皮膚疾患について


日焼けマシン、発がんリスク最高レベル

世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)は、日焼けサロンやスポーツジムで使われ、人工的に紫外線を出す「日焼けマシン」の使用は発がんリスクを確実に高めるとして、発がんリスク分類でもっとも危険性の高い「グループ1」に引き上げた。IARCは、日焼けマシンと皮膚がん(メラノーマ)との関係を調べた19論文を分析。30歳未満で日焼けマシンを使った経験のある人は、使ったことのない人より75%もリスクが高いことがわかった。日焼けマシンの使用による、眼球の色素細胞にできるがんのリスクも高かった。従来、紫外線のうちB紫外線(UVB)にだけ発がん性があると考えられていたが、A紫外線(UVA)もUVBと同じように発がん性があることもわかったという。地上に降り注ぐ紫外線の95%がUVAだ。日焼けマシンは5段階の発がんリスク分類で危険性が2番目に高いグループだった。危険性が一番高いグループにはアスベストやたばこ、X線、太陽光などがある。紫外線に詳しい名古屋市立大の森田明理教授は、「黄色人種は白人に比べて紫外線によるがんのリスクは数分の1だとされるが、油断はできない。屋外で浴びる紫外線の量が、欧米の多くの都市よりもかなり多いからだ。外出のときは、皮膚が赤くなるような日焼けをしないように、日焼け止めや日傘で予防すべきだ」と警告する。(平成21年7月30日 朝日新聞)

皮膚がんを高熱で狙い撃ち

磁場をかけると発熱する酸化鉄の微粒子を使い、がん細胞だけを焼き殺す手法を、信州大と中部大の共同研究グループが開発し、マウスで皮膚がんを大幅に縮小させる実験に成功した。家庭に普及している電磁調理器と似た原理で、副作用が少なく、抗がん剤が効かない患者でも効果が期待できるという。信州大の松本和彦助教授は「早ければ来年にも皮膚がんの一種、悪性黒色腫(メラノーマ)を対象に小規模な臨床試験を始めたい」と説明。(平成18年9月13日 中国新聞)

培養真皮

重い皮膚潰瘍(かいよう)ややけどの治療に、人の真皮細胞を培養してシート状にした「培養真皮」が基本的に安全で有効であるとする研究成果を、厚生労働省の研究班(主任研究者=黒柳能光・北里大教授)がまとめた。 00年度から5年間の臨床研究で404人に使われ、9割以上で患者の状態の改善につながったといい、製品化が期待されている。 皮膚は、厚さ0.1ミリの表皮と、その下の厚さ数ミリの真皮で成り立つ。 今回の培養真皮は黒柳さんらが独自に開発した。 提供してもらった人の皮膚から線維芽細胞を取り出して培養、それを皮膚の再生を促すコラーゲンとヒアルロン酸でつくった特殊なスポンジシートに組み込んだ。 10センチ四方のシートを、ガーゼのように患部に当てて皮膚の再生を促す。 北海道大や慶応義塾大、九州大など30の医療施設が参加した臨床試験で、使ったシートは5千枚近く。 患者の皮膚の再生ぶりや感染症が抑えられるかなどを、点数化して患者ごとに評価した。「安全」と評価されたのは、89.4%で、「安全に疑問」「安全でない」は合わせて1.7%だった。 総合評価は、62.6%が「極めて有用」で、30%が「有用」。 「有用でない」は1%に満たなかった。 培養表皮、真皮は米企業が製品化しているが、国内未承認。今回の培養真皮は、皮膚再生を促す仕組みが海外製品に勝ると黒柳さんはいっている。(平成17年7月11日 朝日新聞)

老人性のシミや肝斑の治療薬

第一製薬は4月20日、トラネキサム酸の経口投与がシミなどの改善に有効であることを臨床試験で確認したと発表した。トラネキサム酸は抗炎症作用や止血作用などを目的として各種の医薬品に配合されているが、肝斑に効果があるという報告が複数の文献に紹介されているという。このため、第一製薬では、市販されている美白剤にトラネキサム酸を加えた製剤を開発し、臨床試験を実施した。その結果、2カ月間の投与で、肝斑や老人性のシミ(老人性色素斑)、炎症後色素沈着に効果があるという結果が得られた。褐色モルモットを用いた試験でも、紫外線照射による色素沈着を顕著に抑制する効果がみられ、しかも用量を増やすと効果が上がる用量反応性も確認できたとしている。同社ではこれらの研究成果を、横浜みなとみらいの横浜パシフィコで開催される日本皮膚科学会総会で4月23日に発表する予定。(平成17年4月21日 medwave)

海外から“輸入” 新型真菌症、全国に広がる

レスリングや柔道をする中高生らに海外から“輸入”された新型真菌症が広がっていることが、専門医らの16日までの調査で分かった。試合や練習で集団感染し、家族にもうつっており、日本皮膚科学会は既に国内全域に拡大した可能性があるとみている。抗真菌薬などでの治療が有効で、坪井良治・東京医大教授(皮膚科)は「指導者の理解と医師の適切な診療が鍵だ」と指摘している。問題の菌は水虫の原因菌(白癬(はくせん)菌)の一種「トリコフィン・トンズランス」。感染すると体には発疹(ほっしん)、頭部にはふけやかさぶた、黒点状の発疹ができ、かゆみも出る。頭は無症状の人も多い。望月隆・金沢医大助教授(皮膚科)によると、2001−02年に宮城、石川、大阪3府県の高校レスリング部で集団感染が発生。続いて各地で、格闘技の運動部員や指導者、家族の感染が確認された。この菌は60年代以降、国内で時々見つかるが、現在の流行菌は遺伝子のタイプが北・中南米、韓国などで流行しているものに近い。流行地域への遠征で感染した選手から、国内での試合や練習を通じ感染が広がったらしい。感染者は1000人規模との見方もある。対策はこまめなシャワーや着替えなどの日常的な予防のほか、発症・感染者を早く発見し、抗真菌薬の内服や抗菌シャンプーなどで根気よく治療することだという。坪井教授は「部活動なら部員や指導者全員を検査し、症状のない保菌者でも治療に協力してもらうことが大事。普通の湿疹(しっしん)と誤診され、治療がかえって症状を悪化させる場合もあるので、格闘技をやっている人は受診の際、医師に伝えてほしい」と話している。(平成16年12月16日 産経新聞)

皮膚病の「乾癬」起こすたんぱく質特定

皮膚にかさぶたができて、かゆみなどを生じる皮膚病の乾癬(かんせん)は特定のたんぱく質の働きが活発になって起きることを、大阪大学の佐野栄紀非常勤講師(住友病院皮膚科部長)と米テキサス大学などの共同チームが突き止め、12日付の米医学誌ネイチャー・メディシン(電子版)に掲載した。研究チームはこのたんぱく質の働きを妨げて、発症を抑える動物実験に成功。 副作用を伴うことのある紫外線療法やステロイド療法に代わる新治療法になる可能性があるという。佐野講師らは乾癬の患者の皮膚の細胞で「スタット3」というたんぱく質が活性化していることを発見。この働きを妨げる物質をネズミの皮膚に塗ったところ、発症が抑えられたり、症状が軽くなったりした。乾癬は欧米に多く、国内でも患者数が10万人強と増加傾向にある。(平成16年12月13日 日本経済新聞)

やけど治療,人工皮膚開発

北里大学人工皮膚研究開発センターの黒柳能光教授らは治療効果の高い人工皮膚を開発した。患者以外の人の皮膚細胞にたんぱく質などを組み合わせて作り、重傷のやけどや床ずれの患者の場合、9割以上で治療効果を確かめた。提携先の医療施設に提供し、治療に役立てる。 開発した人工皮膚は傷を治す効果があるコラーゲンとヒアルロン酸で特殊なスポンジを作製。この上で若いボランティアから提供された細胞を培養して作る。大量生産して凍結保存しておけば、解凍して使うことができ、やけどなど緊急時にも対応できる。(平成16年8月21日 日経産業新聞)

ほくろと皮膚がん、画像解析で早期に区別 

ほくろと、皮膚がんの一つ悪性黒色腫(メラノーマ)を9割以上の精度で見分けられる画像解析システムを、慶応大学などの研究グループが開発した。初期の黒色腫は、ほくろと区別しにくい。専門医でも8〜6割程度とされ、診断にばらつきがあった。新システムは診断の質を向上させ、早期発見につながると期待される。田中勝・助教授と岡博史・助手(皮膚科)らがイタリアなどの研究者と共同で取り組んだ。近く英医学専門誌メラノーマリサーチで発表する。黒色腫は、メラニン色素を作る細胞などの異常が原因で起きる。皮膚がんの中で悪性度が高く、白人に多い。日本では年に1500〜2000人が発病するとみられる。早期に手術すれば9割以上が治るが、発見が遅れてほかの臓器などに転移すると治療は難しくなる。診断は一般に臨床症状から総合的に判断する。日本では組織検査は転移につながるとの考えがあり、ふつう行われないという。グループは皮膚の状態を詳しく見る医療用拡大鏡(ダーモスコープ)の画像をもとに研究した。イタリアなどから患者59人分とほくろ188人分の画像を提供してもらって形や色などを数値化。コンピューターで処理して黒色腫を見分ける方法を開発した。統計学的に分析したところ、皮膚表面からの深さが0.75ミリ以内の早期の場合の精度は約94%。極めて初期(深さ0.2ミリ以内)でも、約74%の精度で診断できた。グループは、さらにデータを積み重ねて実用化を目指す。将来的には患者がカメラ付き携帯電話などで皮膚を撮影。 画像を電子メールで送ると、分析結果が返信されてくるシステムを作りたい考えだ。(平成16年4月4日 朝日新聞)

トマトで美白、メラニン色素を減らす働き

トマトに美白効果の高い成分が含まれていることが、化粧品会社「コーセー」などの研究で明らかになった。 トマトには、がんや動脈硬化を防ぐとされるリコピンなど様々な成分があるが、美容の面からも注目を集めそうだ。29日から大阪市で始まる日本薬学会で発表する。 皮膚は紫外線に当たると、細胞内のメラニン色素が増え、日焼けする。研究チームが、メラニン色素が異常に増えているマウスの細胞にトマトの搾り汁を振りかけたところ、液の濃度が高いほど細胞内のメラニン色素量が低下し、美白効果があることがわかった。成分を調べると、糖が数個―25個結合した「オリゴ糖」と、植物の色素や苦みの成分である「ポリフェノール」に美白効果があった。研究チームは、オリゴ糖とポリフェノールには、メラニン色素を作る酵素の量を減らす働きがあるとみている。これらの効果は、ビタミンCなどすでに商品化されている美白化粧品の成分と同じレベルだという。(平成16年3月18日 読売新聞)

ニキビの原因、アクネ菌特定

日本メナード化粧品(名古屋市、野々川純一社長)は、ニキビの原因となるアクネ菌が3種類に分類され、このうち1種類がニキビ発症の大きな要因になっていることを突き止めた。 DNAの違いで3種類に分類されるアクネ菌のうち、1種類がニキビの原因となる酵素、リパーゼを多量に作り出す“悪玉アクネ菌”だったという。 同社は温泉成分のミネラルが悪玉アクネ菌に対する抗菌作用を持つことも確認した。(平成15年11月1日 日経産業新聞)

皮膚がん「メラノーマ」転移の新診断法

皮膚がんの一種、メラノーマの治療で、「見張りリンパ節」と呼ばれる一部のリンパ節を調べて転移の有無を判定する新しい診断法が、国立がんセンター、熊本大など16施設の共同研究で開発された。 精度が高く、不必要な手術を避けることができそうだ。 がん細胞は体内のリンパ液内に流れ出し、がん病巣近くのリンパ節に転移することが多い。この1番初めに転移する部分を「見張りリンパ節」と呼ぶ。メラノーマのリンパ節検査は従来、リンパ節を大きく切除して診断していたが、患者は術後に手や足のむくみ浮腫(ふしゅ)に悩む場合が多かった。 たとえば足の付け根には10―15個のリンパ節がある。新たな診断法で、1―3個程度の見張りリンパ節の検査で転移がないことが確認できれば、これまでのように大きく切る必要がなくなる。 研究チームは312人を対象に、検出剤を注射して特殊カメラで撮影するなどの手法で見張りリンパ節の検出を試み、81―83%の患者の見張りリンパ節発見に成功した。見張りリンパ節に転移がないにもかかわらず、他のリンパ節に転移があったのは、3人(1%)だけだった。(平成15年6月3日 読売新聞)

日光浴は皮膚がんや白内障の原因

日光浴はお勧めできません――。世界保健機関(WHO)は23日、日光の紫外線は皮膚がんや白内障の原因になるとして“日光浴自粛”を呼びかける報告書を発表した。WHOのプロジェクトチーム「インターサン」がまとめた報告書は、70年代以降、ライフスタイルの変化による日光浴ブームとオゾン層の破壊進行との相乗効果で、白人を中心に皮膚がんの患者が世界で急増していると指摘した。紫外線の浴びすぎは免疫機能の低下につながる恐れもあるという。このため太陽光の強い夏の日中は外出を避け、出掛ける場合は衣服で皮膚を覆ったり、帽子やサングラスを着用するよう呼びかけている。WHOは、太陽光の強度や波長から算出した11段階の「紫外線指数(UVI)」を定めており、レベル3以上の場合は「皮膚の防護対策が必要」と定め、各国の天気予報に使われている。ただし、実際の影響は人種や職業で異なり、黒人や、日常から炎天下で働く人たちにはある程度の抗力があるため、一概に基準を当てはめることはできないという。WHOのレパチョリ調整官は、「普段は室内にいて、週末だけ急激に日光を浴びるのは避けるべきだ」と話している。(平成14年7月24日 毎日新聞)

毛髪寿命、遺伝子操作で延びた

髪の毛を作る細胞の遺伝子を操作して細胞の寿命を延ばすことに、広島大学の吉里勝利教授らが成功した。この細胞が発毛促進能力を持つことも確認した。毛髪を増やす究極の遺伝子治療につながる基礎技術として注目される。 人間を含む動物の細胞には、一定の回数分裂すると、分裂が止まる仕組みがある。回数を数えているのは、遺伝情報が詰まった染色体の端の部分で、「テロメア」という。ここが短くなると、分裂しなくなる。 広島大の研究チームは、人間の毛髪の根元にある「毛乳頭」細胞に、短くなったテロメアを元に戻す酵素(テロメラーゼ)の遺伝子を組み込み、培養してみた。その結果、遺伝子を組み込んだ毛乳頭細胞は、組み込まないものに比べ、分裂回数が倍以上増えて、増殖を続けたという。 毛乳頭には、表皮細胞を毛髪のもとになる毛母細胞に変化させる機能がある。研究チームが、酵素遺伝子を組み込んだ人間の毛乳頭細胞をネズミの背中に移植したところ、移植した部分から毛が生えてきた。 吉里教授は「人間で実施するには、安全性を厳重に点検する必要があるが、細胞のがん化など問題となりそうな現象は今のところ見つかっていない」と話している。(平成14年6月3日 読売新聞)

抗生物質効きにくい耐性とびひ

乳幼児の皮膚に「とびひ」を起こす黄色ブドウ球菌の中に、抗生物質の効きにくいMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)が増えていることを広島大の菅井基行教授(細菌学)らが世界で初めて突き止め、アメリカ感染症学会誌最新号に発表した。とびひはこれまで抗生物質がよく効くとされていた。重症型のとびひの治療に脅威となる恐れもあり、菅井教授らは全国的な実態調査を始めた。 菅井教授と山口隆之特別研究員らは宮崎医大、国立感染症研究所などと協力して、大阪府内の4病院でとびひの患者から採取された黄色ブドウ球菌88株の遺伝子を解析。うち45株(51%)が通常の抗生物質を効かなくする遺伝子を持っていた。 とびひ特有の水疱(ほう)をつくる毒素の遺伝子が確認できた52株に限ると33株(63%)が薬剤耐性。そのほとんどは遺伝子パターンから、もともと2つの株と考えられた。同じタイプはその後、広島、愛媛、北海道でも見つかった。 MRSAは院内感染で問題になっているが、とびひを起こす黄色ブドウ球菌はMRSAがなく、抗生物質ですぐ治ると言われてきた。しかし臨床医から近年、治りにくいとびひが増えているという声が出ていた。 新型の菌は薬を高濃度にすれば効くが、放置すると強い耐性菌が出現する可能性が高いという。また新生児がとびひの菌に感染すると、全身に水疱ができて入院が必要な「SSSS」(ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群)という重症型になる。これも治療困難になる恐れがあるという。 菅井教授は「抗生物質が効くかどうかを早く判断して、耐性なら薬をすぐ変えてたたかないと、他の子どもにうつってどんどん広がる」と警告している。(平成14年5月27日 読売新聞)

白髪予防に光明、毛の色素細胞のもと発見

毛に色をつける色素細胞のもとになる細胞を、京都大などのグループが発見し、存在場所も動物実験で特定した。人が白髪になるしくみや、色素細胞の異常で起こる皮膚がんの原因を解明するのに役立ちそうだ。25日発行の英科学誌ネイチャーに発表する。グループは、西川伸一・京大教授、元京大大学院生の西村栄美さん、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの大沢匡毅研究員ら。色素細胞のもとは色素幹細胞という。西川教授らが約10年前、実験をもとに存在を予言していたが、どこにあるかは不明だった。今回は、遺伝子を組み換えたマウスの実験で、色素幹細胞が、表皮の下にある「毛根」の中ほどに密集していることをつきとめた。毛の生えかわる周期に従って毛根の根元方向に動き、毛乳頭という部分の周りの「毛母基」で色素細胞となり、色素のメラニンを出して毛を着色していた。特定の条件下では、周りの毛根に移動して働き出すこともわかった。大沢研究員は「人とマウスは異なるが、将来的には白髪やシミができるしくみや、皮膚がんの一種、悪性黒色腫の病因解明にもつながるだろう」と話す。色素幹細胞に限らず、血液や神経などのもとになる幹細胞は、再生医療に応用できると注目を集めている。「色素幹細胞の研究方法を利用して幹細胞の生存条件などを調べ、幹細胞研究全体に貢献したい」と西川教授。色素幹細胞が働く条件がわかれば、白髪を予防する薬の開発につながる可能性もあるという。(平成14年4月25日 朝日新聞)