泌尿器疾患について


前立腺がん、尿検査で早期発見

尿中のアミノ酸代謝物の濃度を調べることで、前立腺がんの進行状況をより正確につかめる可能性があることが、米ミシガン大学などの研究でわかった。米国立がん研究所も「がんの進行度をみる優れたマーカー(指標)になりうる」と評価している。英科学誌ネイチャーに発表した。前立腺がんの早期発見のため、いまは血液中の「前立腺特異抗原(PSA)」というたんぱく質の量を調べる方法が検診などで使われている。しかしPSA検査は、がんではないちょっとした異常にも反応したりするほか、ゆっくりと進むがんに対して過剰な手術や放射線治療をしてしまう問題も指摘されている。研究グループは、前立腺がんの患者から集めた組織、尿、血清から分離される化合物を対象にがんの指標になる物質を調査。サルコシンというアミノ酸代謝物の一種が転移性のがんに多く見られることを見いだした。サルコシンは良性の組織ではほとんど見られなかったのに対して、局所がんの42%、転移性がんでは79%で見つかった。がん細胞を使った実験ではサルコシンを加えるとがんの進行が早まった。前立腺がんが疑われる患者の尿を調べた調査では、PSA値が低いときはPSAより正確に判定できるという結果が出た。(平成21年2月16日 朝日新聞)

温暖化で「腎臓結石の患者増」

地球温暖化で、腎臓結石の患者が増え、医療費がいまより25%、年間1千億円も余計にかかるとの推計を、米テキサス大が明らかにした。研究チームは「温暖化による健康への影響としては、マラリア流行のリスクり大きい」と指摘している。米科学アカデミー紀要に発表された。腎臓結石は、気温の上昇で、体の水分を大量に失って尿の濃度が上がり、カルシウムやシュウ酸などが腎臓の中で固まって発症する。日本では成人男性の11人に1人、女性の26人に1人がかかるといわれる。米国では、寒冷な北西部より暖かい南東部の方が発症する人が多い。米国の平均気温は、76〜80年に対して88〜94年が0.5度高くなる一方、腎臓結石患者の伸び率は3.6%から5.2%に増え、温暖化との関連を示した。研究チームは国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第4次報告書にもとづき、2050年に平均気温が4度上昇すると仮定。すると米国では腎臓結石にかかりやすい「危険地帯」に住む国民の割合が00年には40%だったのが、50年には56%に増え、新たに160万〜220万人の患者が生まれるとの結果が出た。研究チームは「米国だけでなく他国も同様の影響を受ける。途上国では相当な影響があるだろう」としている。(平成20年7月22日 朝日新聞)

スイカにバイアグラ効果?

夏の味覚スイカに、性的不能治療薬「バイアグラ」に似た効果のある成分が含まれていると、米テキサスA&M大学の野菜果物改良研究所が発表した。スイカの成分「シトルリン」が体内で酵素の働きによってアルギニンというアミノ酸になり、バイアグラの主成分と同様、酸化窒素を活性化し血管を拡張、血流量を増やすという。ビム・パティル所長は「バイアグラと基本的に同じ効果だ。局所的に効くのではないかもしれないが、副作用はない」と指摘している。米農務省の研究者は「研究内容は正しいが、体内のアルギニン濃度を上げるには6切れも食べなければならない。スイカには利尿作用もあり、頻繁にトイレに行くことになるだろう」と述べている。同研究所によると、シトルリンは果実よりも皮に高濃度に含まれ、果実に多く含まれるように品種改良に取り組んでいるという。(平成20年7月4日 中国新聞)

前立腺がん細胞増殖、遠赤外線が抑制

遠赤外線が前立腺がん細胞の増殖を抑制する効果があることを、兵庫医科大の島博基教授が突き止め発表した。遠赤外線を発する特殊加工ゴムをがん細胞の近くに置くと、がん細胞の自滅(アポトーシス)を促す遺伝子が活性化し、がん細胞が減少。抗がん剤と併用すると、がん細胞が死滅したという。ヒト前立腺がん細胞を移植したマウスをカゴに入れ、周りを大阪市の化学メーカーが開発した、微弱な遠赤外線を放射する金属などを混ぜた特殊加工ゴムで囲って、マウスのがん細胞増殖の推移を観察した。その結果、遠赤外線を当てられたマウスの体温が0.36度上がり、マウスに移植されたがん細胞内の遺伝子にあるアポトーシス回路が活性化。約70日後に、がん細胞の増殖が半分以下に抑制された。これに加え、がん増殖抑制機能があるとして米国で抗がん剤として使われている腸管内物質「酪酸ナトリウム」を3種類の前立腺がん細胞に投与したところ、いずれも死滅したという。島教授は「原理的にはすべてのがんに効果があるはず。臨床応用を進めて、治療法を確立したい」と話している。(平成20年6月27日 産経新聞)

乳がん家系は前立腺に注意 リスク4倍


乳がんの多い家系に生まれた男性は前立腺がんの発症リスクが高いことをオーストラリアなどの研究チームが19日までに突き止めた。家族性乳がんのリスク因子として知られるBRCA2遺伝子の変異が前立腺がんの因子でもあることが確認でき、2つのがんの関連が初めて分かった。BRCA2遺伝子に変異を持つ男性の前立腺がん発症リスクは、変異がない男性の4倍になるという。成果は米医学誌クリニカル・キャンサー・リサーチに掲載された。家族性乳がんや卵巣がんの研究を続けてきたチームは、一部の家系では前立腺がんも多いことに気付いた。BRCA2遺伝子の変異が家族性乳がんのリスク因子となることは過去の研究で分かっており、チームは前立腺がんでもこの遺伝子変異が起こっているかどうかを調べ、確認にこぎ着けた。チームは「乳がんの多い家系に生まれた男性は検査を。BRCA2遺伝子変異による乳がんを克服した女性は、兄弟や息子に注意を呼び掛けてほしい」としている。(平成20年5月19日 中国新聞)

バイオ人工腎により急性腎不全の死亡率が減少

急性腎不全患者の生命を救うバイオ人工腎が数年以内に実用化される可能性が、新たな臨床試験によって示された。生体細胞を利用した尿細管補助装置によって腎細胞の機能を短時間補助することにより、腎損傷による急性腎不全患者の死亡リスクが有意に減少し、腎機能の回復が加速されるという。研究を行った米ミシガン大学医学部内科教授のH. David Humes博士らは、10年以上前にこのバイオ人工腎の開発を始めた。この装置には、従来の腎透析のように血液を濾過するカートリッジが含まれ、これが尿細管補助装置につながれている。尿細管補助装置は腎近位尿細管細胞と呼ばれる腎細胞の一種で裏打ちされた中空糸でできており、この腎細胞は生命維持に必須の電解質や塩、グルコース、水を再吸収し、感染症と闘うサイトカインと呼ばれる免疫システム分子の産生をコントロールする。今回の研究では、18〜80歳の極めて重篤な状態にある患者58人を対象とした。持続的静脈-静脈血液濾過と尿細管補助装置を併用した患者では28日後の死亡率が33%であったのに対し、従来型の持続的腎補助療法(腎透析)を受けた患者では66%であった。28日目の時点で尿細管補助装置群の53%に腎機能の回復が認められた。180日間の治療後、尿細管補助装置群での死亡リスクは従来療法群の半分(50%)であった。Humes氏は、今回の結果は非常に有望だと述べている。急性腎不全の死亡率の高さ(50〜70%)には長い間変化がみられなかったが、この方法によって優れた治療法の開発が期待できるという。さらに、生体細胞を利用するこの新しい取り組みは、あらゆる分野の新しい細胞ベースの治療法や組織工学を用いた治療法の開発の可能性をもたらす。慢性腎不全患者の治療用として、装着型人工腎のような装置の開発が促進される可能性もあるという。「細胞の生命維持プロセスを利用して、疾患によって障害された部分を回復させるこの能力は、医学の将来に大きな影響をもたらすものである。このような生体細胞の利用が成功したことで、われわれの取り組みの正当性が裏付けられ、幅広い疾患において細胞治療の研究が促進されると思われる」とHumes氏は述べている。(平成20年5月8日 日本経済新聞)

前立腺がん、乳製品食べる男性、発症率が1.6倍

乳製品をたくさん食べる男性は、ほとんどとらない男性に比べ、前立腺がんの発症率が約1.6倍になることが、厚生労働省研究班の大規模調査で分かった。乳製品は骨粗しょう症や高血圧、大腸がんの予防に有効だとする報告も多く、研究班は「乳製品の摂取を控えた方がいいかどうかは総合的な判断が必要で、現時点での結論は出せない」としている。研究班は、95年と98年に登録した全国10府県に住む45〜74歳(登録当時)の男性約4万3000人を04年まで追跡。このうち329人が前立腺がんを発症した。牛乳やヨーグルトなど乳製品の摂取量によって4群で分析した結果、最も多い群は、ほとんどとらない群に比べ、前立腺がんの発症率が約1.6倍になった。摂取量が多いほど危険性が高まる傾向がみられた。乳製品に多く含まれるカルシウムと飽和脂肪酸は、前立腺がん発症の危険性を高める可能性のあることが報告されている。(平成20年4月16日 毎日新聞)

前立腺がん、学会が集団検診のPSA検査推奨

日本泌尿器科学会は前立腺がんの集団検診として普及しつつあるPSA(前立腺特異抗原)検査を推奨するガイドラインを発表した。学会のガイドラインでは、PSA検査を積極的に実施した地域では、前立腺がんで死亡した人が予測された数の半分以下になった事例を報告した米国の最新データを紹介。「検査をすれば、明らかに転移する(悪性の)がんにかかる危険率が下がる」とした。PSA検査は採血で、前立腺がんになると増えるたんぱく質の濃度を測定する。日本では06年1月現在、全国の約4割の957市区町村が住民検診に導入している。(平成20年4月4日 毎日新聞)

前立腺がん細胞にザクロが劇的効果

果物のザクロに、前立腺がんの細胞を死滅させる成分が含まれていることが、名古屋市立大の朝元誠人助教授らの研究で分かった。朝元助教授らは、人間の初期の前立腺がん細胞を培養し、濃度5%のザクロ果汁の溶液に入れて影響を調べた。すると、わずか30分で激しい反応を起こし、がん細胞が死滅した。前立腺がんにこれほど強く作用する天然物質は例がないという。他のがん細胞には効果がなかった。また、前立腺がんのラットに、5%濃度のザクロジュースを飲ませたところ、がん縮小効果がみられた。ザクロの何の成分が効いているかは不明。朝元助教授は「普通の食品に、こんな作用があるのは珍しい。成分が分かれば、前立腺がんの予防や治療への応用が期待できる」と話している。(平成18年9月29日 読売新聞)

カレー粉成分に前立腺がん抑制作用

米ニュージャージー州立大学の研究グループは、カレー粉に含まれるターメリックと、カリフラワーなどの野菜に含まれるPEITCという化合物に前立腺がんの増殖を抑える作用があることを発見した。動物実験で確認した。前立腺がんは全米の男性のがん死亡者数の2位を占める。放射線治療や化学療法と同時にターメリックやPEITCを摂取すれば、がん治療成績が上がるのではないかとみている。 米国に比べ、ターメリックや野菜の摂取量が多いインドで前立腺がん患者が少ないことに着目した。人の前立腺がんの細胞を移植したマウスにターメリックとPEITCを注射したところ、がん細胞の増殖を抑える効果があったという。(平成18年1月18日 日経産業新聞)

人工透析、負担上限引き上げ

厚生労働省は11日、人工透析を受けている慢性腎不全の患者のうち、月収53万円以上の人の自己負担上限を、月1万円から2万円へ引き上げる方針を自民党に示した。異論がなかったことから、厚労省は来年10月から実施したい考えだ。透析の必要な患者約25万人のうち、約1割にあたる2万5000人が負担増の対象となる見通し。透析患者は毎年1万人のペースで増えており、抑制が必要と判断した。患者団体は反発している。透析患者にかかる医療費(患者負担を含む)は推定約1兆円で、国民医療費の約30分の1を占めると見られる。例えば透析者数のうち約7万人を占める糖尿病患者では、1人あたり年約550万円の医療費がかかっている。人工透析は、自己負担額が一定額を超えた分を還付する高額療養費制度の特例により患者の負担上限は月1万円に抑えられ、残りは医療保険から支給されている。厚労省によると、透析技術の進歩で患者が働きやすくなり、高い収入を得る人も増えてきた。また、1万円に設定された透析患者の負担上限が84年から変わらず、一般の高額療養費制度では約2.6倍になっていることも考慮した、という。(平成17年11月12日 朝日新聞)

前立腺がん、ホルモン療法長期が有効

放射線治療を受けた進行性の前立腺がん患者に対し、長期にホルモン療法を併用すると、短期のホルモン療法の併用に比べ、生存率が向上することがカナダの医療チームの研究でわかった。米医学誌に発表した。研究の対象は、前立腺がんの進行度の指標となるPSA(前立腺特異抗原)の値(正常値は4以下)が20を超える患者307人。前立腺に放射線を照射した後、半数の患者には1年以上にわたって男性ホルモンを抑える注射を続け、残る半数は注射を1年未満で中止した。1年以上の長期にホルモン療法を受けた患者では、PSA値が正常値に戻った人は62・5%に上ったが、1年未満の短期療法の患者では37%と低かった。5年後の生存率も、長期のホルモン療法では87・5%と、短期療法の75%に比べて高かった。研究チームは、「長期のホルモン療法と放射線療法の併用が、がんの進行度に関係なく有効であることを示す研究は今回が初めて」としている。(平成17年11月7日 読売新聞)

幹細胞移植で、マウスの腎不全を治療

腎臓の様々な細胞や組織のもとになる幹細胞を腎不全のマウスに移植して治療することに、菱川慶一・東京大助教授(腎臓内科)らのグループが成功した。20日付の米科学誌ジャーナル・オブ・セルバイオロジーに発表した。人の腎臓でもそれらしい細胞は見つかっており、慢性腎不全患者への新しい治療法として進展が期待されている。菱川さんらは、腎臓内の血管などに分化する腎臓の幹細胞の目印遺伝子を見つけ、この幹細胞が腎臓の間質(結合組織)に多数あることを確認した。健常なマウスから採取した幹細胞を、急性腎不全にしたマウスに静脈注射で移植したところ、回復が促進された。幹細胞が、腎臓を修復させたと考えられるという。菱川さんは「腎臓の幹細胞には様々な細胞に分化する能力だけでなく、組織を修復する能力もあることが分かった。患者の腎臓の幹細胞を体外で増殖させて戻したり、薬で幹細胞を活性化したりすることができれば、腎不全患者の治療につながる」といっている。(平成17年6月21日 朝日新聞)

尿失禁の原因は膀胱攣縮

成人の6人中1人に認められ年齢とともに発症率の増大をみる尿失禁。長年にわたって、尿失禁が主に高齢者に発症する理由は膀胱の萎縮にあると考えられてきたが、米ピッツバーグ大学医学部老年医学科の学科長Neil M.Resnick博士らによって、膀胱攣縮(れんしゅく)によるものであることが明らかにされた。大半の患者は膀胱攣縮を抑制することができ、薬剤投与も外科的処置も実施する必要がないケースが多いという。先ごろ米サンアントニオで開かれた米国泌尿器科学会(AUA)年次集会で明らかにされた。Resnick博士らが尿失禁のみられる女性95例を対象として、膀胱容量、尿道閉鎖圧、尿流量よび排尿筋収縮力に関するデータを比較検討したところ、膀胱および尿道の機能は年齢とともに低下するが、膀胱容量にはほとんど変化はみられなかった。また、ライフスタイルと行動に関する介入を実施すると、尿失禁がみられる患者の3分の2に「劇的な効果」が得られた。膀胱攣縮が起こるのを予測し、攣縮が生じるときに骨盤底筋を引き締めるよう訓練すると、尿失禁が有意に抑制されたという。 マイアミ大学医学部排尿機能障害・女性泌尿器科科長のAngelo Gousse博士は、今回の研究結果に対し、対象としたのが女性95例と小規模であるうえ、60〜90歳がわずか12例である点を指摘し、研究概念はよいが、確証のためには大規模な試験を実施する必要があると述べている。尿失禁を来す傾向が強いのは高齢女性であるからだ。一方、Beaumont病院(ミシガン州ロイヤルオーク)による米国人男性約2万1,600例を対象とした調査結果では、男性でも女性のように加齢とともに尿失禁を来す傾向が強くなり、前立腺の状態と膀胱の機能低下との間に強い関連性が認められることが明らかにされた。調査の対象とした成人男性のうち、過去数カ月に少なくとも1回尿失禁を経験したことがあると報告したのは9%を超えていた。(平成17年5月6日 日本経済新聞)

バイアグラ、服用者の一部に深刻な視力障害

米食品医薬品局(FDA)は27日、性的不能治療薬バイアグラの服用者の一に深刻な視力障害が出ているとの報告を受け、調査を始めたことを明らかにした。直接の因果関係は不明だが、医師や患者に注意を喚起するため、添付文書の改訂を検討している。障害は「非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)」と呼ばれ、視神経に血液が流れにくくなって突然視力が低下、ひどい場合は失明する。50歳以上で高血圧や糖尿病があると発症のリスクが高いという。報告数は38人。製造元のファイザーは「2300万人余りの服用者の中で極めてまれ。バイアグラ服用者に発症が多いとの証拠もない」としている。米メディアによると、ミネソタ大の研究者が今年3月、バイアグラの服用後36時間以内にNAIONを発症した7人を医学誌に報告して関心が高まった。FDAは別の性的不能治療薬2種類についても計5件のNAIONの報告を受けている。(平成17年5月28日 毎日新聞)

前立腺がんの予防、「少し激しい運動」に効果

65歳以上の男性で、週に最低3時間以上、活発な運動をする人は、ほとんど運動しない人に比べて前立腺がんで死亡する危険率が70%も低くなることが、米ハーバード大(マサチューセッツ州)の14年間に及ぶ調査でわかった。 これまで、運動は前立腺がんの発症を抑えるとは言われていたが、死亡率減少にどれくらい運動したらよいのか明確にしたのは初めて。米医学誌に発表した。 同大の研究チームは、1986年から約4万7000人の医療従事者を対象に、ウオーキング、自転車、水泳、テニス、スカッシュ、ボートこぎなど、週あたりの運動時間と前立腺がんの発症との関係を調べた。 この間に約2900人が前立腺がんを発症。うち482人が治療成績の悪い進行性のがんだった。65歳以上の男性に限ると、週3時間以上運動する人の進行性の前立腺がんの発症は、ほとんど運動しない人に比べて少なく、死亡危険率の減少につながっている。 研究チームは「前立腺がんの進行を抑え死亡率を下げるには、適度というより少し激しい運動の方がいいようだ」としている。(平成17年5月16日 読売新聞)

膀胱がん治療薬、効き目を事前判定

東京大学医科学研究所の中村祐輔教授らは、膀胱(ぼうこう)がんの治療薬の効き目を事前に調べる手法を開発した。効き目に関係する遺伝子を探し出し、このうち14個の遺伝子を調べれば判定できるという。実用化できれば、抗がん剤の効果が期待できない患者は別の治療法を選べることになる。効き目がないのに副作用だけに悩む問題の解消につながる。 がんの切除手術の前に、がんの転移を防ぐために複数の抗がん剤を併用する「MVAC療法」を受ける患者が対象。膀胱を温存できる可能性もある一方で、投薬治療に時間をかけると手遅れになる恐れもある。治療効果が期待できる患者を絞り込める利点は大きい。(平成16年10月4日 日本経済新聞)

前立腺がんPSA値急増、高死亡率

血液を調べる「PSA(前立腺特異抗原)」検査を定期的に受け、前立腺がんが見つかった人のうち、がんと診断される直前の1年以内に、PSA値が急上昇した人ほど、手術など治療後の経過が悪く、死亡率の高いことが、米国マサチューセッツ総合病院の研究で分かり、米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」で発表した。 PSA値の正常値は「4」以下で、「10」以上になるとがんの可能性が高いとされる。 研究チームは、PSA検査が継続的に必要な約1000人を対象に、PSA値の変化と、がんと診断された後の治療経過などとの関係を調べた。 診断前1年間にPSA値が少なくとも2ポイント以上、上昇した場合、診断後7年間に、4人に1人が前立腺がんなどで死亡。 数値の変化が2ポイント以下の人に比べ、10倍も死亡率が高かった。 研究チームは「PSA値が前立腺がんの発見だけでなく、がんの悪性度を知る上で重要な指標になることを示した最初の成果」としている。(平成16年8月2日 読売新聞)

前立腺がんに抗がん剤効果

進行した前立腺がんを抗がん剤のドセタキセル(商品名タキソテール)で治療した結果、死亡率が減少したことが、米国などで行われた臨床試験でわかった。 前立腺がんには従来、抗がん剤が効きにくいとされ、延命効果が認められたのは初めて。 米国ジョンズ・ホプキンス大などのチームが行った臨床試験には、転移があるうえホルモン療法が効かない前立腺がん患者約1000人が参加。 ドセタキセルで治療した場合、平均生存期間は1年7か月と従来の抗がん剤を使った場合より2か月余り長く、治療開始から約1年半後の死亡率では24%低かった。 約800人を対象にした別の同様の試験でも死亡率が20%低下した。これを受け、米政府はドセタキセルを転移のある前立腺がんの薬として承認した。(平成16年7月5日 読売新聞)

早期前立腺がん、摘出後2割が再発 

早期の前立腺がんで摘出手術を受けた患者のうち、ほぼ2割が後にがんを再発していたことが、厚生労働省研究班(班長=内藤誠二・九州大教授)が初めて実施した全国調査で明らかになった。研究班は今年夏から約9年間かけ、再発したがんに対する標準的な治療法の開発に取り組む。調査には大学病院や、がん専門病院など全国36施設が参加。早期がんと診断され、98年1月から02年6月にかけて前立腺の摘出手術を受けた男性1360人(47〜83歳)の経過を追った。このがんの指標とされる血中の前立腺特異抗原(PSA)が一定の値を超え、がん細胞の増殖を示す「生化学的再発」と診断された人が254人(18.7%)いた。再発までの期間は、1年以内の例が多く、4年以上たった例もあった。

手術でがんを含む前立腺を取っても、周囲の組織に目に見えない微小ながんが残るなどして再発するとみられる。PSA値が上昇しても、画像診断などでがんの再発や転移が確認されるまでは8年ほどかかるという。 前立腺がんの多くは進行が遅く、再発してもすぐに命にかかわることはない。一方で、手術後の継続した検査の重要性が浮き彫りになった。手術後に再発があった場合は主に、ホルモン療法をする例と、まず放射線治療をしてからホルモン療法を試みる例とに分かれる。研究班は今後、どんなタイプの人にどんな治療法をするのが適しているのか調べる。前立腺がんは高齢化などに伴って急増し、一昨年は約8000人が死亡した。内藤教授は「患者の年齢が高い場合などは手術をしないこともある。個人ごとの再発のリスクを事前に調べられるようにし、患者が治療法を選ぶ材料として役立てたい」と話している。(平成16年5月3日 朝日新聞)

頻繁な射精が前立腺癌を回避

前立腺癌は米国人男性癌患者の中で2番目に多いが、米国医師会誌「JAMA」4月7日号掲載された先ごろの研究では、性的に活発な男性は前立腺癌の発症リスクが低く、頻繁な射精によって同疾患の発症頻度が低下する可能性が示唆された。研究は、癌および慢性疾患の長期調査に参加した46歳から81歳の医師や歯科医などの医療専門家約3万人を追跡したもので、性交のほかマスターベーションや夢精による20代、40代、参加前年の射精回数を調べた。その結果、射精回数が1カ月に4回から7回の男性の前立腺癌発症頻度は、3回の男性に比べて11%、また少なくとも21回の男性では33%低かった。生涯を通してみると、1週間の射精が3回増えるごとにリスクは15%低下した。 リスク低下の理由としては、射精が癌の原因となる化学物質の除去または腫瘍に関連した晶質(クリスタロイド)形成の阻止に役立つこと、射精によるストレス緩和に伴うホルモンの活性化によって前立腺における癌性変化の可能性が低下することが考えられる。しかし、現段階で男性に性行為の促進を推奨することは時期尚早である、と主任研究者で米国立癌研究所(NCI)の疫学者Michael Leitzmann博士はコメントしている。また、癌関連医学誌「Journal of the National CancerInstitute」4月7日号掲載の別の研究によると、ホルモン療法後の前立腺特異抗原(PSA)検査で前立腺癌患者の再発が予測できる。 米ブリガム&ウィメンズ病院が男性1454人のPSA濃度を調べたところ、上昇が急激で下降が緩徐である場合の同疾患による死亡リスクは、その逆の場合に比べて13倍高かった。(平成16年4月16日 日本経済新聞)

前立腺がん「小線源治療」普及へ

前立腺がんの治療法として注目を集めている放射線療法の一種「小線源治療」について、厚生労働省は今月末、医療機関が導入する上で障害になっていた設備の制限を緩和する省令改正を行う。この治療が可能になる医療機関は、これまでの約50から200前後に増える見込みで、厚労省は「治療の選択肢を増やす意味でも普及を望みたい」としている。小線源治療はヨウ素125という物質を密閉し、微弱な放射線を出す小型のカプセル(直径0・8ミリ、長さ4・5ミリ)を80本程度、前立腺に埋め込み、がん細胞をねらい撃ちする。国内では昨年秋から慈恵医大などで試行が始まり、現在東京と岡山の計3か所で使われている。しかし、従来の規則では微弱な放射線器具を扱うために専用の区画が必要で、設備投資に二の足を踏む医療機関が多かったという。(平成16年1月29日 読売新聞)

腎がん治療、インターフェロン作る遺伝子注射 

京都府立医大の三木恒治教授(泌尿器機能再生外科学)らの研究グループが、インターフェロンを作る遺伝子を腎がんの組織に注射すると、がん細胞が自ら死滅することを実験で確かめた。実際に患者に投与する臨床研究計画を15日、学内の審査委員会に申請した。腎がんは進行すると治療が難しいとされており、身体負担が少なく、効果が期待できる新治療法として注目される。臨床計画では、患者の腎がんや転移したがんの部位に週2回、計6回注射し、効果を確かめる。(平成16年1月16日 毎日新聞)

バイアグラ、レビトラに続く勃起不全治療薬

米食品医薬品局(FDA)は、イーライ・リリー社の勃起(ぼっき)不全治療薬「シアリス」を承認した。バイアグラ(98年3月)、レビトラ(今年8月)に続き3種目。先行の2種より効果が長続きするのが特徴という。 効く仕組みは先行2種と同様で、体内の酵素の働きを邪魔して男性器への血流を増やす。4000人の臨床試験では、早い人だと服用後30分で効き始めた。 臨床試験で確認された副作用は、頭痛や消化不良、背中の痛み、筋肉痛など。FDAは、勃起不全の原因を医師に診断してもらってから服用するよう呼びかけている。(平成15年11月23日 朝日新聞)

喫煙は「たちの悪い」前立腺癌を増やす

前立腺癌にかかった中高年男性と、前立腺癌がない同年齢層の男性とを比較した米国の症例対照研究で、喫煙は前立腺癌の発症リスクだけでなく、より悪性度が高い前立腺癌をも増やす恐れがあることがわかった。 喫煙者では非喫煙者より1.4倍前立腺癌になりやすく、しかも、ヘビースモーカーは悪性の前立腺癌に2倍なりやすい計算になるという。 研究結果は、米国癌学会(AACR)の学術誌であるCancerEpidemiology, Biomarkers & Prevention誌7月号に掲載された。 この研究を行ったのは、米国Washington大学泌尿器科のLora A. Plaskon氏ら。 同氏らは、Washington州北西部のKing地区の住民から、1993〜1996年に生検で前立腺癌であることが確認された40〜64歳の男性753人と、同地区に住む同年齢層の男性で、前立腺癌にかかっていない703人を抽出。 両群を比較して、喫煙が前立腺癌の発症や悪性度に与える影響を検討した。 両群とも現喫煙者は16%前後で、非喫煙者は4割弱、過去に喫煙経験がある禁煙者は半数弱だったが、非喫煙者と比べた場合、喫煙者では前立腺癌の発症オッズ比が1.4(95%信頼区間:1.0〜2.0)になることが判明。 オッズ比は喫煙年数などと正の相関があり、1日1箱を40年間、あるいは1日2箱を20年間など、喫煙指数(1日の喫煙箱数と喫煙年数を乗じた数)が40以上のヘビースモーカー(禁煙者含む)では、このオッズ比が1.6(同:1.1〜2.2)と有意に高くなった。次に研究グループは、前立腺癌の病理学的悪性度を反映するGleasonスコアが7以下、あるいは腫瘍が限局性の場合を「非進行癌」、Gleasonスコアが8以上、あるいは腫瘍が浸潤性・転移性の場合を「進行癌」として、喫煙との関連を評価した。すると、「進行癌」にかかるオッズ比は、喫煙指数が40以上のヘビースモーカーで2.0(同:1.3〜3.1)と、有意に高くなることが判明。 喫煙には前立腺癌の発症リスクを高めるだけでなく、癌の悪性度も高める作用もあることが示唆された。 一方、たばこを止めてからの年数で見ると、現喫煙者より禁煙者の方が前立腺癌の発症率は低いが、たばこを止めて20年間は非喫煙者よりも高い傾向が保たれる。結局、20年以上たばこを止めている人で、ようやく前立腺癌の発症率は非喫煙者と変わらないとの結果になった。 喫煙が前立腺癌の発症率を高める機序は、喫煙者で血中の男性ホルモンレベルが高く、女性ホルモンレベルが低いためではないかと考えられている。 “禁煙効果”が現れるのに20年はかかることを考えると、前立腺癌が心配な人は、できるだけ早くたばこと手を切った方が良いと言えそうだ。(平成15年7月24日medwave)

活性型ビタミンDの抗癌薬増強作用

米国Oregon健康科学大学はこのほど、活性型ビタミンD製剤と、抗癌薬のドセタキセル(わが国での商品名:タキソテール)とを併用する第2/3相臨床試験を開始すると発表した。対象は進行前立腺癌患者で、全米20カ所の大学病院で患者登録を行う。活性型ビタミンD製剤は、ドセタキセルやパクリタキセル、プラチナ製剤などの抗癌薬の効果を増強する作用が報告されている。Oregon健康科学大学では、進行前立腺癌患者を対象とした小規模な臨床試験で、奏効率の高さを前立腺癌特異抗原(PSA)値を指標に確認。今回の拡大試験に踏み切った。Oregon健康科学大学が進行前立腺癌患者37人を対象に行った臨床試験では、ドセタキセルと活性型ビタミンD製剤のカルシトリオールとの併用で、PSA値が50%以上低下した患者の比率が81%に達した。ドセタキセル単独を用いた他の臨床試験では、PSA値が50%以上下がる患者の比率は38〜46%程度と報告されており、カルシトリオールの併用で奏効率が2倍になる計算となる。臨床試験では、カルシトリオールの高用量製剤であるDN-101(開発コード)を用い、DN-101またはプラセボをドセタキセルに併用するプラセボ対照二重盲検法で効果を比較する。登録患者数は232人を予定している。(平成14年9月24日medwave)

勃起障害への自己注射治療法を承認

勃起(ぼっき)障害(ED)に対し、男性患者自らが血管拡張剤を陰茎に注射する治療法の臨床研究について、岡山大医学部倫理委員会は21日、国内で初めて承認した。プロスタグランディンE1(PGE1)という血管拡張剤を自己注射し、5〜10分で勃起が始まるといい、海外では広く普及している。国内で唯一承認されているED治療薬バイアグラは、心疾患のある患者には使えず、約3割の患者には効果がない。研究は、20〜74歳のED患者20人が対象。アンケートや血液検査などで効果、副作用を調べる。同大付属病院泌尿器科の公文裕巳教授は「この療法が確立されれば、治療の選択肢が広がる。有効性や安全性を検討し、国に認可を働きかけたい」と話した。(平成14年5月21日 朝日新聞)