不妊について


コーヒー、1日2杯以上で、流産の危険2倍

1日に2杯以上コーヒーを飲む妊婦は飲まない人と比べ、流産の危険が2倍になる。そんな調査結果が米国最大の会員制健康医療団体「カイザー・パーマネント」の研究チームによって明らかになった。米産婦人科ジャーナルに掲載された論文によると、研究チームは1996年10月から98年10月にかけ、同州サンフランシスコの1063人の妊婦を調査。その結果、1日にコーヒー2杯分に相当する200ミリグラムのカフェインを摂取した妊婦はカフェインを摂取ない妊婦と比べ、流産する割合が2倍に高まった。コーヒーだけでなく紅茶などを通じ、カフェインを摂取した妊婦も流産の危険が高かったことから、研究チームはカフェインが原因物質と結論付けた。カフェイン摂取は胎盤の血流減少などを引き起こし、これらが胎児に悪影響を与える可能性があるという。(平成20年1月23日 毎日新聞)

65人に1人「体外受精」で誕生

精子と卵子を体外で受精させて子宮へ戻す「体外受精」によって国内で生まれた子供が、2003年の1年間で過去最高の1万7400人に達したことが、日本産科婦人科学会(武谷雄二理事長)の調査で13日明らかになった。調査したのは、同学会に体外受精の実施登録施設として届け出ている590施設。それによると、03年の体外受精による出生児数は1万7400人と、前年より2177人増加した。全出生数(112万3610人)に占める割合は1・5%で、この年に生まれた65人の赤ちゃんのうち1人が体外受精児になる計算だ。世界初の体外受精児は1978年に英国で誕生し、国内では83年に東北大が成功した。以来、体外受精は年々増え続け、同学会が調査を始めた86年以来の累積出生数は計11万7589人となった。調査を担当した久保春海・東邦大教授(産婦人科)は、「治療1回あたりの妊娠率はそれほど向上しておらず、不妊患者の数が増えた結果だろう。 安全に妊娠・出産できる年齢限界は35歳以下ということを認識してほしい」と述べ、体外受精件数を引き上げている高齢出産の増加に警鐘を鳴らしている。平成17年9月14日 読売新聞

妊娠率3倍、受精卵の「卵管内移植」

体外受精でもなかなか妊娠しない不妊の女性は、受精卵を子宮ではなく卵管内に移植する「卵管内移植」だと妊娠率が約3倍に高まることが、セントマザー産婦人科医院(北九州市)の田中温院長の研究で分かった。受精卵は通常、子宮に到達する前に卵管で育つことから、子宮に直接入れる一般的な方法に比べ、この方法では良質な受精卵になると考えられる。この移植法は、腹腔(ふっくう)鏡を使うことから、体の負担が大きく、ここ10年ほどほとんど使われなかったが、再び脚光を浴びた形だ。不妊治療の妊娠率は、卵子の質に大きく左右される。体外受精では平均約25%なのに対し、高齢などで卵子の質が悪かったり、採取できる卵子の数が少ない患者の場合、妊娠率は10%以下と低いのが現状だ。田中院長は、こうした特に妊娠しにくい患者39人を対象に、顕微鏡を使う「顕微授精」で精子と卵子を受精させた後、一度に1―3個の受精卵を卵管内に戻したところ、妊娠率は30・3%に上昇した。田中院長は「卵子の数が非常に少ない患者には有効な手法として見直す必要がある」と話している。(平成16年1月13日読売新聞)

子宮組織利用で体外受精妊娠率2倍に

体外受精した受精卵と、患者自身の子宮内膜の組織を一緒に培養することで、体外受精の妊娠成功率を約2倍に向上させる不妊治療法を、盛岡市の産婦人科医が開発した。 45歳の女性も妊娠、出産に成功するなど、高齢の不妊患者にも効果が高いという。 来月1日から東京で開かれる日本不妊学会で発表される。 開発したのは瀬田産婦人科内科医院の瀬田道広院長。 瀬田院長は、子宮内膜が細胞の劣化を防ぐホルモン「IGF―1」を分泌し、受精卵の成長を助ける働きがあることに着目。 1996年から研究してきた。 この手法は、排卵後1週間ほど経た妊娠しやすい時期に、患者の子宮内膜組織を取り、1週間培養して凍結保存。 体外受精の際に自然解凍し、受精卵の培養液に加える。 通常の体外受精の培養期間(2日間)より長い5日間体外で培養し、胚盤胞(はいばんほう)という段階まで育てて子宮に戻す。 同院は昨年、この手法による体外受精を391人に実施。 妊娠率が通常の体外受精の全国平均(24・7%)の約2倍にあたる49・6%だった。 40歳以上の患者の妊娠率も44%と高く、今年2月には東京都内の45歳の女性が女児を出産した。瀬田医師は「子宮内に近い環境が受精卵の安定した成長につながるのではないか」と話している。 日本で初めて体外受精を行った鈴木雅洲・東北大学名誉教授の話「子宮内膜の役割に着目した画期的な手法。 患者自身の細胞を使うため安全性が高く、今後広がるのではないか」(平成15年9月30日 読売新聞)

体外受精、6年2カ月間凍結保存した受精卵を母体に戻し出産

体外受精後、6年2カ月にわたって凍結保存した受精卵を母体に戻して妊娠、出産させることに、斗南病院(札幌市中央区)生殖内分泌科長の東口篤司医師が成功していたことが23日、分かった。東口医師によると、これほど長期保存した受精卵による妊娠は世界的にも珍しいといい、他の病院関係者は「日本で報告された中では恐らく最長ではないか」と話している。10月1日から東京都で開かれる日本不妊学会で発表される。東口医師によると、出産したのは小樽市内に住む40代の女性。 93年から同病院で不妊治療を始め、95年3月に体外受精した。その際、体内に戻さなかった余剰卵を4月、凍結保存した。その後、凍結受精卵を使った妊娠を試みたが、うまくいかなかった。夫婦は一度妊娠をあきらめかけたが、13回目のチャレンジで、01年6月に6年2カ月ぶりに解凍した受精卵で妊娠し、昨年2月に男児を出産した。その後も母子ともに健康だという。がんなど重い病気に侵される前に、体外受精させて凍結保存し、治療後に母体に戻すなど妊娠の選択肢が広がり、不妊や病気で悩む人に朗報となるという。東口医師は「長期保存しても胚(はい)の質は低下しないことを立証できた。不妊に悩む人たちに希望を与えられると思う」と話している。(平成15年9月24日 毎日新聞)

不妊治療に年10万助成、2年を上限、夫婦間体外受精など

政府・与党は2日、少子化対策の一環として、2004年度から不妊治療費の一部を助成する方針を固めた。 精子と卵子を取り出して受精させる「体外受精」、顕微鏡で確認しながら卵子に精子を直接注入する「顕微授精」などの治療を受けた夫婦に対し、年額10万円を2年を限度に助成する案が有力だ。不妊治療のうち、体外受精、顕微授精などは公的医療保険が適用されず、治療費は全額自己負担となる。 厚労省などの調査では、医療機関によって治療費は異なるが、体外受精は1回30万円、顕微授精は40万円程度かかる。 成功率は2―3割とされており、治療が繰り返され、費用がかさむケースも多い。 助成制度は、治療を受けた夫婦の申請に基づき、治療費の一部として年10万円程度を支援する。申請は年1回、最大2年まで認めることとし、プライバシー保護の観点から都道府県などを申請窓口とする方向だ。 助成金の予算規模は、数十億―100億円程度になる見通しだ。(平成15年5月2日 読売新聞)

不妊の原因解明

精子の成長に欠かせない新しいたんぱく質を、東京大の広川信隆教授(分子細胞生物学)ら日仏の研究グループがマウスから発見した。人間でも同じ分子が存在するとみられる。不妊の原因解明や男性向け避妊薬の開発につながる成果で、20日発行の米科学誌「サイエンス」に掲載された。精母細胞と呼ばれる細胞が精巣の中で成熟することで、精子がつくられる。見つかったたんぱく質は、この過程で働いていた。研究グループが、特殊な薬剤を使ってこのたんぱく質の働きを抑えると、精母細胞の成熟が止まった。逆に、薬剤の働きを抑えると、精母細胞の成熟は再開した。このたんぱく質が、心臓や肝臓など他の臓器や器官には存在していないことも確認された。広川教授は「このたんぱく質は精子の成長の要になっている。その働きをうまく制御できる薬剤を開発すれば、新しい避妊薬になる」と話している。(平成14年12月20日 毎日新聞)

未受精卵保存し好きなとき妊娠・米大が卵子バンク発足へ

米スタンフォード大学は10日までに、健康な女性の卵子を凍結して保管し、産みたいときに自分の体外受精に使う新事業を、今年末にも始めることを明らかにした。希望に応じて若いうちに卵子を保存しておき、妊娠したくなったら使うことができるというが、治療でやむを得ないケースではないため、倫理上の議論も呼びそうだ。 がん患者が放射線治療を受ける前に卵子を凍結保管する例などはあるが、治療と全く関係ない目的での「卵子バンク」は珍しい。 同大は卵子の凍結を受け付ける対象者の年齢や募集方法を検討中。当初は無料で数十人に実験的に行う。 未受精卵は受精卵に比べ解凍後に機能を失うことが多かったが、ここ数年で技術開発が進み、体外受精による出産の成功例が増えている。スタンフォード大でも1年半前から、抗がん剤投与や放射線治療を受ける女性がん患者ら、約30人の卵子を凍結保存している。(平成14年6月11日 日本経済新聞)