める薬や遺伝子治療などの開発に役立てたい」と話す。(平成16年2月15日朝日新聞)


リウマチ治療薬で5人が副作用死か

仏系製薬会社アベンティスファーマ(東京・港)は27日、リウマチ治療薬「アラバ」(一般名・レフルノミド)の投与を受けた後に間質性肺炎を起こした患者5人が死亡したことを明らかにした。副作用とみられ、医師などに注意喚起したが、同社は「因果関係は調査中」としている。アラバは新しいタイプのリウマチ治療薬で、国内では昨年9月に発売、約3300人の患者が投与を受けている。通常のリウマチ治療薬は効果が表れるまでに服用後2、3カ月かかるのに対し、4週間程度で効果を発揮するという。世界70カ国以上で販売している同社グループの主力製品の1つで、国内では海外データを活用して承認を得ていた。同社は「日本人の症例が十分でない」として、発売後最初の約3000人分は副作用や有効性を詳しく調べていた。間質性肺炎を起こした患者の多くは肺繊維症などの既往歴があったため、同社は「間質性肺炎や肺繊維症の既往歴のある患者には新規処方を避け、処方中の患者は投与を中止してほしい」と求めている。(平成16年1月27日 日本経済新聞)

リウマチの原因物質「シノビオリン」見つけた

関節が炎症を起こす関節リウマチは、「シノビオリン」と呼ばれる酵素が過剰に働いて悪化するという、これまで知られていない発症メカニズムを、聖マリアンナ医科大難病治療研究センターの中島利博助教授らのチームが初めて突き止めた。従来の薬物治療では効果に限界があったが、リウマチの新たな治療法につながる成果として注目される。

関節リウマチは、関節を包む「滑膜」という薄い膜にサイトカインと呼ばれる生理活性物質が働いて炎症が起きると考えられ、サイトカインを抑える薬で治療が行われている。 だが、患者の約3割は効果がない。 中島助教授らは、関節リウマチ患者の滑膜を詳細に分析して、シノビオリンが活発に働いていることを発見。遺伝子組み換え技術でシノビオリンを過剰に作るマウスを生み出し、23匹で実験した。 すると、23匹すべてで関節リウマチが起き、シノビオリンが発症に深く関与する物質であると突き止められた。 シノビオリンを過剰に作るマウスは、滑膜細胞が異常に増殖していた。滑膜は、関節の“潤滑油”であるコラーゲンを作る組織だが、リウマチ患者はシノビオリンが過剰に働いて、“潤滑油”が必要以上に作られ、関節組織が傷んで炎症の原因になるらしい。中島助教授は「シノビオリンを抑えれば、すべての患者に治療効果が見込めそうだ」と話し、新薬や遺伝子治療技術の開発に着手、数年後に実用化に結びつけたいとしている。(平成15年11月25日 読売新聞)

関節リウマチ、積極治療へ転換「強い薬、早い段階で」

関節リウマチの標準的な治療法を検討してきた厚生労働省研究班の指針が固まった。効果の穏やかな薬を優先した従来の考え方を転換し、早い段階から効果の強い薬を積極的に使うことを打ち出す。これにより、関節が壊れるのを遅らせることが期待できる。指針は全国での治療のばらつきを減らすのが目的で、将来は患者への説明資料としても活用していく。 指針は越智隆弘・国立相模原病院長を主任研究者に、関節リウマチ治療の専門家らがまとめた。 関節リウマチは全身の関節が炎症を起こして壊れていく病気。強い痛みを伴う。これまで、比較的副作用の少ない「抗炎症薬」などを飲み、効果が足りなければ徐々に強い薬に変えていく治療が主流だった。だが、この方法では関節が壊れていくのを防げない。免疫の異常を抑える「抗リウマチ薬」をより早く使った方が、関節への障害を遅らせて生活の質を保つ効果が高いことが複数の臨床試験で分かってきた。 このため研究班はメトトレキサートといった抗リウマチ薬をできるだけ早く使うことを勧める。一方、遺伝子組み換え技術で作られ、7月に関節リウマチ用に承認された新しい薬インフリキシマブについては、有効性があるが副作用のリスクも伴うことなどから「メトトレキサートを3カ月以上使っても十分効果が得られない例に点滴で投与する」としている。 米国の指針も同様で、抗リウマチ薬を「診断から3カ月以内に始めるべきだ」としている。この病気は免疫の異常がかかわるとされるが原因はよく分からず、根本的な治療法は見つかっていない。国内患者は約70万人と推定されている。 越智病院長は「いずれは患者向けの分かりやすい指針も作り、治療法を選ぶ参考にしてもらいたい」と話している。(平成15年8月31日 朝日新聞)

関節リウマチ、発症関与の遺伝子を特定

関節がはれて変形する「関節リウマチ」の発病に関係するとみられる遺伝子を、理化学研究所の研究チームが特定した。 世界の100人に1人がかかる関節リウマチの原因解明や治療法の開発が期待できるという。 30日付の米科学誌「ネイチャー・ジェネティクス」(電子版)に掲載した。 全身の関節に、はれや痛みが起きる病気がリウマチと総称され、その代表的な病気が関節リウマチだ。 今回、遺伝子を特定したのは、理研遺伝子多型研究センター関節リウマチ関連遺伝子研究チーム(代表・山本一彦東京大教授)。 同チームは、個人ごとに微妙に塩基配列が異なる「SNP(スニップ)」と呼ばれる遺伝子に着目。 関節リウマチ患者830人と健康な人736人を対象に、全SNP遺伝子を解析し、配列を比較した。 その結果、関節リウマチ患者と健康な人では、「PADI(ペプチジルアルギニン・デイミナーゼ)」という酵素を作る4つの遺伝子のうち、4番目のPADI4遺伝子の配列が異なることを突き止めた。 この配列の違いから、関節リウマチ患者は、PADI4遺伝子から作られる酵素を、健康な人より多く持つ可能性も判明した。 PADI酵素は、体内にあるアミノ酸の「アルギニン」を、別のアミノ酸である「シトルリン」に変える働きがある。 同チームは「シトルリンが関節リウマチの発症に関係することは知られており、PADI4遺伝子がその発症にかかわる遺伝子といえる」と話す。(平成15年6月30日 毎日新聞)

DNA断片でリウマチ治療

大阪大学医学部付属病院(大阪府吹田市)は5日、人工合成したDNA(デオキシリボ核酸)の断片を使い慢性関節リウマチ治療の臨床試験を始めたと発表した。DNA断片を患部に注射して痛みや腫れを抑える。現在の医薬品では治療が難しい患者の症状を改善できる可能性があるという。 阪大教官らが設立したベンチャー、アンジェスエムジーが医薬品として開発を進め2008年ごろの実用化を目指す。 臨床試験では既存の医薬品で効果がなかった患者10人を対象に、治療を試みる計画。阪大の吉川秀樹教授が手がける。既に3人の患者を治療、痛みが軽くなるなど症状改善がみられたという。(平成15年3月6日 日経産業新聞)

抗癌薬リツキシマブが難治性RAに効果

1剤以上の抗リウマチ薬(疾患修飾性抗リウマチ薬=DMARD)が無効で、リウマチ因子が陽性の難治性関節リウマチ(RA)患者に、抗癌薬のリツキシマブ(わが国での商品名:リツキサン)が症状緩和効果を示すことがわかった。24週間のプラセボ対照試験で判明したもの。B細胞を標的とする、RAの新たな治療戦略として注目されそうだ。研究結果は、英国London大学のJ. C. W. Edwards氏らが、10月26日の「ACRプレナリー1」セションで発表した。リツキシマブは、わが国で昨年9月に発売された、非ホジキンリンパ腫の治療薬。B細胞表面のCD20抗原に対するキメラ型抗体で、CD20陽性細胞を特異的に傷害する。RA患者の7割はリウマチ因子が陽性だが、このリウマチ因子は、自分自身の免疫グロブリンG(IgG)に対する自己抗体だ。近年の研究で、RA患者のIgGには高率で構造異常(糖鎖異常)があり、IgGを産生するB細胞の特定の酵素活性が下がっていることや、関節局所でB細胞が活性化されていることが判明。「B細胞をターゲットとするRA治療」への関心が高まっていた。Edwards氏らは、以下の組み入れ条件を満たすRA患者160人を4群に割り付け、4通りの介入を行って24週後の症状改善度を比較した。組み入れ条件は、1.メトトレキサート(MTX)以外のDMARDが1〜4剤無効、2.リウマチ因子が陽性(20IU/ml以上)、3.圧痛関節数、腫脹関節数がいずれも8個以上、4.C反応性蛋白(CRP)高値、血沈の亢進、朝のこわばり(45分以上)の3つのうち2つ以上を満たす−−の4つ。試験設計はかなり込み入ったもので、まず全員に16週以上、直近4週は週10mg以上の一定の用量で、MTXの単剤投与を行う。その後、ステロイド併用下で17日間、1.MTX(+プラセボ)、2.リツキシマブ(+プラセボ)、3.リツキシマブ+シクロフォスファミド(+プラセボ)、4.リツキシマブ+MTX−−を投与する。この介入期間終了後は、MTX群とリツキシマブ+MTX群には従前通りMTXを投与し、残りの2群にはMTXを投与せずに、24週目まで追跡した。その結果、現在までに試験を終了している121人についての解析で、MTX群(30人)に比べ、リツキシマブ+シクロフォスファミド群(30人)、リツキシマブ+MTX群(31人)では24週後の臨床症状が有意に改善されることが判明。リツキシマブ群(31人)でも、有意ではないが改善傾向が認められた。米国リウマチ学会(ACR)の評価基準(コアセット)で20%以上の改善(ACR20)が認められた患者比率は、順に33%、84%、80%、58%だった。一方の副作用は、低血圧(MTX群で17%、リツキシマブ単剤群で36%)や高血圧(同:20%、13%)の頻度が高かった。重篤な副作用は総計11例認められ、腱の断裂、椎骨骨折、貧血、腎機能障害、血栓症などのほか、感染症も4例生じ、うち一人が死亡した。重篤な副作用の発生率に群間の偏りはなかった。Edwards氏らは今回得られた結果を、「リツキシマブは、たった2回の静注で、少なくとも6カ月間は症状改善効果が持続する。この効果はMTXやシクロフォスファミドとの併用で増強される。忍容性も高く安全性も許容範囲」と総括した。だが、留意すべきなのは、介入期間中にステロイドをかなり大量に使用したこと。静注と経口を併せ、使用量は一人当たり総計910mgとなった。発表後の質疑応答では、この投与量の多さに疑念を呈する声も上がった。また、介入期間中、リツキシマブとシクロフォスファミドは1週おきに2回投与したが、リツキシマブの投与量が多いことを懸念する声もあった。具体的には1000mgで、非ホジキンリンパ腫の治療に使われる投与量(体表面積1m2当たり375mg)と比べ、体格にもよるが1.5倍ほどの量となる。シクロフォスファミドの1回投与量は750mgだった。RA患者にはおそらく一定数、“B細胞性のRA”が含まれていると考えられ、そうした患者にとってB細胞をターゲットとする治療戦略はかなり有効性が高いと期待できる。とはいえ、腫瘍壊死因子(TNF)αや炎症性のインターロイキンをターゲットとする抗サイトカイン療法など、他に有効性の高い治療手段が登場しつつあるのも事実。今後は、適用患者の絞り込みやプロトコールの改変などが必要となりそうだ。(平成14年11月7日medwave)

関節リウマチの新治療薬開発

関節リウマチの新治療薬を大阪大健康体育部・吉崎和幸教授(臨床免疫学)らのグループが開発し、臨床試験で関節の痛みが減る効果を確認した。抗体を使った新タイプの薬で、従来の薬に比べ副作用が少ないのが特色。24日から米国で開かれる米リウマチ学会で成果を発表する。 臨床試験に使った治療薬は「MRA」。関節リウマチでは、生理活性物質「インターロイキン6」(IL6)が細胞表面にある受容体に結合して炎症が起きることが分かっている。MRAは受容体にふたをすることでIL6と受容体の結合を妨げ、炎症を抑える仕組みだ。MRAはこの受容体だけにくっつく抗体でできている。 国内の患者164人を対象に、(1)MRAを患者体重1キロ当たり4ミリグラム注射する(2)同8ミリグラムを注射する(3)MRAを含まない偽薬を注射するの3集団に分けて4週間隔で3回点滴した。 その結果、痛みがある関節の数が減るなど米リウマチ学会の評価基準で改善が認められた患者は8ミリグラム使用の人の78%、4ミリグラム使用でも57%を占めた。偽薬では11%だった。 副作用は微熱などで、許容できる程度だという。今後、最終段階の臨床試験をして、早期の実用化を目指すという。(平成14年10月22日 朝日新聞)

メトトレキサート服用のリウマチ患者、非服用者より死亡率が低いことが判明

米国などで慢性関節リウマチ治療の第一選択薬として使われているメトトレキサート(わが国での適応商品名:リウマトレックス)が、リウマチ患者の生命予後を改善する可能性があることがわかった。米国で行われた前向き追跡研究で、同薬の服用者では非服用者よりも総死亡率が6割低いことが判明したため。疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)を選ぶ際には、症状の改善度に加え、今後は生命予後も考慮されるようになりそうだ。研究結果は、Lancet誌4月6日号に掲載された。この研究を行ったのは、米国Kansas大学関節炎研究センター財団と、米国Harvard大学附属Massachusetts総合病院の研究グループ。同研究グループは、DMARDの薬効を比較した臨床試験や観察研究で、症状や患者の生活の質(QOL)の改善に関するデータは豊富だが、生命予後に関する検討が欠けている点に着目。Kansas大学附属Wichita関節炎センターの受診患者を前向きに追跡し、メトトレキサートや他のDMARDの服用者と非服用者とで、生命予後が変わるかどうかを調べた。過去20年間の受診患者1240人のうち、メトトレキサートを一度でも処方された経験のある患者(中断者も含む)は588人。平均6年間の追跡期間で、全体で191人、メトトレキサート服用者では46人が死亡した。ただし、患者の平均年齢は服用者も非服用者も57歳で、平均血圧や高血圧・糖尿病の合併者比率などに違いはなかったが、リウマチの重症度はメトトレキサート服用者で有意に重く、併用薬数、ステロイド併用率なども服用者で高かった。そこで、研究グループは患者背景の違いや組み入れ年、追跡年数などを補正して、非服用者の死亡率を1とした場合の服用者の死亡ハザード比を求めた。その結果、メトトレキサート服用者の死亡ハザード比は0.4(95%信頼区間:0.2〜0.8)となり、服用者で有意に死亡率が低いことが明らかになった。また、死因を冠動脈疾患とそれ以外に分けて解析すると、メトトレキサート服用者では、冠動脈疾患死のハザード比が0.3(95%信頼区間:0.2〜0.7)と、特に低くなっていることもわかった。なお、スルファサラジン(サラゾスルファピリジン、わが国での適応商品名:アザルフィジンなど)や水酸化クロロキン(本邦では発売中止)、ペニシラミン(本邦では適応外)など他のDMARDでは、服用者と非服用者で死亡率に有意差はなかった。慢性関節リウマチの罹患者は、非罹患者よりも平均余命が短く、特に心血管疾患による死亡者が多いことが知られている。その機序として、リウマチによる慢性炎症状態が、動脈硬化を促進すると考えられている。研究グループは、メトトレキサートにある全身性の抗炎症作用などが、冠動脈疾患死を減らし、生命予後を改善したと考察している。わが国では1999年8月から、慢性関節リウマチに適応を持つメトトレキサート製剤の販売が開始されたが、「重篤な副作用により、致命的な経過をたどることがあるので、緊急時に十分に措置できる医療施設及び本剤についての十分な知識とリウマチ治療の経験をもつ医師が使用すること」との警告や「過去の治療において、非ステロイド性抗炎症剤及び他の抗リウマチ剤により十分な効果の得られない場合」との適応制限があるためか、処方頻度は決して高くない。特に心血管・代謝系疾患では、欧米とわが国で有病率や病態が大きく異なるため、海外での検討結果をそのまま導入はできない。しかし、本研究が示した「薬剤による生命予後の違い」という観点は、わが国での薬剤評価においても生かされるべきではないだろうか。患者の症状だけでなく、生命予後を改善する(悪化させない)という観点で、抗リウマチ薬が比較検討されることを望みたい。(平成14年4月11日medwave)

関節リウマチの仕組みの一端を解明

慢性関節リウマチが起きる仕組みの一端を、野田政樹・東京医科歯科大教授らが解明した。日本にも約50万人の患者がいるが、発病の仕組みが不明なため根本的な治療法がなかった。これが突破口になる可能性がある。2日発行の米科学アカデミー紀要に発表する。同教授らは、リウマチ患者には関節に「オステオポンチン」というたんぱく質がたくさん存在する例が多い、という報告に注目した。この物質は細胞間の情報伝達役だが骨粗しょう症を促進することも知られている。まず、このたんぱく質を合成できないマウスをつくった。慢性関節リウマチの症状である関節の炎症や軟骨破壊を起こす抗体を与えると、普通のマウスは症状が出たが、このマウスではほとんど出なかった。野田教授は、「オステオポンチンをつくれないマウスは感染症に少し弱いが、寿命もほとんど変わらない。この物質の働きを抑えても副作用は少ないと期待されるので、治療薬の開発につなげたい」としている。(平成14年4月2日 朝日新聞)