骨粗鬆症について



カルシウム不足の女性、腰椎骨折リスク2倍

厚生労働省研究班はカルシウムの不足している女性は腰椎を骨折するリスクが最大で2.1倍に高まるという大規模疫学調査の結果を公表した。日本人は欧米人と比べてカルシウムの摂取量が少ないといわれており、研究班は幅広い食品からの摂取を呼びかけている。研究班の中村和利・新潟大学准教授は、全国の40―69歳の男女約7万6000人を10年間にわたって追跡調査。聞き取り調査を基に食品からのカルシウム摂取量を算出し、腰椎を骨折するリスクとの関係を調べた。交通事故などによるケースを除くと、期間中に364人が骨折していた。カルシウム摂取量の多い順に4つのグループに分けると、女性の場合、最も少ないグループ(1日当たり350ミリグラム未満)は、最も多いグループ(同700ミリグラム以上)と比べて腰椎骨折のリスクが2.1倍になった。(平成20年6月26日 日本経済新聞)

骨粗しょう症のメカニズム解明

骨粗しょう症が起きるメカニズムの一端を、科学技術振興機構と東京大の研究チームが世界で初めて突き止めた。女性ホルモンが、骨を壊す細胞(破骨細胞)の"自殺"を促し、骨の量を保つ働きがあるという。閉経に伴って女性ホルモンが減った女性は、骨粗しょう症にかかりやすくなるが、女性ホルモンがどのように骨に作用するかはよくわかっていなかった。研究チームは、破骨細胞の内部にあって女性ホルモンの エストロゲンが取り付く受容体という部分に注目。雌マウスを遺伝子操作して受容体をなくすと、通常のマウスより破骨細胞が増えて骨の破壊が進み、骨量は約5%落ちた。さらにエストロゲンを投与すると、通常のマウスは破骨細胞の自殺を促すたんぱく質の量が増えたのに、エストロゲンの受容体をなくしたマウスに変化がなかった。厚生労働省の2005年10月の調査では骨粗しょう症で入院・治療している患者は推計で約45万人で、そのうち女性は約43万人。女性患者の87%が65歳以上で、閉経後の女性が圧倒的多数を占めている。破骨細胞:骨の表面にある細胞で、酸やたんぱく質を分解する酵素を出し、古くなった骨を壊す働きをする。同時に、「骨芽細胞」が新しい骨を作るため、骨は常に新陳代謝され、骨量も一定に保たれる。骨粗しょう症は、この両者のバランスが崩れて発症する。(平成19年9月7日読売新聞)

骨形成に必須な「活性型オステオカルシン」をブタ煮骨から抽出に成功

タカラバイオ株式会社は、ブタの煮骨から骨の形成に必須なたんぱく質「活性型オステオカルシン」製造方法を世界で初めて開発しました。骨粗鬆症は、骨分解と骨形成のバランスが崩れ、相対的に骨分解が優位となり、骨量が減少し骨折が起こりやすくなる病態をさし、「寝たきり老人」増加の主な原因となっています。特に女性の場合、閉経により骨量の減少が急速に起こります。現在、日本では約1,100万人(2000年)の骨粗鬆症患者がいると推定され、70歳以上の女性では、その4割以上が骨粗鬆症の診断基準にあてはまると報告されています。「活性型オステオカルシン」は骨芽細胞により産生されるたんぱく質であり、カルシウムを骨に蓄積する機能があります。「オステオカルシン」分子内のグルタミン酸残基がγ−カルボキシグルタミン酸残基に変換されたものは「活性型オステオカルシン」と呼ばれ、活性型のみがカルシウムを骨に蓄積できることが知られています。豚煮骨由来の抽出物には、この「活性型オステオカルシン」が含まれるため、骨分解と骨形成のバランスを骨形成に期待。(平成19年3月7日 日経新聞)

カロリー制限による減量、骨密度が減少

カロリー制限をして体重を落とすと骨密度が減少するのに対して、運動で体重が減っても骨密度に変化がないことが、米ワシントン大学の研究グループの調査で分かった。ダイエットなど食事制限で減量すると骨粗しょう症になりやすいとしている。女性30人と男性18人(平均年齢57歳)を「カロリー制限をした食事をするグループ」「カロリー制限せず運動をするグループ」の2集団に分けて調査した。カロリー制限したグループは1年後に体重が平均8.2キログラム減少し、骨密度も同2.2%減っていた。運動をしたグループでは体重が6.7キログラム減ったものの骨密度に変化はなかった。(平成18年12月13日 日経産業新聞)


外出しないと歩行障害4倍

ほとんど家を出ない高齢者は毎日外出する人たちに比べ、歩行が不自由になるリスクが4倍。認知機能が落ちるリスクが3.5倍もあることが、東京都老人総合研究所などの調査でわかった。もともとの健康状態とはかかわりなく、外出しないこと自体が危険性を高める。同研究所と新潟県与板町内65歳以上の約1500人の健康状態と、MMSEというテストで認知機能を調べ、健康状態を分析した。1キロの距離を歩けないか、階段を上れない場合を「歩行障害あり」として、そうした状態になるリスクを「1日に一回は外出する」人たちと比較した。年齢や健康状態が同じになるように調整したうえで比べると、「2〜3日に一回」の人は1.8倍、「週一回かそれ以下」の人では4倍という結果だった。認知機能が一定以上下がるリスクも、「2〜3日に一回」で1.6倍、「週一回かそれ以下」は3.5倍になった。調査の結果、歩行障害を抱えても、外出する機会が多ければ、回復する可能性が高い。 社会活動に参加するなど、外に出る習慣をぜひ保ってほしい。(平成18年12月2日 朝日新聞)


"男性"骨粗鬆症が増加の一途

最近、増加の一途を辿っている男性骨粗鬆症の実態が第8回日本骨粗鬆症学会で報告された。「骨粗鬆症は女性の病気」と捉えられ、男性骨粗鬆症はあまり注目されてこなかった。しかし、男性骨粗鬆症の予後は女性よりも悪いと言われ、年間2万5000人程度の新規罹患者が発生している。骨粗鬆症の疫学調査としては、代表的な骨粗鬆症性骨折である大腿骨頚部骨折に関して、1987年から5年ごとに4回にわたって全国調査が行われている。2002年に行われた厚生労働科学研究班の調査によると、大腿骨頚部骨折発生数は11万8000人と、過去3回の調査結果よりも新規発生患者が増えていることが示された。各年代別の危険度をみると、男性は女性に比べて約半数で、特に高齢者ではその差が明らかだった。また、患者数を見ても女性の方が圧倒的に多く、いずれの調査でも男性は女性の約3分の1以下と考えられている。しかし02年の調査では、年間2万5300人の男性が新たに大腿部頚部骨折を起こしていた。これは15年前に比べて約2倍の増加に当たる。そうした疫学調査結果をもとに、最も頻度が高い脊椎椎体骨折について40〜79歳の各年代50人ずつ計400人を選んでレントゲン撮影を行った。日本骨代謝学会の診断基準を判定法として脊椎椎体骨折の有病率を性別、年齢別にみたところ、40〜49歳で男性4%、女性2%、50〜59歳で男性15%、女性10%、60〜69歳で男性22%、女性14%と、60歳代までは男性の方が女性よりも高かった。一方、70〜79歳では男性18%、女性45%と、高齢女性になると脊椎椎体骨折の有病率が急上昇し、さらに複雑骨折の割合が増加することが分かった。この集団を追跡して10年目に調査に参加した299人に関して、新規骨折の累積発症率を年代別にみたところ、男性では40歳代2.9%、50歳代10.3%、60歳代13.2%、70歳代30%との結果で、女性では40歳代2.1%、50歳代6.5%、60歳代23.1%、70歳代42.3%と、60〜70歳代の女性で明らかに累積発生率が高くなっていた。このことから、脊椎椎体骨折についても、男性の発生率は女性より少ないものの、決して楽観できる成績ではないとした。(平成18年11月7日 薬事日報)

骨粗しょう症薬、乳がん抑制にも効果

世界最先端のがん研究成果を報告する米臨床腫瘍学会で、米研究グループが、特定の骨粗しょう症治療薬が乳がん抑制にも効果を発揮したとの実験結果を発表した。年末までに乳がん抑制剤としても承認申請する方針を明らかにした。骨の代謝を促す体内のエストラゲンという物質は、不足すると骨粗しょう症にかかりやすいが、乳腺に対してはがん発生のリスクを高めるマイナス効果もある。閉経後の骨粗しょう症の女性に、治療薬として塩酸ラロキシフェンを投与すると、骨に対してエストラゲンの働きを高める一方で、乳腺への作用は抑制する効果もあることが分かった。発表した米研究グループによると、5年間投与した治験結果では、進行がんの抑制効果はがん専門薬とほぼ同等で、副作用の面でも大きな差はみられなかった。(平成18年6月6日 日本経済新聞)

骨粗しょう症を抑える作用発見

九つのアミノ酸が結合した「W9ペプチド」という炎症抑制作用を持つ物質が、骨粗しょう症などの際に骨が減少する作用も抑えることを、東京医科歯科大の青木和広助手(硬組織薬理学)らが発見した。 骨粗しょう症だけでなく、炎症から骨の破壊を招く関節リウマチや歯周病の治療薬への応用も期待される。生物の骨では常に形成と破壊が繰り返されている。 健康なときはこのバランスがとれているが、カルシウム不足などになると破壊が進む。 青木助手らは、W9ペプチドが骨を破壊する細胞ができるときに必要な分子と結合して、破壊細胞の生成を抑えることを発見。 さらに普通の餌を与えたマウスと、カルシウム量を10分の1にしたマウスで実験した。 10分の1マウスのすねの断面積中に骨の占める割合は2日後、4.4%で、正常マウス(9.7%)の約半分までに減少した。 一方、10分の1マウスのうちW9ペプチドを投与したマウスは10.3%で、正常マウスとほぼ同じ状態を保った。 W9ペプチドを大量に投与しても肝臓、腎臓の異常は認められなかったという。 青木助手は「炎症と骨減少を抑える二つの働きを同時に持つ、副作用の少ない関節リウマチなどの薬剤の開発につながる」と話している。(平成18年5月5日 毎日新聞)

お年寄り転倒予防 歩くより自転車こぎ効く

お年寄りが寝たきりになる大きな原因が転倒による骨折だ。大腿(だいたい)部や腰周辺の筋肉の鍛錬が転倒予防につながると言われているが、それにはウオーキングよりも自転車こぎの方が有効なことが東北大の研究でわかった。岡山県倉敷市で開会中の日本体力医学会で発表された。年を重ねると、ひざを高く持ち上げる腸腰(ちょうよう)筋や小臀(しょうでん)筋と呼ばれる筋肉が衰え、転倒しやすくなる。同大の伊藤正敏教授、藤本敏彦講師らは、これらの筋肉を鍛えるには、どんなトレーニングが効果的かを調べた。筋肉は疲労回復のために、盛んに糖分を摂取する特性がある。研究チームは20代の学生5〜7人に、30分〜1時間の様々なトレーニングをしてもらい、身体の糖の取り込み分布を画像化できる陽電子放射断層撮影(PET)装置で分析した。その結果、階段上りでは、ひざ上げに最も重要な腸腰筋、次いで重要な小臀筋が使われた様子が確認されたが、ウオーキングやジョギングでは、腸腰筋の活発な動きは見られなかった。腸腰筋の活動が盛んだったのは自転車こぎで、ペダルを踏み込む際は、大腿部に力がかかるものの、もう一方の脚は、股(こ)関節を曲げてひざを上げるため、腸腰筋を使っていると考えられる。藤本講師は「自転車こぎで鍛えられる筋肉は、お年寄りでも同じ。階段上りは疲労感が残るうえ、無理すると心臓や肺に負担をかけ逆効果」と話している。(平成17年9月25日 読売新聞)

みかんの成分β-クリプトキサンチンは骨形成を促進

カロテノイドの一種であるβ-クリプトキサンチンは骨形成の促進にはたらくことを、新潟大学農学部農業生産学科の池田紀子氏らが、「骨粗鬆症モデルラットにおける温州みかん由来β-クリプトキサンチンの骨密度に及ぼす影響」と題して、ポスター演題の中で発表した。β-クリプトキサンチンは柑橘類や柿に含まれ、温州みかん1個あたり約2mg含まれているといわれている。また動物実験により大腸がんや皮膚がんの予防効果が報告されている。この研究では、卵巣を摘出した骨粗鬆症モデルマウスを作成し、術後、非投与群と対照群にはコントロール食を、他の2群にはそれぞれβ-クリプトキサンチン0.03g/日(低投与群)、0.3g/日(高投与群)を与えた。5週間後、まず採血をして血中オステオカルシン濃度を測定したところ、高投与群、低投与群、非投与群の順で高濃度を示し、投与群では骨形成が亢進していることがわかった。また骨吸収マーカーであるCTX濃度は、非投与群に比べて、投与群はともに低い値を示した。次に大腿骨、脛骨、腰椎の骨密度を測定した結果、高投与群、低投与群、非投与群の順で有意に高い骨密度を示し、非投与群に比べて高投与群では、2割以上の骨密度の改善が見られた。以上のことから、「β-クリプトキサンチンは骨吸収を抑制するとともに、骨形成も促進する」と結論づけている。(平成17年7月28日 medwave)

タマネギに含まれるケルセチンの投与で骨密度の減少を抑制

フラボノイドの一種でタマネギに多く含まれるケルセチンを骨粗鬆症モデルマウスに投与したところ、4週間後、骨密度の減少が有意に抑制したことを、徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部の辻光義氏らが、「フラボノイド化合物ケルセチンの骨粗鬆症予防効果とその作用機構」と題したポスター演題の中で発表した。ケルセチンには、ガンや動脈硬化などの原因である活性酸素を抑える抗酸化作用と、花粉症やアレルギー性皮膚炎に対する抗炎症作用があることが報告されているが、骨量への影響に関してはまだはっきりしていない。この研究では、卵巣を摘出した骨粗鬆症モデルマウスを作成し、対照群には偽手術を行った。術後3群に分け、非投与群と対照群にはコントロール食を、他の2群にはそれぞれケルセチン0.25%および2.5%を添加した食餌を与えた。投与4週間後、第3腰椎の骨密度を測定したところ、ケルセチン2.5%群では非投与群に比べて有意に骨密度の減少が抑えられており、対照群とほぼ同じ程度の骨密度になっていた。一方、血清カルシウムやリンの濃度および子宮の重量には変化がなかった。 またケルセチンは植物エストロゲンとしての作用をもつとの報告があるため、辻氏らはin vitroでエストロゲン受容体(ERα、β)に対する活性を調べた。その結果、大豆由来の植物エストロゲンであるイソフラボン(ゲニステインとダイゼイン)はエストロゲン受容体に作用して活性が見られたが、ケルセチンでは活性は示さなかった。このことから辻氏らは、タマネギやホウレンソウ、パセリなど、ケルセチンを含有する野菜を積極的に摂取することが、骨粗鬆症予防に有効」であり、「イソフラボンとは異なる経路で生体に作用すると結論づけている。(平成17年7月28日 medwave)

骨を作る遺伝子を解明

東京医科歯科大学の高柳広教授らの研究グループは、骨が作られる仕組みを遺伝子レベルで解明した。国内に1000万人いるとされる骨粗しょう症患者の新しい治療薬の開発に道が開ける。体内の様々な骨は、骨を作る骨芽細胞と骨を壊す破骨細胞と呼ぶ2種類の細胞の働きで新陳代謝を繰り返している。このバランスが崩れると骨がもろくなって骨粗しょう症になる。 研究グループは破骨細胞を活性化させるNFAT遺伝子から作られるたんぱく質が、オステリックスと呼ぶ別の遺伝子から作られるたんぱく質と協調して、骨芽細胞を活性化することを突き止めた。(平成17年7月27日 日経産業新聞)

若い女性の骨を強くするのはビタミンDと運動


食事によるビタミンDの摂取量を増やし、歩行数を増やすことが、血中ビタミンDの濃度を上げ、さらには骨密度を高めることにつながることがわかった。東京女子医科大学医学部産婦人科教室の黒田龍彦氏らが、平均20歳の女性を対象にした調査をもとに7月23日の口演セッションで発表した。骨密度は加齢とともに生理的に低下し、特に閉経後はエストロゲンの減少で、骨密度は顕著に低くなる。このため若い頃に骨密度を上げておくことが、将来の骨粗鬆症を予防するといわれている。このグループでは別の口演発表の中で、同じく若年女性を対象にした調査から「血中25OH-ビタミンD濃度が25ng/ml以上であれば、高骨密度の獲得につながる」と述べている。このためビタミンDは骨密度の増加に寄与するという前提に基づいて、黒田氏らは、若い女性のライフスタイルと血中ビタミンDとの関係について調べた。対象は19〜25歳の健康な女性293人。採血サンプルからは25OH-ビタミンDを測定し、日常活動をライフコーダー(生活習慣記録機)や質問表で記録、さらに食行動を自記式質問表を用いて分析した。この結果、ライフコーダーによる総エネルギーは平均1819Kcal、運動のみのエネルギーは221Kcal、歩行数は8810歩だった。 また血中ビタミンD量との関係を調べると、運動エネルギーと歩行数は正の相関を示し、逆にテレビ鑑賞やゲーム時間などエネルギー消費が極めて低い運動とは負の相関を示した。また食事からのビタミンDの摂取量と血中ビタミンD量は相関しており、ビタミンDの摂取量と歩行数には相加的な効果もあったという。このことから、血中のビタミンDを高濃度に保つには、食事によるビタミンDの摂取と歩行数を増やすことが若い女性においても必要であり、これは非薬物的介入法の一つであると結論づけた。(平成17年7月27日 medwave)

脚付け根の骨折、1年以内の9%死亡

高齢者の寝たきりの原因の一つ、大腿骨頸部(だいたいこつけいぶ)(脚の付け根)骨折では患者の約9%が手術などの治療を受けてから1年以内に死亡していたことが、厚生労働省の研究班(主任研究者=萩野浩・鳥取大助教授)と日本整形外科学会による調査で明らかになった。特に高齢者では運動能力低下から持病の悪化を招く脅威と確認され、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)予防と転倒防止の重要性が指摘されている。治療後の寿命や日常生活動作能力(ADL)への影響を全国規模で調べたのは初めて。99〜01年の3年間に骨折した0〜111歳の患者1万2250人(平均79歳)のデータを分析した。2割強が80代後半で、入院期間は平均約2カ月。患者は女性が多く、男性の3.7倍。50代前半の閉経期を境に急激に増えており、骨粗鬆症の影響とみられる。 原因は単純な転倒が全体の4分の3を占め、おむつを交換しただけで折れた「おむつ骨折」も30件あった。 1年以内の死亡が確認されたのは1157人で全体の9.4%。1年後の生存率を年齢別に見ると、50代半ばまではほぼ100%だが、50代後半〜70代は9割台、80代は8割台、90歳を超えると7割台に落ち込んでいた。高血圧や心疾患、認知症(痴呆(ちほう)症)などの持病があると死亡率が高かった。一方、骨折前は「交通機関を利用して自由に外出できる」(29%)と「隣近所なら独力で外出する」(25%)が計54%だったが、骨折1年後にはそれぞれ17%と14%の計31%だった。調査をまとめた阪本桂造・昭和大教授(整形外科)は「大腿骨頸部骨折は、寝たきりだけでなく、持病が多いと死亡の間接的な引き金にもなる重い病気。適度な運動で骨が弱くなるのを防ぐことと、転倒防止対策の充実が必要だ」という。(平成17年7月19日 朝日新聞)

骨粗鬆症の検診対象を拡大

厚生労働省は全国老人保健事業担当者会議を28日に省内で開き、来年度からの骨粗鬆症検診の対象年齢拡大や女性の癌緊急対策について、都道府県関係者に協力を求めた。骨粗鬆症は骨折等の基礎疾患であり、要介護要因の第3位に挙げられ、介護予防の観点からも積極的に取り組む必要性が指摘されいてる。検診は1995年度から40歳と50歳の女性を対象にスタートし、00年度からは老健事業として実施されている。来年度からの措置は、対象年齢を40〜70歳まで拡大し、5年ごとの節目に受診できる体制を整備するもの。検診受診者は増加しているが、受診者数等は都道府県によって格差が大きく、改善が求められていることから、厚労省では介護予防の面から、各市町村が取り組むように指導することを要請した。(平成17年2月28日 薬事日報)

ビタミンK2で肝がん抑制

ウイルス性肝硬変の患者がビタミンK2剤を何年も飲み続けると、肝がんに進行する確率が標準的な治療のみの患者に比べ約5分の1にまで下がる。塩見進・大阪市立大教授らのグループがそんな研究結果を米医師会誌(21日発行)に発表する。ビタミンK2剤は骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の薬として普及しており、同グループは「副作用が少ない安価な薬で肝がん抑制の可能性を示せた」という。 ビタミンK2は納豆などに多く含まれる成分。研究の対象となった患者40人は皆、男性より骨がもろくなりやすい女性で、骨粗鬆症と早期のウイルス性肝硬変を併発していた。96年から約8年間、経過を追った。 21人は肝臓を保護する薬剤を使う標準治療に加え、ビタミンK2剤「メナテトレノン」を毎日45ミリグラム飲み、19人は標準治療だけを続けた。その結果、肝がんに進行したのは、K2を飲んだ患者では2人、飲まなかった患者では9人だった。 この結果をもとに1年間に発がんする確率を計算すると、飲んだ患者は1.6%になる。飲まなかった患者は8.8%で、ウイルス性肝硬変になった患者の全国平均(8%前後)に近かった。 小俣政男・東京大教授(消化器内科)は「ビタミンK2が肝がんの再発を抑えることを示す研究が別のグループから発表されているが、今回は肝がんへの進行を抑える効果もうかがわせる。 ただ、抗がん剤のように劇的には効かないだろう」と話す。(平成16年7月21日 朝日新聞)

牛乳に大腸がん危険低下の効果 

牛乳やカルシウムには大腸がんの危険を低下させる効果があることが分かったと、米ハーバード大などのグループが7日付の米国立がん研究所雑誌に発表した。欧米5カ国で行われた10の疫学調査(計約53万人が参加)のデータを分析した結果、1日当たり500グラム(200ccのコップ約2杯半)の牛乳を飲むと、大腸がんの危険が12%減少することが明らかになったという。カルシウムの大腸がん予防効果は動物実験では指摘されていたが、人への効果が大規模調査で判明したのは初めて。調査は主に1980年代に行われ、6−16年にわたって追跡。牛乳とヨーグルト、チーズの摂取と大腸がんの関係を調べたところ、ヨーグルトでも予防効果を示す傾向がみられたが、統計データで予防効果が確認されたのは牛乳のみだった。カルシウムについては、摂取量が1日1000ミリグラム以上になると、それ以下の場合に比べ女性は15%、男性は10%、大腸がんの発生が減るとしている。(平成16年7月7日 産経新聞)

週1回服用の骨粗鬆症治療薬が承認申請

帝人ファーマと万有製薬は、ビスフォスフォネート系骨粗鬆症治療薬(一般名・アレンドロネート)について、週1回の服用で済む製剤を厚生労働省に承認申請した。のみやすさにつながることともに、処方機会も増えることに期待を寄せる。上市は2005〜06年になるとみられる。現在の用法は1日1回で、起床後に服用する形で、消化管に炎症に起こすおそれがあるため、服用後最低30分は横にならず、飲食も避けることとされている。週1回製剤になることで、それを毎日繰り返すことがなくなる。1日1回の製剤は現在、帝人は「ボナロン」、万有は「フォサマック」の名称で販売。週1回製剤は、2月25日付で承認申請された。帝人は年間100億以上の売り上げを見込む。(平成16年3月23日 薬事日報)

大腿骨頸部骨折、半数は80代 おむつ交換時も

お年寄りが寝たきりになる原因の一つ、脚の付け根の大腿骨(だいたいこつ)頸部(けいぶ)骨折は冬場に多く、80代が半数近くを占める。介護でおむつを交換されているときに骨折することもある。厚生労働省研究班が全国の患者約16万人の症例を分析してわかった。骨折に関するこれほど大規模な調査は初めてだ。調査したのは、厚労省の長寿科学総合研究事業の研究班(主任研究者=萩野浩・鳥取大助教授)。98〜01年、約3800の整形外科施設から症例データを集めた。35歳以上の15万5千例を分析した。その結果、高齢になるほど患者は多く、80代だけで46%と半数近くを占めた。女性は男性の約4倍、骨折時期では1月が9・7%と最も多かった。全体的に冬場に多く、夏場が少ない傾向にある。 骨折したときの状況では、単純な転倒が75%と最も多い。階段や段差の踏み外しは意外に少なく7・6%だった。これまであまり知られていなかったのが、介護者からおむつの交換をされているときに起きる“おむつ骨折”で、272例あった。こうした軽い動きで骨折する割合は高齢者ほど多く、90歳以上ではもっと頻度が高まった。萩野さんは「高齢者は骨がもろく、脚を開くような軽い動作でも骨折することがある。介護する人は気をつけてほしい」と警告する。

日本人女性の半数はビタミンD不足

健康な中高年女性500人を対象とした調査で、調査対象女性の半数以上が「ビタミンD不足」状態にあるとみなせることが明らかになった。血中ビタミンD(25OHD)濃度が極端に低い人では、有意に骨折も多かったという。神戸薬科大学衛生化学研究室の岡野登志夫氏、成人病診療研究所の白木正孝氏らの研究グループによる厚生労働科学研究の結果で、10月9日の一般口演で発表された。

調査の対象は、成人病診療研究所を受診した、長野県在住の健常女性464人(30〜95歳、平均年齢65歳)。血中ビタミンD濃度の季節変動や年齢との関連、骨代謝に与える影響などを評価した。さらに、測定に保険適応がないなどの理由で日本人における基準値が不明確な25OHD濃度の“正常範囲”を、副甲状腺ホルモン(PTH)濃度や骨折有病率を指標に検討した。

その結果、日照時間を反映して、血中ビタミンD濃度は冬季で低く、夏季で高いという季節変動はみられたが、年齢にはまったく依存しないことが判明。 PTH濃度とは負の相関があり、ビタミンD濃度の低下で、骨代謝回転を司るPTHが代償的に上昇することが確かめられた。腰椎骨密度とは正の相関が認められた。次に研究グループは血中ビタミンD濃度で全体を5分し、PTH濃度や骨折有病率が有意に上昇する血中ビタミンD濃度を評価した。すると、最も血中ビタミンD濃度が高い群(30ng/ml以上)と比べ、10ng/ml未満の群では骨折有病率とPTH濃度がいずれも有意に上昇。 20ng/ml未満までの群ではPTH濃度が有意に上昇していた。なお、ビタミンDは脂溶性ビタミンだが、血中濃度と体格指数(BMI)との関連は認められなかった。

以上から岡野氏らは、血中ビタミンD濃度が10ng/ml未満の人は“ビタミンD欠乏症”、20ng/ml未満の人は“ビタミンD不足状態”とみなせると結論。「欠乏症」は全体の2.2%とわずかだが、20ng/ml未満の「ビタミンD不足状態」の人は全体の55%にも達することから、「これまで考えられていた以上に、日本人ではビタミンD不足の人が多い可能性がある」と話した。

ビタミンDは骨代謝などに好影響を与えるほか、複数の介入試験で高齢者の転倒を防ぐことも示されている。骨代謝という一つの観点からの評価ではあるが、女性の過半数で不足しているというのは、実は大変な事態ではないだろうか。男性を対象とした同様の評価を進めると同時に、現行の栄養所要量の見直しなど、国民の健康増進に向けた具体的な行動が必要な段階に来ていると言えそうだ。(平成15年10月14日 medwave)

破骨細胞作るたんぱく質発見

東京大学の谷口維紹教授と高柳広助手らは、骨を分解する破骨細胞の形成に欠かないたんぱく質を発見した。多数の破骨細胞が活動すると、骨粗しょう症など骨がもろくなる病気になりやすくなる。このたんぱく質の働きを抑えれば、その予防につながると考えられる。詳細な仕組みを解明し、新薬開発などに生かしたい考えだ。 赤血球など血球の元になる細胞(造血幹細胞)に、特定のたんぱく質を与えると破骨細胞に分化することが知られている。谷口教授らはこの時、細胞内に免疫系細胞を活性化する別のたんぱく質(NFATc1)が作られることを発見した。培養した造血幹細胞の遺伝子を操作してこのたんぱく質を作れなくしたところ、幹細胞はどのような処理をしても破骨細胞に分化しなかった。逆にこのたんぱく質を過剰に作らせるようにした細胞では、自然に破骨細胞に変わった。(平成14年12月10日 日経産業新聞)

「Cbfb」遺伝子が骨形成に必須

骨の形成に関わる多くの遺伝子のうち、核結合因子「Cbfb」と呼ばれる遺伝子が骨形成に必須であることを大阪大学大学院医学研究科分子病態内科学講座の小守壽文助手らの研究チームが発見し、18日付の米国科学雑誌「ネイチャージェネティクス」に発表した。 骨芽細胞の分化、軟骨細胞の成熟や抑制を調節することで、骨粗鬆症や変形性関節症などの予防や治療に向けた研究の基礎になると期待している。これまで骨形成には、Runx2が必要な遺伝子だと分かっていたが、これだけでは不十分で、研究チームは、Runx2によって誘導されたり、調節されたり、働いたりする他の遺伝子を探索。今回、共に働く遺伝子で骨形成に必須な遺伝子として「Cbfb」を発見した。 この遺伝子の機能の確認は、「Cbfb」がないノックアウトマウスにより行った。従来、同遺伝子をノックアウトすると血液を作れなくなり死亡してしまっていたが、造血機能のみを機能させるマウスを作ることに成功し、同遺伝子の機能が骨形成に必須であることを決定した。(平成14年11月18日 薬事日報)

副作用少ない女性ホルモン化合物、米グループが開発

米アーカンソー医科大などの研究グループが、副作用の少ないホルモン状物質を使って骨を強くする動物実験に成功し、米科学誌サイエンス最新号に発表した。新しい骨粗しょう症の治療薬として期待できそうだ。 骨粗しょう症は、加齢などに伴い、骨の新陳代謝のバランスが崩れ、もろくなっていく病気。性ホルモンの分泌と関係があるとされ、閉経後の女性に多い。患者数は、日本だけで500万―1000万人と言われる。閉経後の治療薬として、主に女性ホルモン「エストロゲン」が用いられているが、乳がんや子宮がんなどの危険性が高まることが指摘されている。 研究チームは、生殖関係の臓器や器官などに影響を及ぼさないよう分子の一部を変えた化合物「エストレン」を合成、精巣や卵巣を除去したマウスに与え、何も与えなかったマウスと比較した。 その結果、何も与えなかったマウスは、骨の密度が6%、強度が23%も低下したのに対し、エストレンを与えたマウスでは骨の密度も強度も維持され、一部は、健康な個体よりも骨が強くなったという。(平成14年10月26日 読売新聞)

男子高校生の4割が骨折を体験

男子高校生の4割、女子中高生の2割が骨折の経験があることが、東京都の中高生約7000人を対象にした「骨粗鬆(そしょう)症財団」と雪印乳業の調査でわかった。同財団の折茂肇理事長は「学校内での子供の骨折は30年前に比べ倍増したといわれるが、日常生活での骨折も含めた実態調査はなかった。今回の骨折歴の多さは想像以上で驚いている」と話している。 調査は、都内の中高18校の6626人を対象に実施。超音波でかかとの骨量を調べるとともに、身長や体重、食生活や運動習慣についてアンケート調査を行った。 この結果、高校男子は「複数回ある」14・2%と、「1回だけある」23%を合わせて4割近い学生に骨折経験があった。また中学男子では同9・4%、17・2%だった。 女子の場合は、中高生とも「複数回」の骨折は5%を下回ったが、骨折経験者は約2割いた。原因はいずれもスポーツが半数前後を占め、次いで転倒、交通事故の順だった。なかには骨量が平均の6割ほどしかなく、ちょっとした運動などや転倒で骨折してしまう例もあったという。(平成14年8月6日 読売新聞)

ホルモン療法で乳がん発病率アップ

更年期症状の緩和のほか、骨粗しょう症や心筋梗塞の予防に効果があるホルモン補充療法だが、その効果と副作用を再調査するために実施されていた米国初の大規模臨床試験が、乳がん発病の危険性が高くなるとして中止されることが決まった。9日付の米紙ニューヨーク・タイムズが報じた。ホルモン補充療法は全米約600万人もの女性が受けているとされ、この中止は、がんのリスクを巡る議論に波紋を投げかけることになりそうだ。 同紙によると、中止されるのは同療法の効果を検証するため実施された臨床試験。更年期の女性1万6000人を対象に、エストロゲンと黄体ホルモンの薬を服用してもらっていた。 その結果、飲んで約5年経過した女性が、これを飲んでいない女性に比べ、ある種の乳がんの発病率が1万人当たり8人多いことが判明。心臓発作や脳卒中も、同7―8人の割合で、飲んでいない人より多く発生することがわかった。 この臨床試験の安全性をチェックしている専門家たちは、治療を続けることの危険性が、治療効果より大きくなったと判断。参加者に服薬中止を伝えることになった。当初は2005年まで続ける予定だった。 ただし、のぼせなどの更年期症状を緩和するために一定期間、服用するのは問題なく、エストロゲンだけを飲んでいる場合、これまで顕著な副作用の増加は認められないとしている。(平成14年7月10日 読売新聞)

インターフェロン、骨粗鬆症や歯周病に効果

ウイルス性肝炎の治療薬インターフェロンβ(ベータ)が、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)や慢性関節リウマチ、歯周病といった骨代謝の異常に効果があることを、東京大大学院医学系研究科の高柳広助手らのチームが突き止めた。マウス実験の成果だが、発症の機構などは人間と基本的に同じで、応用が期待される。18日発行の英科学誌ネイチャーに発表する。 骨の中には、骨を作る骨芽(こつが)細胞と、骨を破壊する破骨(はこつ)細胞があり、常に形成と破壊がバランス良く働いて、徐々に新しい骨に入れ替わっている。骨粗鬆症などの病気になるのは、ホルモンの欠乏などで破骨細胞だけが異常に増えるためだ。 高柳助手らは、破骨細胞が分化する機構をマウスで研究。インターフェロンβを体内で作る遺伝子を働かなくしたマウスでは、破骨細胞が過剰に増殖することがわかった。さらに骨粗鬆症のマウスにインターフェロンβを与えると、破骨細胞の増殖が抑えられ、病状が改善した。 同研究科の谷口維紹(ただつぐ)教授は「インターフェロンが骨の破壊を防ぐとは驚き。人間への応用は慎重な試験が必要だが、骨の病気の新たな治療法につながる」という。 国内の骨粗鬆症患者は1000万人とも言われる。慢性関節リウマチや歯周病に悩む人は各30万人、126万人と推計される。(平成14年4月18日  読売新聞)