婦人臓器疾患


子宮頸がんワクチン

厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の部会は子宮頸がんを予防するワクチン「サーバリックス」の承認を了承した。10月に正式承認される見通し。このワクチンはオーストラリアなど95ヵ国で承認されているが、国内で子宮頸がんワクチンが承認されるのは初めて。2007年9月にグラクソ・スミスクライン社が承認申請していたもので、10歳以上の女性が接種対象となる。子宮頸がんは、性的接触によって感染するヒトパピローマウイルス(HPV)が主な原因とされている。今回のワクチンを感染前に接種すれば、子宮頸がんの原因の7割を占める2種類のHPVの感染が予防できると期待される。国内では毎年約7000人が子宮頸がんになり、約2500人が死亡している。特に20〜30歳代の若い女性で増えつつある。(平成21年9月1日読売新聞)

子宮頸がん、新ワクチン開発

子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルスの新たなワクチンを、国立感染症研究所などが開発した。日本人は欧米人と異なるウイルスの型での感染例が多いことも確認した。欧米などで使われているワクチンは一部の型しか効かないが、新ワクチンは日本人に幅広く有効となる可能性が高い。ウイルスは遺伝子の型の違いから約100種に分類され、このうち15種類に発がん性がある。 欧米では16型と18型が発症原因の約70%を占めるが、日本の患者では16型42%、18型7%と半数にとどまる。製薬企業が厚生労働省に16型と18型に対応したワクチンの承認を申請している。研究チームは15種類に共通する構造があることに注目。この構造を作るアミノ酸配列を特定し、その特徴からワクチンを開発した。ウサギに接種し16型と18型を含む6種類で感染防止を確認した。日本人の患者の76%が6種類による感染だったことも突き止めた。 日本では毎年1万2000人以上が発症。(平成20年10月19日 毎日新聞)

子宮体がん、「毎日コーヒー」で減 

コーヒーを毎日1〜2杯飲む女性は、週に2日程度しか飲まない人に比べて、子宮体がんの発症率が4割少ないことが厚生労働省研究班の大規模調査で分かった。飲む量が多いほど、発症率は低い傾向がみられた。研究班は、9府県の40〜69歳の女性約5万4000人を05年まで追跡調査。約15年間に117人が子宮体がんを発症した。コーヒー摂取量と発症率との関係を調べると、コーヒーを毎日1〜2杯飲むグループは、週2日以下しか飲まないグループに比べ、子宮体がんの発症率は4割少なかった。毎日3杯以上飲むグループは6割も少なかった。緑茶の摂取量も調べたが、発症率に関連はみられなかった。子宮の入り口にできる子宮頸がんは、ウイルス感染が原因と考えられている。一方、子宮の奥の内膜にできる子宮体がんは、女性ホルモン「エストロゲン」や血糖値を調節する「インスリン」との関連が指摘されている。担当した国立がんセンター予防研究部の島津太一研究員は「コーヒーを飲むと、エストロゲンやインスリンの濃度が下がることが知られている。この作用が発症率に影響している可能性がある」と話す。欧米ではコーヒー摂取と子宮体がんの関連がみられないとの研究が多い。その理由として、ホルモン補充療法が日本より広く行われ、コーヒーの影響が表れにくいと考えられているという。(平成20年9月2日 毎日新聞)

乳がん家系は前立腺に注意 リスク4倍

乳がんの多い家系に生まれた男性は前立腺がんの発症リスクが高いことをオーストラリアなどの研究チームが19日までに突き止めた。家族性乳がんのリスク因子として知られるBRCA2遺伝子の変異が前立腺がんの因子でもあることが確認でき、2つのがんの関連が初めて分かった。BRCA2遺伝子に変異を持つ男性の前立腺がん発症リスクは、変異がない男性の4倍になるという。成果は米医学誌クリニカル・キャンサー・リサーチに掲載された。家族性乳がんや卵巣がんの研究を続けてきたチームは、一部の家系では前立腺がんも多いことに気付いた。BRCA2遺伝子の変異が家族性乳がんのリスク因子となることは過去の研究で分かっており、チームは前立腺がんでもこの遺伝子変異が起こっているかどうかを調べ、確認にこぎ着けた。チームは「乳がんの多い家系に生まれた男性は検査を。BRCA2遺伝子変異による乳がんを克服した女性は、兄弟や息子に注意を呼び掛けてほしい」としている。(平成20年5月19日 中国新聞)

大豆食品成分、乳がんリスク抑える

大豆食品に多く含まれるイソフラボンの一種「ゲニステイン」の血中濃度が高い女性は乳がんになるリスクが最大で3分の1に下がるという調査結果を、厚生労働省研究班がまとめた。研究班の岩崎基・国立がんセンター室長は全国の40―69歳の女性2万5000人を10年半にわたって追跡調査した。この間、乳がんになった144人に、ならなかった288人を加えた計432人について、血液中のゲニステイン濃度と乳がん発症リスクとの関連を調べた。血中濃度が高い順に4つのグループに分けて乳がん発症リスクを比較すると、最も濃度が高いグループは最も低いグループの3分の1にとどまった。閉経前の女性に限ると7分の1まで低下した。最も濃度が高いグループのゲニステイン摂取量は、豆腐だと1日100グラム、納豆なら同50グラムに相当するという。(平成20年3月7日 日本経済新聞)

乳癌の放射線治療期間が短縮

放射線を正確に標的に当てる強度変調放射線治療(IMRT)の利用で、1日あたりの照射線量を増やし、乳癌患者の治療期間を従来の6〜7週間からわずか4週間に短縮できるとの研究結果が米Fox Chaseフォックス・チェイス癌センターのGray Freedman博士による報告があった。少なくとも腫瘍が小さい乳癌患者では、腫瘍摘出術と放射線治療の併用で、乳房切除術と同等の生存率および治癒率を得られることが十分に裏付けられている。しかし、放射線治療には6〜7週間を要することから二の足を踏む女性が多く、期間の短縮が重要課題となっている。いくつかの研究では、体外からの照射と放射性シードの埋め込みを併用する1週間の治療について検討されているが、この治療は腫瘍の極めて小さいごく一部の患者にしか適さない。今回の研究では、乳癌の女性75人(平均52歳)を対象に、IMRTを用いて1日当たりの線量が通常より高い治療を実施し、その副作用を調べた。従来に比べて線量の総計が多くなるわけではなく、通常の6〜7週間の治療で計60Gy(グレイ、吸収線量を示す単位)を照射するのに対して、この4週間治療では56Gyだという。IMRTでは、コンピューターが制御するX線加速器を用いて腫瘍または腫瘍内の特定部位に極めて正確に放射線を照射でき、周辺組織の被曝を最小限にとどめることができる。短期の結果は良好で、従来の治療を超える副作用は出ていない。一部の患者に皮膚障害が認められたが、6週目までには治まり、治療終了から6週間後には、皮膚の外観が治療前と同じに戻った。今後、長期的な問題の有無を確認するため5年間の追跡が行われる。過去の研究から、1980年代に放射線治療を受けた女性の心疾患リスクが高いことがわかっているが、IMRTを用いれば心臓の被曝が少なくなり、リスクも軽減できるはずだという。ただし、IMRTには利用できる施設が限られるという欠点があることをFreedman氏も認めている。また他の専門家からは、今回の研究が小規模で、さらに検証する必要がある点や、長期的な毒性と再発の可能性について疑問が残る点も指摘されている(平成19年6月7日 日本経済新聞)

高身長・未出産の女性、乳がんリスク高い

日本人で乳がんのリスクが高い女性は、身長160センチ以上、出産経験がない、初潮年齢が早いなどの傾向があることが、厚生労働省研究班の約5万5000人を対象にした疫学調査でわかった。乳がんの発生には女性ホルモンの分泌が関与しているとされ、大規模な調査で裏付けられた形だ。同研究班は1990年と93年に40〜60代だった全国の女性を対象に追跡調査を実施。閉経の前か後か、体格、初潮年齢などの条件で集団に分け、2002年までに乳がんを発症した人数から、各集団の危険性を比較した。閉経後の場合、身長160センチ以上の女性は、同148センチ未満の女性に比べ、乳がんのリスクが2・4倍に高まった。また48歳未満に閉経した人に比べ、54歳以上で閉経した人のリスクは2倍になった。出産経験がない女性は、ある女性に比べ2・2倍だった。閉経前の場合、初潮年齢が16歳以上だった女性は、14歳未満だった人に比べ、リスクが約4分の1に下がった。出産経験がない閉経前の女性は、ある女性に比べて1・7倍に増えた。 (平成19年2月21日 読売新聞)

乳がんの見落とし、40代では3割ある

マンモグラフィー(乳房X線撮影)を視触診と併用する乳がん検診を受けても、40代では3割近くが乳がんを見落とされている可能性があることが、厚生労働省研究班の研究でわかった。乳腺密度が濃い40代は、マンモグラフィーに腫瘍が映りにくい可能性が以前から指摘されていた。それが裏付けられた形で、研究班は、超音波を併用する検診の研究が必要だと指摘している。宮城県でマンモグラフィー併用検診を受けた延べ約11万2000人について、検診後の経過を追跡調査した。宮城は「地域がん登録」の実施県で、がんになった住民の治療や予後の情報が、県に集積されている。研究班は、検診で「陰性」とされたのに、その後、次の検診を受けるまでに乳がんが見つかった人を「見落とされた可能性がある人」と判断。検診で乳がんを発見できた人と合わせ、「乳がんがある人を、がんと正しく診断できた割合」を算出した。その結果、40代の感度は71%で、3割近くが見落とされていた可能性があったことがわかった。50代の感度は86%、60代は87%だった。 日本では、乳がんにかかる人は40代が最も多い。だが40代は乳腺密度が濃く、マンモグラフィーに腫瘍が映りにくいといわれている。一方、エコー検査は乳腺の濃さに影響されにくく、20〜40代の乳がん発見に効果が高いと期待されている。(平成19年2月5日 朝日新聞)

30代の女性は乳がん・子宮がんの発症が2倍に急増

日本人女性は20代後半から乳がんや子宮がんの発症が急増し、30代のがん罹患率は同世代の男性の2倍以上とした分析結果を、厚生労働省研究班がまとめた。10代後半から30代のがんは、比較的治療成績が良いため死亡データなどから把握しにくく、詳しい罹患傾向が分かっていなかった。育児や働き盛りの世代の実態が明らかになったことで、社会的損失を減らすためのきめの細かいがん対策が可能になるのではと指摘された。研究班は、大阪府など15府県が1993年から2001年まで、地域がん登録で集めた約137万人の患者データを解析した。1年間に新たにがんと診断される人は、年齢が上がるとともに増加。男性では30代前半は人口10万人当たり27人、同後半は50人だったのに対し、女性は30代前半に67人、同後半が115人となっていた。これに伴い30代では、女性の罹患率は男性の2・3−2・5倍だった。乳がんや子宮がんが20代後半から急増しているためで、30代では女性がかかるすべてのがんのうち乳がんと子宮がんが約60%を占めていた。45歳以降は、たばこや食生活などと関連が深い胃がんや肺がんが増加傾向となり、がん全体の罹患率は男性が上回った。(平成18年9月29日 中国新聞)

乳がん手術後の乳房を再建

九州中央病院(福岡市)は12日、乳がん手術後に乳房を再建する新手法の臨床研究を始めると発表した。患者自身の脂肪を採取し、一部含まれる脂肪などに成長する未熟な細胞を濃縮してから移植する方法で体に定着しやすくする。 従来は背中の筋肉などを使っていたが、脂肪は採取しやすく、患者の肉体的な負担を軽減できるとみている。 (平成18年5月13日 日本経済新聞)

65人に1人「体外受精」で誕生

精子と卵子を体外で受精させて子宮へ戻す「体外受精」によって国内で生まれた子供が、2003年の1年間で過去最高の1万7400人に達したことが、日本産科婦人科学会(武谷雄二理事長)の調査で13日明らかになった。調査したのは、同学会に体外受精の実施登録施設として届け出ている590施設。それによると、03年の体外受精による出生児数は1万7400人と、前年より2177人増加した。全出生数(112万3610人)に占める割合は1・5%で、この年に生まれた65人の赤ちゃんのうち1人が体外受精児になる計算だ。世界初の体外受精児は1978年に英国で誕生し、国内では83年に東北大が成功した。以来、体外受精は年々増え続け、同学会が調査を始めた86年以来の累積出生数は計11万7589人となった。調査を担当した久保春海・東邦大教授(産婦人科)は、「治療1回あたりの妊娠率はそれほど向上しておらず、不妊患者の数が増えた結果だろう。 安全に妊娠・出産できる年齢限界は35歳以下ということを認識してほしい」と述べ、体外受精件数を引き上げている高齢出産の増加に警鐘を鳴らしている。平成17年9月14日 読売新聞

乳房温存療法に初のガイドライン

乳がんの手術で乳房を残す「乳房温存療法」について、厚生労働省研究班は初の指針をまとめた。温存療法は現在、乳がん手術の第1位の選択肢だが、施設により実施率が大きく異なる、放射線治療医など専門医抜きで実施している施設がある、などの問題を抱える。指針の徹底で、施設間格差を縮め、全体の水準向上を目指す。 乳がんは日本人女性が最も多くかかるがんで、毎年約3万5千人が新たに患者となっている。腫瘍(しゅよう)の周りを切りすぎると乳房の形が悪くなりQOL(生活の質)が下がるが、切除が不十分だと再発率が高くなる。日本乳癌(がん)学会によると、温存療法は80年代後半から広まり、03年に全摘手術を抜いた。 指針では、切除後も乳房の形を大きく損なわないなら腫瘍の大きさが4センチまで温存療法が許されるとした。また腫瘍が複数あっても、近くに2つある場合で安全性が保てると判断されれば、温存の適応とした。温存療法の場合、切除後、残された乳房に放射線を当てて再発を防ぐ。指針では日本放射線腫瘍学会に属する医師や技師が少なくとも1人、勤務していることを実施施設に求めた。手術前に抗がん剤を使い、腫瘍を縮小することも推奨した。 温存療法に関しては、3センチまでの腫瘍を適応とするなどとした乳癌学会の99年の指針があるが、医療の進歩を反映するとともに、問題点の解消を狙った。 新指針をまとめた霞富士雄・癌研有明病院乳腺科部長は「実際に温存療法の適応となるのは60%台だろう。指針は強制ではないが、科学的根拠に基づいた診療をして欲しい」と話す。指針は医師向けと患者向けがある。 それぞれ各1部を乳癌学会の認定医に配り、近く出版もする予定だ。(平成17年5月1日 朝日新聞)

ウイルスで乳がん細胞破壊

ウイルスの増殖機能を利用し乳がん細胞を破壊して治療する臨床試験を大阪府立成人病センター(大阪市)の高橋克仁遺伝子治療室長らが計画、30日に同センター倫理審査委員会専門部会が大筋で承認した。同内容の臨床試験を名古屋大が昨年実施、がん細胞は30−100%消滅し、安全性も確認された。高橋室長らは名古屋大より観察期間を長くし、治療効果を詳しく調べる。患者6人を対象に、来年3月にも実施する。高橋室長によると、毒性が弱い特殊なヘルペスウイルスを腫瘍(しゅよう)に注射、4週間後に一部を切り取って検査し、さらに4週間経過をみる。ウイルスが増殖し、がん細胞を内部から突き破って破壊するほか、破壊されたがん細胞が攻撃対象の目印になり、患者の免疫力が上がることが期待できるという。このウイルスが正常な細胞で増殖する可能性は低いといい、患者にウイルスによるアレルギーがないかを事前に検査し試験終了後は抗ウイルス剤を服用する。高橋室長は「腫瘍を小さくし、乳房温存手術が可能な状態にするなどの治療につながるのではないか」と話している。(平成16年1月30日 産経新聞)

喫煙で乳がんのリスク4倍に

閉経前の女性は喫煙によって乳がんになるリスクが、たばこの煙を吸う機会がない女性の3.9倍に高まり、受動喫煙だけでも2.6倍になることが、厚生労働省研究班(主任研究者=津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)の調査でわかった。岩手、秋田、長野、沖縄の4県で、90年に生活習慣アンケートに答えた40〜59歳(当時)の女性約2万2000人を約10年間追跡調査し、180人が乳がんになった。 90年時点で閉経していたかどうかで分けて分析し、「受動喫煙」は、喫煙者と10年以上一緒に住んだことがあるか、職場などでほぼ毎日1時間以上たばこの煙を吸う機会がある、と規定した。津金部長は「受動喫煙の影響も予想以上に大きい」としている。 一方、閉経後の女性では、喫煙や受動喫煙の影響ははっきりみられなかった。女性ホルモンが乳がんに関係するため、閉経前後で違いがでたらしい。 喫煙の乳がんに対する影響調査は、これまで結果が分かれていたが、今回の大規模な追跡調査で影響が確かめられた。(平成16年11月30日 朝日新聞)

卵巣がん、初の治療ガイドライン 

日本婦人科腫瘍(しゅよう)学会(植木実理事長)は24日、卵巣がんに対する初の治療ガイドラインをまとめた。手術による卵巣の全摘出と抗がん剤の併用を基本としたが、10〜20代に多い卵巣がんの一種「胚(はい)細胞腫瘍」については、片側の卵巣を温存することを推薦した。病巣の拡大を見落とす恐れがあることなどから、内視鏡手術については実施しないことを求めた。日本人で新たに卵巣がんになる患者は、年間約6000人とされる。有効な検診方法がなく、早期発見が難しい。卵巣がんの9割以上を占める上皮性卵巣腫瘍については、2つある卵巣や子宮などを摘出し、抗がん剤を使用することを基本とした。 抗がん剤は、プラチナ製剤のカルボプラチンとタキサン製剤のパクリタキセルの併用を「強く推薦」した。胚細胞腫瘍では、患者や家族へのインフォームド・コンセント(十分な説明に基づく同意)を経て、片側の卵巣などを温存する手術を「推薦」した。抗がん剤の使い方も上皮性卵巣腫瘍とは異なる。(平成16年11月24日 毎日新聞)

乳がんの検査は何科?

乳がんの検査や治療を受けるには、どの診療科に行けばよいか、女性の3人に2人は知らないことが、製薬会社ファイザー(本社・東京)が30―50歳代の女性1500人に実施したアンケート調査で分かった。 「乳房のしこりを見つけたら、まず何科を受診するか」という質問に、「婦人科」(42%)との回答が最も多く、「産婦人科」(15%)、「内科」(5%)と合わせ6割強を占めた。一方、実際に乳がんを専門に治療する「乳腺外科」「外科」を選択したのは、それぞれ19%、14%に過ぎなかった。乳腺外科について、半数近くが「聞いたことはない」「知らない」と回答した。乳腺外科は医療法で定める標ぼう診療科でなく、施設外の看板などで広告できないことが認知度の低い背景とみられる。 日本乳癌(がん)学会長の園尾博司・川崎医大教授は「専門以外の科を受診すると、適切な診断や治療が受けられない可能性も考えられる。乳腺専門医のいる施設などの情報を発信したい」と話している。(平成16年11月15日 読売新聞)

よく食べると乳がんリスク4割減

魚を多く食べる人はあまり食べない人に比べ、乳がんにかかるリスクが4割以上低いことが、文部科学省の研究班の調査でわかった。魚に含まれる脂肪の成分で、脳の働きをよくすると言われるドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)の働きによるものらしい。29日から福岡市で開かれる日本癌(がん)学会で発表される。 DHAやEPAは動物実験では、がんの抑制効果があることが確かめられている。だが、人間での効果はこれまではっきりしなかった。 研究班は88〜90年に、全国の40〜79歳の女性約2万5400人を対象に、魚をどのぐらいの頻度で食べるかなど食生活についてアンケートした。その後7年半にわたって健康状態を追跡したところ、127人が乳がんになった。 魚に含まれる魚介性脂質に注目した場合、魚を「週1〜2回以下」とあまり食べないグループに比べ、「ほとんど毎日」食べるグループは、乳がんの発生率が43%低かった。植物性脂質の摂取量は関連性がなかった。 調査を分析した愛知県がんセンター研究所の若井建志・がん予防研究室長は「脂肪の摂取量が多いと乳がんにかかりやすいと言われるが、魚に関しては逆のことが言える。日本人の乳がん罹患(りかん)率が欧米に比べ低いのは、魚を多く食べることも関係あるのでは」と話している。(平成16年9月17日 朝日新聞)

特殊なRNAで乳がん増殖抑制 

特殊なリボ核酸(RNA)を使って遺伝情報の伝達を阻害し、乳がんの細胞増殖を抑制することに、産業技術総合研究所(茨城県つくば市)と東京大の研究チームが成功し、15日付の英科学誌「ネイチャー」電子版に発表した。がん治療薬の開発に結び付くと期待される。RNAは、DNAが持つ遺伝情報をたんぱく質に伝達するのが主な役目。 最近開発された特殊なRNAは、遺伝情報の伝達を阻害する働きがある。研究チームはこの働きに着目。 がんの転移などに関与する因子を標的とする特殊なRNAを設計したこれをヒトの乳がん細胞核内に注入すると、RNAを作るたんぱく質やDNAが化学反応を起こして変形。RNAが作られにくくなり、結果的に細胞増殖が抑制された。今回、細胞核内での遺伝子制御が可能になったことで、がん遺伝子や悪性ウイルスの生成を根本から防ぐことが可能になったという。 多比良和誠・同研究所ジーンファンクション研究センター長は「今後はたんぱく質が変形する詳しい過程や、このRNAがほかのがんにも有効か調べ、日本の製薬会社に売り込みたい」と話した。(平成16年8月16日 毎日新聞)

乳がん、超音波で焼き切る 傷つけずに乳房温存

乳房に傷をつけずがん細胞だけを超音波で焼き切る新治療法を宮崎市の「ブレストピアなんば病院」(難波清院長)が導入し、英国の施設などと共同で国際臨床試験を始めると、20日発表した。MRI(磁気共鳴画像化装置)で位置を確かめながら、超音波をがん細胞に集中して当てる方法で、治療効果や副作用を確認するという。この治療法は米ハーバード大のヨーレス教授らが開発した。数百本の超音波を虫眼鏡の原理で1点に集め、60〜80度の熱でがん細胞を焼く。エネルギーを集中させた部分以外は低温のため、乳房を傷つけることはないという。対象は2センチ以内の乳がん

患者はMRIと超音波照射装置が組み合わされたベッドの上にうつぶせになり照射を受ける。1カ所につき約20秒照射し、約90秒冷却する。これを30〜40回繰り返し、がん細胞を焼く。手術時間は約2時間半で、全身麻酔は必要ない。臨床試験では、焼き切れないがんが残るかどうかや、やけどなどの副作用がないかなどを確認する。同病院は4月、患者の同意を得て、通常の乳房温存手術でがんを摘出する前に新治療法を実施した。がんのあった部分を手術で取り出して検査したところ、がん細胞は見つからなかったという。難波院長は「保険診療の適用には5年以上必要かもしれない。自費であれば約150万円かかるが、今すぐにも実施できる」と話している。(平成16年5月20日毎日新聞)

乳がん遺伝子診断、予防切除も検討


乳がんを手術する際、特定の遺伝子変異が関係しているとわかったら、健康な方の乳房も発がん予防のため切除す。こんな方法を選択肢に含めた乳がんと卵巣がんの遺伝子診断の臨床研究を、国立がんセンター(東京)など5医療機関が近く共同で始める。米国では発病していなくても遺伝子変異があれば乳房を予防切除するケースもある。 

共同研究は発病した人だけを対象にするが、予防切除に踏み込むことに慎重な見方もある。 がんセンター中央病院のほか、癌研究会付属病院、聖路加国際病院(ともに東京)、栃木県立がんセンター。 慶応大学病院も加わる予定。 対象は、本人に加え、姉妹、母、祖母、叔母ら血縁者が発病したか、発病している「家族性乳がん・卵巣がん」の患者。日本には統計がないが、米国では乳がん・卵巣がんの7〜10%とされる。 調べるのは、BRCA1とBRCA2という遺伝子。これらの遺伝子の変異を親から受け継いでいると、そうでない場合より乳がんや卵巣がんになりやすいとされる。 これまで複数の医療機関で研究が行われたが、予防的治療に結びつけられたものはなかった。

今回の研究は日本人で変異がある人の割合や、変異が発病や治療の経過にどう影響しているかを分析するのが目的。5医療機関で計200人の患者を公募、2年かけて調べる。 検査は臨床検査会社ファルコバイオシステムズ(京都市)で行う。 患者が希望すれば検査結果を知らせる。変異があれば定期検診の強化を指導。米国では新たな発がんの予防のため、ホルモン剤を飲む方法があるほか、がんができていない方の乳房や卵巣の切除も行われていることを説明。患者が予防切除を強く望めば各医療機関の倫理委員会で是非を検討する。ただ遺伝子に変異があっても必ず発病するとは限らないし、発病するにしても、いつなのかはわからない。また、家族にどう伝えるかも問題だ。 患者には遺伝についてカウンセリングをし、詳しく説明する。

研究代表者の福富隆志・国立がんセンター中央病院外科医長は「検査後の患者支援として予防的治療も情報として伝える必要がある」と説明している。 研究のデータを分析して今後の診療にいかしたい考えだ。 米国人女性の場合、70歳までに乳がんになるのは一般に7%とされるが、両方の遺伝子に変異が見つかると87%に高まる。BRCA1に変異がある場合、卵巣がんになるのは2%以下から28〜44%に増えるなどと報告されている。(平成16年2月16日朝日新聞)

余分な脂肪から幹細胞取り出し豊胸手術 

体の余分な脂肪から幹細胞という特殊な細胞を取り出し、乳房を大きくする手術に用いる臨床研究を東京大学病院のグループが近く始める。再生医療の研究の一つ。美容のために吸引された脂肪は捨てられていたが、その有効利用を目指す。乳がんで乳房を一部切除したり、事故で傷が残ったりした場合への応用が考えられるという。

幹細胞は、様々な臓器や組織になる可能性をもつ細胞。骨髄などにあることが知られ、再生医療の研究に使われている。脂肪の中にも含まれることがわかってきた。計画しているのは、形成外科の吉村浩太郎講師ら。幹細胞が脂肪や血管になって乳房を大きくする効果を期待する。当面の対象は3人で、最初は30代の女性に実施する。腹部から脂肪を吸引し、一部を胸に注入するが、この際に残りの脂肪から幹細胞を集め、注入する脂肪に混ぜて幹細胞の濃度を高める。従来の豊胸手術はシリコーンや脂肪をそのまま使うが、老化で皮膚が委縮して変形したり、体内に吸収されて効果が薄れたりすることが多い。 マウス実験では、幹細胞を用いると脂肪を使うより定着率が20〜50%ほど高まったという。このほか吉村さんらは脂肪から抽出したコラーゲンなどをしわや鼻筋に移植する治療も計画。すでにみけんのしわに注射する治療を行っている。

東大医学部倫理委員会は研究の承認の際、3人ずつ治療した時点で検討し継続について判断するという条件を付けた。 再生医療に詳しい森下竜一・大阪大学教授(遺伝子治療学)の話 脂肪組織は幹細胞の供給源として世界的に有望視され、ユニークな研究だ。ただ、入れた細胞がどう働き、どのくらい残るのかなど分かっていない部分も多い。生命を脅かす疾患でない領域への応用になる。研究段階にある再生医療をどの疾患に適用するかなど幅広い議論が必要だろ(平成16年1月20日 朝日新聞)

タキソテール術前投与有効、乳がん患者生存率向上

乳がん手術前に抗がん剤を投与する術前化学療法で、5年生存率や腫瘍(しゅよう)縮小効果は、タキソテール(成分名ドセタキセル)が他の抗がん剤を上回るとする臨床試験結果を、英アバディーン大などのグループが、米国で開かれているサンアントニオ乳がんシンポジウムで3日(日本時間4日)発表した。治癒の目安である5年後の生存率の比較結果が出たのは初めて。発表資料や発表を聞いた東京都立駒込病院の戸井雅和・乳腺外科部長によると、試験はアンスラサイクリン系抗がん剤による標準的治療で腫瘍が縮小した患者102人を、2群に分け実施。一方はアンスラサイクリン系、もう一方はタキソテールを、3週間おきに投与する治療を4回繰り返したあと、手術をした。その結果、5年後の生存率は、タキソテールが97%、アンスラサイクリン系が78%だった。がん細胞が消えた患者はタキソテールで31%、アンスラサイクリン系で15%と、タキソテールの方が成績が良かった。(平成15年12月4日 日本経済新聞)

40代から乳房X線撮影を

乳がん検診のあり方について話し合う厚生労働省の「乳がん検診の精度及び効率の向上に関する研究班」(班長・大内憲明東北大教授)は6日、乳房X線撮影(マンモグラフィー)の対象者を現在の50歳以上から40歳以上へ引き下げるべきだとする基本指針を示した。 同省は視触診のみの検診を廃止してX線撮影を全面導入する方針を固めており、導入年齢や検診方法については、12月に発足する検討会で決める。基本指針は検討会に資料として提出される。

日本では、乳がんにかかる人の割合は40〜49歳が最も高い。一方、この年代の乳房は50歳代に比べて乳腺が発達しているため、X線撮影でがんを見つけにくい。01年に「40代のX線撮影併用検診は、50代とほぼ同じ感度(がん判明率)がある」とする研究結果が出たものの、すぐには検診への導入に踏み切らず、検討課題として残されてきた。 研究班では、50代のように斜め45度の1方向だけでなく、上下も加えた2方向で撮影すれば、乳腺の重なりが減り、画像の精度が上がると指摘。特に乳腺の密度が濃い人の場合は、超音波(エコー)との併用も検討すべきだとした。

厚労省は「視触診のみの検診は効果がなく、X線撮影の導入を検討すべきだ」とする研究班の報告を受け、00年、50歳以上は原則として2年に1度、検診でX線撮影を併用する指針を出した。ところが、指針を守っている自治体は半数にとどまることから、12月に専門家を10人ほど集めた検討会を発足させ、X線撮影の全面導入に向けて話し合う。(平成15年11月7日 朝日新聞)

乳がん、視触診のみ廃止
 

見落としが続いている乳がん検診のあり方について、厚生労働省は視触診のみの検診を廃止して乳房X線撮影(マンモグラフィー)を全面的に導入するなど大幅に見直す方針を固めた。近く専門家を集めた検討会を立ち上げ、今年中に結論を出して全国に通知する。 現在、半数近い市町村で、乳房を触ってしこりの有無を調べる視触診のみの検診が行われているが、このままでは見落としが頻発しかねないと、見直しに踏み切った。 厚労省が00年度にまとめたがん検診の有効性評価では、視触診だけの検診は「死亡率を減らす効果がない」とされた。だが、視触診だけの検診を受けた人は01年度に283万人に上るのに対し、「効果がある」とされるX線撮影と視触診の併用検診を受けた人は45万人にとどまっている。 産婦人科や整形外科など専門外の医師が視触診検診に携わることが多く、今夏、相次ぐ見落とし例が問題になった。厚労省は、05年度からの老人保健第5次計画を前倒しして、検診を見直す必要があると判断した。 まず視触診のみの検診については「効果がない」とし、事実上の廃止を求める。この指導は法的根拠はないが、「効果がない」とされた検診を続ける自治体は来年度からなくなるとみている。 従来、視触診検診にあたっていた専門以外の診療所などは、検診ができなくなる可能性がある。 一方、50歳以上を対象としていたX線撮影と視触診の併用検診については、40歳以上に引き下げる方向で専門家の意見を聞く。米国やオーストラリアなどは、X線撮影単独か、視触診との併用を40歳以上の検診に義務づけており、世界的な水準に追いつくことになる。 なお、30代の検診については、X線撮影よりも超音波(エコー)検査の方ががんを発見しやすいとする専門家もおり、どのような検診にするか、専門家の判断を仰ぐ。 今後、X線撮影の全面導入には解決すべき問題が少なくない。ひとつは技量だ。厚労省は、X線撮影検診について、乳房の撮影にたけた診療放射線技師や画像を分析する読影能力のある医師に限定していく方針だ。 現在、日本乳癌(にゅうがん)学会などでつくるマンモグラフィ検診精度管理中央委員会が、読影能力の高い医師や撮影技術の高い技師の資格制度を設けている。しかし、技量の高いA、B級の医師、技師は都市部や大病院に集中しており、さらなる有資格者の養成も検討していく。 また、財政的には1台3千万円以上するといわれるX線撮影の機器をどう整備するかの態勢づくりが課題だ。 厚労省は、そのための財源や、市町村の検診費負担などについて、地方交付税を握る総務省との折衝を始めている。 新たな財源が必要かどうかも検討する。<乳がん検診> 乳がんにかかる人は98年度に年間約3万3600人(推計)に達し、女性では胃がんを抜いてトップ。乳がん検診は87年から老人保健法に基づいて義務づけられ、30歳以上を対象に主に視触診が実施されてきた。 だが、視触診のみの検診はがん発見につながらないとし、厚労省は98年から法的な義務づけをはずすと同時に、補助金を廃止した。 現在は各市町村の判断で実施され、半数近い市町村で視触診のみの検診が続いている。 01年度の受診率は12・3%にとどまる。(平成15年9月8日 朝日新聞)

子宮けいがん 若い女性に急増

若い女性の子宮けいがん患者が、最近10年で4倍に増えていることが、国立病院呉医療センター(広島県呉市)の藤井恒夫産婦人科医長らの調べで分かった。 急増の原因は不明だが、性感染症の増加が一因とみられている。 日本産婦人科医会がん対策委員会は、全国的な傾向とみて、子宮がん検診の対象を若年層へ拡大する検討を始めた。 藤井医長らは、同センターと広島大病院で1982年以降に子宮けいがんの治療を受けた患者計2071人の年齢を調べた。 29歳以下の女性が占める割合は、91年以前は2%だったが、92―96年には6%、97―2001年には8%まで急増していた。 6割はごく初期のがんだったという。 また、過去30年間に同県内で検診を受けた29歳以下の女性約6129人について調べたところ、検診で初期の子宮けいがんが見つかるケースも増加傾向にあった。 子宮けいがんは、子宮の入り口付近にできるがんのこと。 一部の子宮けいがんの発症には、性行為などで感染する「ヒトパピローマウイルス」がかかわっていると言われている。 ほとんどの自治体は、30歳以上の女性を対象に子宮けいがんの検診を実施しており、20代を対象にした検診を実施している自治体は非常に少ない。 藤井医長は「高齢出産が増え、妊娠して初めてがんが判明するケースも少なくない。若いうちから積極的に検診を受けてほしい」と訴えている。
[子宮けいがん] 子宮がん全体の6―7割を占める。子宮の本体にできる子宮体部(子宮内膜)がんとは区別される。初期の段階で治療を行えば、ほとんど再発せず、妊娠・出産も可能だ。(平成15年7月7日読売新聞)

子宮内膜症の原因、アレルギー反応の可能性

若い女性に多く、患者が100万人にのぼるといわれる「子宮内膜症」の原因が、アレルギー反応である可能性が高いことが、栃木臨床病理研究所長の菅又昌雄医師らの研究でわかった。 気管支ぜんそくなどの治療に使われる抗アレルギー薬を飲んだ患者の多くは、症状が改善された。菅又医師は「予防薬としても有望」としており、12日から福岡市で開かれる日本産科婦人科学会で発表する。 子宮内膜症は、受精卵が着床するマットの役割をする内膜が、子宮以外の場所にできる病気で、原因がはっきりわかっていない。下腹部に慢性的な痛みが出るほか、不妊症の一因になるとされる。 現在は、子宮や卵巣の摘出以外に完治する方法はなく、ホルモンを使った薬物療法にも副作用が多かった。 菅又医師らは、病気になった組織にアレルギー反応の中心的役割を果たす細胞があり、炎症を起こす物質を出していることを確認。大森赤十字病院(東京都大田区)で抗アレルギー薬を、子宮内膜症の患者10人に約2か月間飲んでもらったところ、細胞レベルでアレルギー反応が減り、腹腔(ふっくう)鏡を使った治療が簡単になった。 自治医大付属大宮医療センター(さいたま市)でも、抗アレルギー薬を飲んだ患者16人の半数以上が、「鎮痛剤を使う回数が半分以下に減った」と答えるなどの効果が見られた。 (平成15年4月9日 読売新聞)

クラミジアが若い女性に拡大、19歳は推定13人に1人

性行為で移る性感染症が若い女性を中心に年々増加、クラミジア感染症は、症状の出ない無症候性も含めると推定で19歳女性の13人に1人が罹患(りかん)していることが、昨年の厚生労働省研究班の調査で分かった。福岡市で7日始まった日本性感染症学会で、同研究班長の熊本悦明札幌医大名誉教授が発表した。 研究班は1998年から、産婦人科や泌尿器科の医療機関にアンケート用紙を送り調査を実施。昨年は北海道から福岡まで9道府県の計約1万2000施設を対象にした。その結果、調べた8種の性感染症の10万人当たり罹患率は全体で約630(約0.6%)。性別、年代別では、20代前半の女性が最も高く、38人に1人の割合だった。 種類別では、クラミジア感染症が8種の中で最も多く約36%。98年以前の旧厚生省の調査も参照すると、男女とも96年から急増、昨年は同年に比べ約1.6―2倍になった。約16%の淋菌(りんきん)感染症も同様に増加した。(平成14年12月8日 日本経済新聞)

女高生「クラミジア」激増

性感染症「クラミジア」が若い女性で増え、高校生では、卒業時は入学時の約6倍まで激増することが、厚生労働省研究班(班長=熊本悦明・札幌医大名誉教授)の調査でわかった。クラミジアに感染すると、エイズ感染の危険性が約5倍高まり、不妊の恐れもあることから、研究班では「コンドーム使用など、予防教育を中学3年、高校1年で徹底する必要がある」としている。 研究班はここ数年、7―9道府県で、性感染症の患者が受診する医療機関に協力を依頼。6月と11月の患者数を、病気の種類や年齢ごとにすべて集計した。 昨年のデータをもとに分析した結果、男性患者が10万人あたり年間158人、女性が同282人となった。クラミジアに感染しても、男性の半数、女性の5人に4人は自覚症状がないとされ、実際の感染者はもっと多いとみられる。熊本氏は「男性は約15万人、女性は約85万人に上る」と推計、国内の感染者は100万人と考えられる。 一昨年のデータから、年齢ごとの患者数を分析すると、女性は14歳でゼロなのが、15歳になると10万人あたり年間236人となり、1歳上がるごとに1・5―2・6倍に増加、18歳では同1448人に上った。男性は女性より1年遅れで、16―19歳に急増していた。 従来の国の調査は5歳刻みの統計が多く、年齢ごとの患者の発生状況がわかったのは初めて。無防備な性交渉などが背景にあるとみられる。【クラミジア】大きさ0・3ミクロンほどの微生物で、細胞内に寄生して増殖、結膜炎や肺炎を起こす仲間もいる。性感染すると女性では子宮頸(けい)管炎、男性では尿道炎を起こし、排尿の時などにかゆみや痛みを伴う場合がある。(平成14年12月2日 読売新聞)

早期乳癌の生命予後は20年後も「乳房全摘術」と「乳房温存療法」で差なし

約30年前にスタートした早期乳癌の術式比較試験の長期成績2報が、New EnglandJournal of Medicine(NEJM)誌10月17日号に掲載された。中央値で20年追しても、乳房の全摘手術を受けた人と温存手術を受けた人とで、総死亡率や無再発生存率などに全く差が認められないことが判明。「早期乳癌に対して乳房を全摘する正当な理由がない」ことが、今や誰の目にも明らかになった。今回掲載された長期成績の一つは、イタリアで1973年からスタートした比較試験。乳房と胸筋、リンパ節を全て切除する「ハルステッド手術」と、温存療法の一種で乳房の4分の1を切除し、リンパ節も取る「4分の1切除術」とを比べるものだ。対象は腫瘍直径が2cm以下の早期乳癌患者701人で、4分の1切除法に割り付けられた人は術後に放射線照射を受けた。また、リンパ節転移が陽性だった人は、両群ともに1976年から術後化学療法を受けた。最長29年間、中央値で20年間追跡したところ、手術を受けた方の(同側の)乳房における乳癌再発率は、乳房を取り去ったハルステッド手術群(349人)の方が有意に低くなった。20年間の同側再発率は、ハルステッド手術群が2.3%、4分の1切除術群(352人)が8.8%となった。しかし、対側乳房での発癌率や遠隔転移率などには、両群で差がないことが判明。総死亡率も両群間で差がないまま推移し、20年間の総死亡率はハルステッド手術群が41.2%、4分の1切除術群が41.7%だった。もう一つの長期成績は、1976年にアメリカでスタートした「B-06」試験。臨床病期が1〜2で、腫瘍直径が4cm未満の早期乳癌患者1851人を対象とした。比較した術式は、1.乳房を全摘、リンパ節を切除するが胸筋は残す「胸筋保存乳切」、2.腫瘍のみをくり抜きリンパ節は残す「くり抜き法」、3.くりぬき法実施後に放射線照射−−の三つ。長期成績は最低20年間追跡できた人、あるいはそれ以前に亡くなった人(全体の69%)でのみ評価したが、解析患者の比率に群間の差はなかった。その結果、同側乳房での乳癌再発率は、くりぬき法後に放射線照射を受けた群(628人)が14.3%、受けなかった群(634人)が39.2%で、放射線照射が同側での局所再発を有意に防ぐことが判明。しかし、無病生存率、無転移生存率と総死亡率のいずれも、この3群間で差が認められなかった。放射線照射はやや生命予後などを改善する傾向がみられたが、有意な差とはならなかった。今回発表された長期成績が示すのは、ハルステッド手術であれ胸筋保存乳切であれ、乳房を全摘する手術が「長い目で見れば生命予後が良い」との仮説が成り立たないということだ。これらの試験では、約10年追跡した時点で「差がない」ことが報告されていたが、当時は「さらに長期にみなければわからない」との反論も出されていた。今回の20年成績の発表で、この問題にようやく最終決着が付いたと言えそうだ。(平成14年10月22日medwave)