肝疾患について



酒かす成分、肝臓保護

かす汁など冬の家庭料理で親しまれている酒かすに含まれる成分が、肝臓を保護する効果があるという研究結果を、月桂冠総合研究所がマウスを使った実験で明らかにした。酒かすをそのまま食べただけでは効果は限定的とみられるが、酒かすの利用法で選択肢が広がるとして、月桂冠は今後、成分を機能性食品などとして商品化することを検討するとしている。強い酸化力をもつ「活性酸素」が体内で増えると、臓器が傷つくなどして、様々な病気を引き起こす。特に肝臓は血液にのって活性酸素や過酸化脂質が集まりやすく、酸化を防ぐことが重要だと考えられている。同研究所は、日本酒を製造する過程で副産物としてできる酒かすの約6割を占めるたんぱく質に注目。これを酵素で分解してペプチドと呼ばれる断片にし、その働きを調べたところ、肝臓内で活性酸素を防御する働きがあるグルタチオンという物質と同様の酸化抑制作用があることを確認した。さらに、マウスの腹部に肝障害を引き起こす薬剤を一定期間、注射し続け、その間、グループごとに様々な餌をやる実験を実施。その結果、肝障害の指標となるGOTとGPTの数値について、普通の餌を食べさせた場合を100とすると、断片の入った餌をやったグループでは、それぞれ39と26だった。一方、酒かすをそのまま食べさせた場合は、普通の餌より両方の数値とも低かったが、断片入りの餌ほどには効果が出なかった。このことから、酒かすに含まれる成分に肝機能保護や肝障害予防の効果があると結論づけた。(平成22年6月4日 読売新聞)

B型肝炎、父子感染にも注意 

父親からB型肝炎に感染する乳幼児がいることが、大阪大などの調査でわかり、専門家が注意を呼びかけている。母子感染に比べ、父子感染はあまり知られておらず、食べ物の口移しなどで知らぬ間に感染しているようだ。祖父母や兄弟を介したとみられる例もあり、専門家は「家族で検査を受けて感染者がいれば、ワクチンで乳幼児への感染を防いで」と呼びかけている。 B型肝炎は血液や体液を通じて感染する。唾液中のウイルスは少ないが、食べ物の口移しなどを通じて、子どもに感染する可能性がある。大人が感染しても一過性で終わることが多いが、乳幼児がかかると、慢性化して肝硬変や肝がんに進みかねない。(平成22年年5月27日 朝日新聞)

大豆、女性は食べ過ぎないで

大豆製品をたくさん食べる女性は、あまり食べない女性に比べて肝臓がんになる危険性が3〜4倍に高まることが、厚生労働省の研究班の大規模調査で分かった。大豆に含まれるイソフラボンは、乳がんのリスクを減らすことが知られており、研究班は「食事を通して適度に取るのがいい」としている。研究班は93年から05年まで、6府県の男女約2万人(開始時40〜69歳)の健康状態を追跡した。うち101人(男性69人、女性32人)が肝臓がんになった。アンケートで大豆食品をどれぐらい食べるかを尋ね、イソフラボンの2成分の摂取量と発症との関連を調べた。その結果、摂取量とリスクの関連が明らかになったのは女性だけで、摂取量が最も多い群(1日あたり豆腐80グラム以上、納豆3分の2パック以上)が肝臓がんになるリスクは、最も少ない群(同豆腐40グラム未満、納豆3分の1パック未満)のリスクの約3.2〜3.9倍だった。研究班の倉橋典絵・国立がんセンター予防研究部研究員によると、イソフラボンの分子構造は、女性ホルモンのエストロゲンに似ている。エストロゲンは乳がんのリスクを高める半面、肝臓がんには予防作用があり、イソフラボンの過剰摂取がこうした作用を妨げると考えられる。倉橋研究員は「肝臓がんの最大のリスク要因はB型、C型肝炎ウイルス。女性の場合、まず感染の有無を調べ、感染が分かれば大豆製品の取りすぎに注意してほしい。感染していなくても過度の取りすぎには注意が必要」と指摘する。(平成21年3月10日 毎日新聞)

肝がんリスク、肥満は2倍超 

厚生労働省研究班は高血糖や肥満などメタボリック症候群の関連要因を抱えている人について、肝臓がんにかかるリスクが2倍以上に高まるとの大規模疫学調査の結果を発表した。肝がんは大半が肝炎ウイルスに感染して発症するが、生活習慣に気をつければ発症を回避できる可能性があるという。井上真奈美・国立がんセンター室長が、40−69歳の男女1万7590人を13年間追跡調査。 期間中に102人が肝がんにかかった。調査開始時点の健診結果をもとに、血圧や血糖値、中性脂肪、体格指数(BMI)などのメタボリック関連要因が、肝がんリスクと関連するか調べた。高血糖(1デシリットル当たり140ミリグラム以上、または空腹時で同100ミリグラム以上)のグループは、そうでないグループと比較し、肝がんになるリスクが1.75倍になった。また肥満度を示すBMIが25以上の人は、そうでない人と比べて肝がんリスクが2.22倍になった。(平成21年3月10日 日本経済新聞)

野生イノシシ肉がE型肝炎感染源に

E型肝炎の感染源の一つが野生イノシシ肉であることが、国内で初めて遺伝子レベルで確認されていたことが分かった。全国的にE型肝炎ウイルス(HEV)感染者が急増するなか、野生イノシシの5〜10%がHEVを保有している可能性があるとされ、厚生労働省は「野生動物の肉を食べる際は十分に火を通すなど注意してほしい」と呼びかけている。HEVの感染源が遺伝子レベルで確認されたのは、05年1月に福岡県筑豊地方で夫が捕ってきた野生イノシシ肉を焼き肉にして食べた当時50代の女性。同年3月、倦怠感や食欲不振を訴えて病院に行ったところ、E型肝炎に感染した疑いがあると診断された。自宅の冷凍庫にイノシシ肉が保管してあったことから、国立感染症研究所が肉と女性の血清から検出したHEVの塩基配列を比較。配列がほぼ一致し、イノシシ肉が感染源と特定された。十分に火を通していなかったなどの理由が考えられるという。E型肝炎は従来、開発途上国を旅行した人が水などから感染するケースが多いとされてきたが、02年以降、国内での感染が疑われるケースが急増している。朝日新聞社が各都道府県などに尋ねたところ、99〜01年の3年間で全国で3件しか発生していなかったE型肝炎は02年約20件、03年約30件、06年には約70件と大幅に増加。このうち国内での感染が疑われるケースは02〜04年が20件前後、06年は44件になった。 地域的には北海道が最も多く71件。ついで東京が23件、愛知16件、神奈川13件と続いた。一方、秋田、石川、岐阜、島根、香川などでは感染の報告はなく、青森では今年2月に1件報告があった。福岡県保健環境研究所は06、07年度の2年間、県猟友会の協力を得て野生イノシシなどを対象にHEV遺伝子について調査した。07年度分は検査中だが、06年度分はイノシシ77頭のうち1割強にあたる9頭からHEV遺伝子が検出された。厚労省によると、各地の同様の調査では地域差はあるものの、野生イノシシの5〜10%からHEV遺伝子が検出されているという。イノシシ以外にも03年に兵庫県で冷凍したシカの生肉を食べた4人がHEVに感染したほか、北海道では市販の豚レバーからHEV遺伝子が検出されたケースもあるという。 感染の報告数が増えたのは、高感度なHEV遺伝子の検出法などが広まったことが背景にあるとされる。厚労省食品安全部監視安全課は(1)野生動物の肉の生食は避け、しっかり火を通す (2)生肉に触れたまな板やはしは熱湯消毒する――ことなどを呼びかけている。〈E型肝炎〉 HEVに汚染された水や食べ物から経口感染し、吐き気や食欲不振などの症状が出る。通常は一過性で慢性化しないが、まれに劇症化し死亡することがある。約100年前に英国から輸入された豚と一緒に国内に入ってきた可能性があるとの研究結果があり、シカ肉や豚レバーによる感染例や、輸血で感染した例も報告されている。加熱すると感染性を失う。(平成20年4月7日 朝日新聞)

肝硬変、原因細胞を抑制 札幌医大が「新薬」

肝硬変発症の原因となる異常細胞の働きを抑える方法を、札幌医大の新津洋司郎教授の研究チームが初めて開発した。国内には数十万人の肝硬変患者がいるが、有効な治療法はない。抜本的な治療につながる可能性があり、研究チームは近く臨床試験に着手する。肝臓内の血管に張り付いている正常な星細胞は、ウイルス感染などが原因で活性化星細胞(HSC)と呼ばれる異常細胞に変化する。その後、 HSCはコラーゲンを生成し、肝細胞を線維化させ、肝硬変を起こす。研究チームは、HSCにあり、コラーゲン生成に必須のたんぱく質に着目。コラーゲンの分泌量を減らすため、このたんぱく質の働きを抑える機能を持った2本鎖RNA(リボ核酸)「siRNA」を含む薬を合成し、薬にはHSCが好んで取り込むビタミンAを加えた。肝硬変を起こさせたラットを使った実験では、薬を投与しなかったラットは1カ月余りですべて死んだのに対し、投与したラットは約70日後には正常の肝臓並みに機能が回復し100%生存。コラーゲンを失ったHSCが死滅したとみられる。新津教授は「HSCが原因で発症する肺線維症や心筋梗塞などでも、同様の方法で病気の進行を抑えられた。再生医療を含め、幅広い応用が期待できる」と話している。(平成20年3月31日 毎日新聞)

胆石の病歴、胆道がんになる確率2.5倍

胆石を患ったことがある人は、そうでない人に比べて胆道がんになる危険性が2〜3倍に高まることが、厚生労働省の研究班の大規模調査で分かった。また、胆道がんの一種の肝外胆管がんは、体格指数(BMI)が27以上の人は、23未満の人に比べて1.8倍も発症の恐れが高いなど、太っているほど危険性が高まることも分かった。BMIは体重を身長で2回割り算して算出する。調査は、当初40〜69歳だった秋田、茨城県などの男女10万人を10年以上にわたり追跡調査。この間に235人が胆道がんと診断され、内訳は胆のうがんが93人、肝外胆管がんが142人だった。こうした患者と、胆石の病歴、肥満などとの関連を調べたところ、胆石の病歴を持つ人は、2.5倍ほど胆道がんになる確率が高く、特に女性では3.2倍高まることが判明。胆のうがんは3.1倍、肝外胆管がんは2.1倍、それぞれ危険性が高まっていた。胆石が胆道がんになる危険性を高める一因だという指摘は以前からあったが、大規模調査で確かめたのは初めて。(平成20年1月11日 読売新聞)

B型肝炎の父子感染拡大、育児参加で「触れ合い増」原因?

肝臓がんなどを招く恐れがある乳幼児期のB型肝炎ウイルス(HBV)について、母子間の感染が減る一方、父子感染の割合が高まっている。育児に父親が参加する機会が増えていることが背景とみられ、乳児期のワクチン接種など早急な対策が求められる。B型肝炎は血液や体液、唾液を介して感染し、ウイルスを持つ持続感染者(キャリア)が国内で100万人以上いる。成人の場合、感染しても多くは自然に治るが、3歳未満で感染すると、一部がキャリアになる。このため母親がキャリアの場合、1986年以降、生後すぐに子供にワクチン接種が行われ、母子感染は10分の1以下に激減した。一方、父子感染の割合は高まってきた。済生会横浜市東部病院こどもセンターの藤澤知雄部長らが、母子感染以外でキャリアとなり、防衛医大病院などを受診した子供を対象に、家族の血液検査などを実施。父子感染が原因だったのは、85年までの10年間で感染者20人のうち8人(40%)だったが、86年から昨年までは15人中11人(73%)と増えた。母親は妊娠時にB型肝炎検査を受けるが、父親は調べないため感染がわからず、子供へのワクチン接種も行われない。 藤澤部長は「父子の接触が濃厚になり、キスや食物の口移し、同じスプーンを使うことなどで感染が起きているのではないか」とみる。母子感染は胎内感染もあり、一昨年報告された全国25医療機関への調査では、小児の感染原因の3分の2を占めたが、それまであまり報告されていなかった父子感染も1割あった。父親になる20〜40歳代の0.6%はHBVキャリアとされる。(平成19年9月26日 読売新聞)

鉄分過剰摂取はC型肝炎に悪影響

ウコン、クロレラなどの健康食品の一部に、表示のないまま平均摂取量を上回る鉄が含まれており、摂取していたC型慢性肝炎患者の病状改善を妨げるケースのあることが、垣内雅彦三重大准教授(肝臓内科)らの研究で分かった。鉄は健康なら過剰摂取の心配はない。だが、国内に約200万人いるC型肝炎患者の場合、肝臓に蓄積する恐れが高い。過剰な鉄は、活性酸素を作り、肝細胞を壊したり、がん化を進めたりする。垣内准教授らは、同大付属病院で治療中のC型肝炎患者が日ごろ摂取している健康食品67品について鉄含有量を調べた。その結果、クロレラ商品(錠剤)の一つでは、100グラム中138・3ミリ・グラムで、1日当たりの摂取量を計算すると11・1ミリ・グラムとなり、成人男性の1日の平均摂取量の8・1ミリ・グラムを上回った。ケール商品の一つで100グラム中127・2ミリ・グラム、マルチビタミン剤で同118・7ミリ・グラムというケースがあり、秋ウコンのある商品でも同22・4ミリ・グラムという結果が出た。垣内准教授らが目標に掲げるC型肝炎患者の鉄摂取量は「1日6ミリ・グラム以下」。健康食品11品で鉄を1日推計8・5ミリ・グラム取っていた患者は、健康食品をやめただけで肝機能の数値が改善したという。平成19年6月24日 読売新聞)

肝臓がん、進行の仕組み解明

C型肝炎ウイルス(HCV)が引き起こした慢性肝炎が肝臓がんに進行する仕組みを、人やマウスの細胞を用いた実験で京都大らのグループが解明した。HCVに感染することにより、本来は免疫細胞にしか存在しない遺伝子編集酵素の一種「AID」が肝細胞に発現し、がんにかかわる遺伝子異常を継続的に引き起こすことを突き止めた。国内のHCV感染者は約200万人といわれる。HCVが引き起こす慢性肝炎は肝硬変を経て、肝がんに進行することが分かっており、肝がんの約4分の3はHCV感染が原因。HCVが未発見で対策が不十分だった時代に感染した人が、10〜40年後に発がんする例が多い。グループが行った培養細胞の実験などから、HCVに感染すると肝細胞内に発現したAIDにより、がんに関連するさまざまな遺伝子に変異が生じることが分かった。(平成19年4月12日 毎日新聞)

肝炎治療もオーダーメード

感染者が300万人に上るといわれるB型、C型肝炎対策として、厚生労働省は来年度から、患者一人ひとりの遺伝子などを分析し、それに基づいた治療法を探る「オーダーメード治療」に取り組む。同じ症状なのに治療薬が効く人と効かない人がいたり、強い副作用が出たりする仕組みを解明し、新薬の開発などにもつなげるのが狙いだ。ウイルス感染が原因のB型、C型肝炎の治療では、インターフェロンなどの薬でウイルスを駆除したり、治療薬で肝がんの発症を抑えたりするのが主流。しかし、効果は個人差があり、現在の治療で完治できるのはC型で約6割、B型で約4割といわれる。発熱や貧血などの副作用もあり、薬が使えないケースも出ている。このため、同省は来年度から3年計画で、「オーダーメード治療」に着手。 肝炎治療に熱心な医療機関の協力を得て患者の血液を採取し、遺伝子情報などを収集する。さらに、ウイルスのタイプも解析し、09年度をめどに、病状などの臨床情報と合わせて少なくとも数百人規模の統一的なデータベースをつくる。 遺伝子のどの部分が治療薬の効果や副作用などに影響を与えているかなどを調べる。その原因が分かれば、新薬開発の研究にも役立つという。オーダーメード治療は、患者の遺伝子情報から、体質や病状などに応じた医薬品や処方を選ぶ手法。治療効果が高まるほか、無駄な医薬品の使用が減るため、副作用だけでなく医療費の削減効果もあるという。がん治療などの分野が先行している。 肝炎は「国民病」ともいわれ、同省の推定では、発症していない感染者はC型で150万〜190万人、B型で110万〜140万人。加えて、肝がんや肝硬変などの患者はC型で約52万4000人、B型で約9万7000人(いずれも02年10月時点)。潜伏期間が数十年に及ぶケースもあり、感染を知らない人が多いことが問題になっている。 国立感染症研究所の脇田隆字・ウイルス第二部長は「ウイルスのデータ収集や研究は行われていたが、患者側のデータの蓄積はなかった。患者の遺伝子とウイルスの情報、副作用や病状変化などの臨床情報を積み上げて活用できれば、きめ細かい治療ができるようになる」と期待している。(平成18年10月5日 朝日新聞)

急増の慢性閉塞性肺疾患、ビタミンC不足と喫煙で発症

東京都老人総合研究所と順天堂大学の研究チームは13日、高齢者に多い肺の病気「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」が、ビタミンC不足と喫煙で起こると、発表した。これまでもたばこの吸い過ぎが原因の一つと考えられていたが、ネズミの実験で確認したのは初めて。COPDは初期のころは息苦しさが目立ち、進行すると呼吸困難となって死に至る。最近患者が急増しており、今回の実験結果は予防法の確立に役立ちそうだ。老人研の石神昭人主任研究員と順大医学部の瀬山邦明助教授らのチームの成果で、米国胸部疾患学会雑誌に報告した。ネズミは本来ビタミンCを体内でつくれるが、研究チームはビタミンCを作れないようにしたネズミに、たばこの煙を吸わせた。肺を調べたところ、約2カ月でCOPDを発症した。煙を吸わせなかったネズミは6カ月で発症した。(平成18年9月16日 日本経済新聞)

肝がん患者 生存期間2倍に

肝臓がんの治療で、病巣部への強力な放射線の集中照射と抗がん剤投与を組み合わせることで、患者の生存期間を大幅に延ばすことができることを米ミシガン大学の研究チームが確認し、米医学誌に発表した。研究チームは、手術できない肝臓がん患者128人に対し、カテーテル(細い管)で肝臓に直接、抗がん剤を投与。同時に、がん細胞に放射線を集中させるため、様々な角度から照射する「三次元照射」という放射線治療を行った。照射は1日2回、2週間続けた。その結果、患者の平均の生存期間は15・8か月と、従来の進行がん患者の平均8〜9か月に比べ、向上した。副作用がみられたのは3分の1以下だった。多くの血管が集まる肝臓は、放射線に敏感で、重い副作用が出るなど放射線治療が難しいとされてきた。(平成17年12月5日読売新聞)

C型肝炎ウイルス増殖抑制、耐性出にくい薬剤開発に期待

C型肝炎ウイルス(HCV)に感染した細胞側の働きを抑えてウイルス増殖を止めることに、中外製薬創薬研究二部の研究チームが成功した。ウイルスを直接攻撃しないため、耐性を持つウイルスが出にくい薬剤の開発につなげることが期待できるという。17日、米科学誌ネイチャー・ケミカルバイオロジー(電子版)に発表する。 HCVが細胞内でどう増殖するかは解明されていない。HCVは細胞内に入ると特定の脂質と結合して増殖の「足場」をつくるが、須藤さんらはこの脂質でHCVと結合する部分を特定。この部分が欠けているとHCVが増殖できないことがわかった。 この部分が合成されないような物質を見つけ出し、人の肝細胞を使って試験管内で実験したところ、HCVの遺伝子の複製を抑える効果を確認できた。 C型肝炎ウイルスの国内感染者は100万〜200万人とされる。須藤さんは「ウイルスが取り付く細胞側の仕組みを標的にすることができれば、より効果の高い薬の開発が進むのではないか」と話している。 東京都神経科学総合研究所は「HCVは変異が多いのが問題点で、細胞にあるものを標的にできれば、耐性が出ないような薬ができる可能性がある。今後は動物実験などで効果だけでなく、細胞への影響がないかなどの副作用を確かめる必要がある」と話している。(平成17年10月17日 朝日新聞)

肝がんへの抗がん剤併用療法

国立がんセンター中央病院は、転移のある肝臓がんに対して抗がん剤の併用療法が有効なことを確かめた。患者の1年後の生存率は43.5%だった。特に、肝障害の軽い患者や、おなかに組織液がたまる腹水のない患者で効果が高かった。患者の数を増やして長期的な効果を調べるほか、治療効果の予測方法の開発などに取り組む。肝臓がんはC型慢性肝炎などが原因で発病することが多く、国内の死亡者数は年間約3万5000人。大半は肝細胞が悪性化した肝細胞がん。肺やリンパ節への転移のある肝臓がんは手術による治療が難しい。また、抗がん剤を使った有効な治療法もない。 現在、複数の抗がん剤を組み合わせた治療法が試されており、研究グループは「5FU」、「ミトキサントロン」、「シスプラチン」の3種類の抗がん剤の併用療法を試みた。肝臓がんの患者82人の治療後の経過を調べた結果、治療後の平均生存期間は11.2カ月で、1年生存率は43.5%だった。単独の抗がん剤を使った場合の1年生存率は20%以下という。(平成17年10月10日 日経産業新聞)

劇症肝炎患者に肝細胞増殖因子

京都大学医学部付属病院は24日、劇症肝炎患者を対象とする臨床試験(治験)を始めると発表した。臓器・組織の再生作用を持つ肝細胞増殖因子(HGF)と呼ぶたんぱく質を16人の患者に投与し、肝機能の回復を目指す。2007年6月まで実施し、安全性や治療効果を確かめる。劇症肝炎はウイルス感染などが原因で肝臓の細胞が急激に壊れる病気。老廃物が浄化できず、血液を固める成分が作れなくなる。意識障害も起きる。正常な肝臓を移植する以外に有効な治療法がない。製薬会社による治療薬の開発は進んでおらず、京大は医師主導で治験を実施することを決めた。(平成17年8月24日 日本経済新聞)

C型肝炎無料検査を40歳未満にも拡大

厚生労働省は27日、保健所で無料で受けられるC型肝炎ウイルス検査の対象者を来年度にも40歳未満に広げることを決めた。 血液製剤「フィブリノゲン」によるウイルス感染問題で、40歳未満でも感染する危険があることから、これまで40歳以上としていた年齢制限を撤廃することにした。 同省は専門家会議が同日、C型肝炎対策の報告書をまとめたのを受け、検診費用などを来年度予算の概算要求に盛り込む方針。C型肝炎はウイルスの感染によって起こり、患者は国内で150万人以上いるとされる。 治療せずに放置すると、10―30年で肝硬変や肝臓がんになる可能性が高い。 体内のウイルスが少ないほど治療効果が高く、感染の早期発見が重要となる。(平成17年7月27日 日本経済新聞)

米で肝臓がん診断薬

試薬メーカーの和光純薬工業(大阪市、池添太社長)は20日(日本時間21日)、米国で肝臓がんの診断薬「AFP―L3%」と解析機器「LiBASys」を発売した。米国で初の肝臓がん診断薬となる。血液中の特定の物質を測定することで、画像診断に比べ肝臓がんを正確かつ早期に発見できる。米の診断薬市場は最大200億円まで拡大する可能性があるという。 肝臓がんを発症すると分子構造が変わる物質が発見されており、同診断薬はその物質の変化量を調べる。 血液を機器にかけると診断薬と混ざって反応する。(平成17年6月21日 日経産業新聞

C型肝炎ウイルス、世界初の培養に成功 

ヒトの培養細胞の中でC型肝炎ウイルスを作り出すことに、東京都神経科学総合研究所などの研究チームが世界で初めて成功した。同ウイルスは増える力が弱いため生体の外での培養は実現しておらず、ワクチンも開発されていない。 C型肝炎の患者は全国に200万人といわれ、ウイルスが作られる仕組みが明らかになれば、新しい抗ウイルス薬やワクチン開発に結びつくと期待される。 米科学誌「ネイチャーメディシン」電子版に発表された。C型肝炎は数十年かけて慢性肝炎から肝硬変、肝臓がんに移行することが知られる。インターフェロンなどが治療に使われているが、患者の半数は効果が十分でないとされている。C型肝炎のウイルスは複数確認されているが、ウイルスの遺伝子は複製力が弱く、生体外でウイルスは増えないと考えられていた。しかし、同研究所の脇田隆字副参事研究員らは、劇症肝炎を起こすウイルスは増える力が強いことに着目。劇症肝炎患者の血液から採取したウイルスを使い、培養したヒトの肝細胞に感染させウイルスを増やすことに成功した。脇田研究員は「ウイルスがどうやってできるかが解明できれば、それを抑える薬を開発できるし、ウイルスを使ってワクチンを作ることも考えられるのではないか」と話している。(平成17年6月14日 毎日新聞)

B型肝炎が広がる恐れ

欧州の医学会が、B型肝炎に対する関心を強めている。先ごろ、パリで開催された欧州肝臓学会(EASL、4月13〜17日開催)で、C型肝炎と並んで大きな話題となった。日本で一般的に知られているのはC型肝炎。C型肝炎ウイルスに感染すると慢性化しやすく、肝硬変や肝臓ガンといった死亡率の高い病気に進行することが多い深刻な病気だ。 これに対してB型肝炎は、ウイルスに感染しても慢性化する率がC型よりかなり低く、大きな話題になっていなかった。これまで欧州では、日本などに比べてB型肝炎ウイルスの感染者は少なかったが、「B型肝炎感染者の多い地域からの移民などが増え、感染率の低い欧州でも感染のリスクが高まっている」と、トルコのアンカラ大学メディカルスクールのチャン・ユルデイディン教授は指摘する。B型肝炎の原因はウイルスで、感染者の血液や体液、だ液などと接触してうつる。かつては、母子感染や医療行為(輸血や注射)で感染が広がった。母子感染を防ぐ治療や血液のチェック体制が整った現在では、ほとんど問題ないという。いま問題になっているのは、感染者が多い地域の人が、感染していること(キャリア)を自覚しないまま、性行為などで感染を広げること。ユルデイディン教授によると、「B型肝炎の感染者は全世界で20億人以上に上る」という。これは全世界で、3人に1人が感染していることになる。感染者は、中進国や開発途上国に多い。例えば、中国は1億2370万人、インドは3000万〜5000万人、インドネシアは1330万人など、アジア地域などに特に多いと推定されている。「B型肝炎はC型肝炎に比べてあまり注目されてこなかったが、B型の感染者は全世界で20億人、毎年1000万〜3000万人が感染する。これに対してC型肝炎感染者は1億7000万人で、毎年200万〜400万人が感染する。今後はB型肝炎にも注目して、感染を広げない対策をとっていくことが重要だ」(ユルデイディン教授)。なお、ユルデイディン教授は、米国の大手製薬会社ブリストル・マイヤーズ・スクイブ社主催のメディアブリーフィングでこの疫学研究の成果を説明した。(平成17年5月13日 medwave)

C型肝炎の母子感染12% 危険性ある妊婦は検査を

C型肝炎ウイルスに感染した妊婦から生まれた赤ちゃん460人のうち、55人(12%)がウイルス感染していたとする調査結果を、厚生労働省研究班の白木和夫聖路加看護大教授が12日、同省の専門家会議で報告した。 研究班は調査結果を基に、輸血、手術歴や、家族に肝臓疾患を持つ人がいるなど、感染リスクがある妊婦は、希望により検査を実施することなどを定めた管理指導指針を作った。 調査は、福島県立医大や独協医大、鳥取大などで実施。 母親から感染しても約30%は3歳ごろまでに血中のウイルスが自然消失することも判明、指導指針で「原則として3歳までは治療を行わない」とした。(平成17年4月12日 中国新聞2)」

C型肝炎・リウマチ薬剤、自己注射可能に 

中央社会保険医療協議会の診療報酬基本問題小委員会は30日、慢性のC型肝炎患者と既存治療では効果がみられない関節リウマチ患者が自宅などで自分で注射することを認めることを決めた。対象の薬剤は、C型肝炎がインターフェロンアルファ製剤、リウマチがエタネルセプト製剤。週に2、3回の投与が必要なため、患者の利便性を考慮して認められた。 両製剤の利用者は、それぞれ約3万人と約1万5000人と推定される。自己注射を希望する場合でも、副作用の危険性があるので2週間に1度は医師の診察を受けなければならない。(平成17年3月31日 朝日新聞)

C型肝炎治療は新薬ペグイントロンが柱

国内で100万〜200万人とされるC型肝炎ウイルス(HCV)感染者への治療について厚生労働省の研究班は、昨年10月に認可された新薬「ペグインターフェロン(商品名ペグイントロン)」を柱に据える指針をまとめた。5日の報告会で発表した。臨床試験の結果からは、2人に1人は完治が期待できるとされている。 ペグイントロンはインターフェロンを改良して作られた。「B型及びC型肝炎治療の標準化に関する研究班」(班長=熊田博光・虎の門病院副院長)は新指針で、国内患者の大半を占める最も治療の難しいタイプのC型肝炎に対して、ペグイントロンと抗ウイルス薬リバビリンの投与を48週間続ける併用療法を第1選択とした。公的な医療保険が使える。 発売元のシェリング・プラウが実施した国内での臨床試験成績によると、薬の効きにくい型のウイルスでその量も多い「1型高ウイルス量」の患者でも、治療開始から1年後にウイルスが体内で検出できなくなる完治率が約48%。従来のインターフェロンとリバビリンの併用療法の約19%を大きく上回った。発熱や頭痛、抑うつなどの副作用があるとされている。 C型肝炎は国内の肝硬変・肝がんの最大原因で、不衛生な医療行為や輸血などで感染が広がった。厚労省は昨年、ウイルスの混入した血液製剤「フィブリノゲン」が過去に納入された可能性のある医療機関を公表して検査受診を呼びかける一方、すでに世界で始まっていたペグイントロン・リバビリン併用療法を8カ月のスピード審査で認可していた。 C型肝炎のインターフェロン療法は92年に始まり、当初の完治率は約2%だった。今回の指針では、これまでの治療が効かなかった人への「再投与」も、ペグイントロン・リバビリン併用療法を第1選択とした。一度は完治をあきらめた多くの患者にとっても朗報になる。

〈C型肝炎〉 C型肝炎ウイルス(HCV)による感染が原因で肝細胞が破壊される病気。年齢とともに発症リスクが高まり、感染から20〜30年で約3割の人が肝硬変になり、30〜35年で肝がんになるとされる。肝がん患者の8割はHCVに感染している。輸血や汚染血液を使った血液製剤を介して感染する。手術の際の大量出血を止めたりする際に使われた血液製剤フィブリノゲンを製造する際、94年まで、ウイルスの混入防止対策が十分にとられておらず、感染者が相次ぎ、薬害が問題化した。

〈ペグイントロン〉 インターフェロンにペグと呼ばれる合成高分子が結合させてある。発売元のシェリング・プラウによると、ペグの働きで体外に排出されにくくなり、治療効果が持続するという。注射回数が従来の3分の1の週1回ですむほか、治療中断に至るほどの副作用も減って、従来のインターフェロン・リバビリン併用療法の倍に当たる約1年の長期治療が可能になった。(平成17年3月5日 朝日新聞)

コーヒー党、肝臓がん少なく

コーヒーを1日に1杯以上飲む人が肝臓がんになる危険性は、全く飲まない人の6割程度。東北大の辻一郎教授(公衆衛生学)らが21日までに、約6万1000人の追跡調査結果をまとめた。 辻教授によると、コーヒーに含まれるどんな物質が作用するかはよく分かっていないが、肝硬変の発症リスクを低下させる可能性があるほか、動物実験では成分のクロロゲン酸が肝臓がんの発生を抑制したとする報告もあるという。1984―97年に、40歳以上の男女を7―9年間追跡調査。計約6万1000人のうち、調査期間中に新たにがんになったのは117人だった。年齢や性別などの要因を考慮して解析した結果、全く飲まない人の危険度を「1」とした場合、1日平均1杯以上飲む人は0.58、1杯未満の人は0.71だった。がん以外の肝臓疾患を経験した人や60歳以上の人、過去に喫煙経験がある人では、こうした傾向が特に強かった。辻教授は「年齢や性別、飲酒状況などで分けて解析しても傾向は変わらなかった。ただし、コーヒーに砂糖などを入れすぎると体に良くないので注意してほしい」としている。(平成17年1月21日 日本経済新聞)

C型肝炎、乳成分が効果

インターフェロンなどの治療薬が効きにくいC型肝炎患者に、母乳や牛乳に含まれるたんぱく質「ラクトフェリン」の錠剤を投与したところ、患者の4人に1人はウイルスが消える効果のあることが、横浜市立大学市民総合医療センターの田中克明教授らの臨床試験でわかった。 ラクトフェリンは、食品としては粉ミルクなどに加えられている物質。田中教授らは、インターフェロンが効きにくいウイルス(1b型)に感染したC型慢性肝炎患者40人の協力を得て、臨床試験を行った。一つのグループには、治療薬のインターフェロンと抗ウイルス薬リバビリンに加えて、ラクトフェリン錠剤を投与、残りの患者には二つの治療薬と、ラクトフェリンの入らない偽薬を投与した。半年後に治療薬の投与をやめ、さらに半年経過した時点で効果を調べたところ、ラクトフェリン錠剤をのんだ患者の26%はウイルスが消失し、偽薬をのんだ患者のウイルス消失率(約15%)より1・7倍高かった。また肝機能改善にも大きな効果が見られたという。 ラクトフェリンは母乳100ミリ・リットル中に約0・1グラム、初乳には同1グラム含まれる。感染防御物質として注目され、最近は抗がん作用も報告されている。(平成17年1月14日 読売新聞)

B型肝炎ウイルスの検査すり抜け、輸血感染

B型肝炎ウイルスに感染した献血者の血液が献血時に行われる血液のウイルス検査をすり抜け、輸血を受けた6人がウイルス感染した問題で、日本赤十字社のその後の調査で、さらに1人が輸血感染していたことがわかった。 21日午前に開かれた厚生労働省の薬事・食品衛生審議会血液事業部会に報告した。 日赤によると、昨年10月7日、医療機関から、輸血を受けた血液疾患の50歳代男性が、輸血後にB型肝炎を発症したとの報告を受けた。他の輸血患者を調べたところ、5人が輸血感染が疑われていた。その後の調査で、この献血者の血液を3年前に輸血された患者の感染も判明した。 日赤は、献血された血液は、高精度のB型肝炎ウイルス検査を実施。ウイルスが検出されたものは輸血から除外しているが、B型肝炎は、極めて低濃度のウイルスを持っている感染者もおり、現在の対策でもB型肝炎ウイルスがすり抜ける可能性が指摘されている。(平成17年1月21日 読売新聞)

肝障害3年間で95人

いわゆる健康食品の摂取後に肝障害を起こした患者が2001−03年で95人いたとする全国調査の結果を、厚生労働省研究班(主任研究者・各務伸一愛知医大教授)がまとめ、東京で開かれた日本肝臓学会東部会で10日、発表した。研究班は、食品や成分の毒性というより、アレルギー反応や肝臓の薬物代謝機能の個人差が原因の「薬物性肝障害」が幅広い健康食品で起きている可能性があると指摘。発表した石川哲也愛知医大講師は「何らかの病気があるなど健康に不安を持つ人は、安易に健康食品に頼らず、摂取前に医師に相談してほしい」と訴えている。研究班は、同学会の評議員(718人)のいる医療施設を対象に薬物性肝障害についてアンケート。回答した235施設のうち189施設が「診断歴あり」とし、このうち健康食品が原因と疑われた患者は95人だった。(平成16年12月10日 中国新聞)

HIV感染者、2割がC型肝炎にも感染

日本国内のエイズウイルス(HIV)感染者の5人に1人がC型肝炎ウイルス(HCV)にも感染し、特に血液製剤による薬害エイズの被害者はほぼ全員が重複感染していることが28日までに、厚生労働省研究班の全国調査で分かった。 治療法の進歩でエイズ発症を抑えられるようになった結果、薬害被害者の死亡原因の半数以上を肝硬変などの肝疾患が占めるとのデータもある。研究班主任の小池和彦・東大医学部教授は「重複感染者は肝炎が急速に悪化する。HIVだけ注目して肝炎を軽視することなく、治療法を全国に周知して対策を急ぐべきだ」と警告している。調査は1月、全国のエイズ拠点病院を対象に実施。 2003年に受診したHIV感染者について尋ね、176施設(回収率48%)から4877人分の回答があった。HIVの感染ルート別にHCVとの重複感染率を尋ねた結果、薬害被害者811人中786人(96.9%)が、HCV感染を示す抗体検査で陽性だった。 HIV感染者全体でも19.2%に上った。(平成16年11月29日 日本経済新聞)

E型肝炎「豚肉」

北海道北見市の焼き肉店が感染源と疑われるE型肝炎の集団感染を受け、厚生労働省は28日、各都道府県に対して、豚の生肉と加熱不十分な肉の摂取を避けることを飲食店や消費者などに周知徹底するよう要請することを決めた。今回の集団感染では、豚レバーなどを食べてE型肝炎ウイルスに感染したとみられる人が献血し、輸血を受けた別の人に2次感染して広がる可能性が示された。この事態を重く受け止めた厚労省は、各自治体の食品衛生指導は、E型肝炎の感染防止対策が徹底していないと判断した。集団感染した6人の感染経路や焼き肉店店員の健康状態、保管肉の分析などは現在、北海道北見保健所が調査を進めている。厚労省はきょう29日にも、道から調査結果の報告を受け、都道府県への要請内容の詳細を詰めるとしている。(平成16年11月29日 読売新聞)

野生イノシシからE型肝炎ウイルス

厚生労働省研究班が兵庫県など4県で捕獲したイノシシを調べたところ、肝臓などからE型肝炎ウイルスの遺伝子が検出された。 遺伝子は型が、国内のE型肝炎患者から検出されたものとよく似ており、イノシシから人間に感染している可能性を強く示唆する結果となっている。 厚労省は「ウイルスは加熱すれば死ぬ。よく調理して食べてほしい」と呼びかけている。分析したのは国立感染症研究所の宮村達男ウイルス第2部長と、東芝病院の三代俊治研究部長を班長とする2つの研究班。両研究班は昨年11月から今年4月にかけ、長野、愛知、和歌山、兵庫、長崎県で85頭の野生イノシシを捕獲。肝臓と血液を調べたところ、8頭(兵庫3、長崎3、愛知1、和歌山1)からE型肝炎ウイルスの遺伝子が検出された。このうち愛知、和歌山、兵庫の遺伝子は国内の患者から見つかったウイルスの遺伝子型とほぼ一致した。E型肝炎は昨年、長崎や鳥取で複数の感染患者が発生。いずれも患者がイノシシの肉や肝臓を食べており、これが原因と強く疑われたが、決定的な証拠は見つかっていない。イノシシの血液からウイルス遺伝子が見つかったことで三代部長は「感染するウイルスが肉にも含まれることがほぼ裏付けられた」としている。 厚労省食品安全部は「野生イノシシの肉には、E型肝炎ウイルスだけでなく、ほかの病原体や寄生虫も含まれている可能性が高い。生や生焼けを食べるのは避けて」としている。E型肝炎ウイルスに感染すると約6週間後、発熱や腹痛、黄だんなどの症状が出る。大半は安静にしていれば治るが、まれに劇症肝炎になる。発症者の死亡率は1―2%とされる。(平成16年11月23日 読売新聞)

C型肝炎、2薬併用療法、年内にも保険適用

国内で約150万人に上るとされるC型肝炎感染者の治療対策として、厚生労働省は17日、ウイルス除去に効果がある二つの薬を同時に投与する「併用療法」を、薬事承認する方針を決めた。年内にも保険適用となる見通し。 二つの薬は「ペグインターフェロン」と「リバビリン」。 ペグインターフェロンは、C型肝炎の治療薬としてすでに定着しているインターフェロンが効きにくい難治性の患者にも効果があるという。 ペグインターフェロンもリバビリンも単独では承認されているが、併用する使い方はこれまで認められていなかった。 しかし、臨床試験データなどから、二つの薬を併用すると、ペグインターフェロン単独で投与するよりもウイルス除去率が数倍上がるとされており、現場の医師や患者団体から早期承認を求める声が上がっていた。 厚労省では19日に開かれる薬事・食品衛生審議会の部会で了承を受け、今年10月ごろ承認する予定。(平成16年8月17日 読売新聞)

1日にたばこ10本で肝臓がん再発率2倍

治療して肝臓がんの病巣が消えても、1日にたばこを10本以上吸う習慣があると、がん再発の危険性が約2倍に高まることが、北里大医学部の渋谷明隆講師の調査で分かった。 同大病院で1991―2002年に肝臓がん治療を受け、見かけ上がん病巣が消えた131人を追跡調査。再発した73人について、性別、年齢、治療法、生活習慣など様々な角度から分析し、再発を招いた原因を探った。その結果、毎日10本以上の喫煙習慣がある人が肝臓がんを再発する確率は、そうでない人の1・8倍だった。 最も強い関連があったのはC型肝炎ウイルス感染の有無で、感染者の再発率は非感染者の約3倍。肝臓に複数のがん病巣があった場合も、再発率は約2倍だった。 それ以外に目立った差のある要因はなかった。渋谷講師は「三つの再発要因のうち、喫煙だけは自分の努力で解決できる。肝臓がんの治療をした人は、禁煙した方がいい」と話している。(平成16年5月17日 読売新聞)

C型肝炎の母子感染1割 インターフェロン治療で効果

C型肝炎に妊婦が感染している場合、出産時に1割前後の確率で母子感染が起きていることが、厚生労働省の研究班の調査でわかった。C型肝炎の母子感染の詳細な実態調査はこれが初めて。子供の感染にはインターフェロンによる治療効果が高いこともわかった。研究班は感染に気づけば子供のうちの早期治療が勧められる場合もあるとして、医師、妊婦向けの指導指針を夏までに作成する方針だ。研究班(班長、白木和夫・鳥取大名誉教授)は大学病院など8施設でC型肝炎ウイルス(HCV)に感染している妊婦計約400人を調査した。各施設では7.3〜14%の割合で母子感染が起き、平均の感染率は9.4%だった。

現在、妊婦のC型肝炎感染率は0.4〜0.7%程度とされている。年間120万人が出産しており、約500〜800人の新生児が母子感染している計算になる。出産時に破れた胎盤を通じて感染している可能性が高く、通常の帝王切開での感染はほとんどなかった。母乳による感染例もなかった。感染した子供の3割は3歳までに自然にウイルスが消えていた。4〜15歳でインターフェロンによる薬物治療をした場合、4割でウイルスが消えた。治療中の副作用は軽い発熱ぐらいで、治療後、6年間の追跡調査でも発育障害などの副作用はみられなかった。 また感染が続いても、B型肝炎の母子感染のように肝硬変や肝臓がんなどの重症例はみられなかった。ただ、長期的な影響ははっきりせず、成人後に慢性肝炎になる可能性も否定できないという。

C型肝炎の母子感染は医師の間でもあまり認識されておらず、妊娠時にも検査はほとんどされていない。研究班は夏までに作成する指導指針で、母子感染の実態を詳しく解説し、検査の重要性や治療が勧められる場合の対応などを盛り込む。 白木名誉教授は「感染の事実を知っていれば、治療が必要かどうか判断できる。手術歴や輸血歴のある妊婦や、家族に肝臓の病気のある妊婦は、検査が重要だ。ただ、子供が感染していても生活上、何ら制限はなく、過度な心配は要らない」と話している。
■C型肝炎
ウイルスに汚染された血液を介して感染し、国内には150万〜200万人の感染者がいると推定される。 90年代初めまで感染予防策がとられておらず、輸血、手術などの医療行為を通じて感染した人が多い。 成人の場合、ウイルスを保持したままの持続感染者の7割が慢性肝炎になり、一部が肝硬変、肝臓がんに進行する危険がある。(平成16年2月17日 朝日新聞)

成人の生体肝移植にも保険適用

厚生労働省は12日、16歳以上を対象とした生体肝移植について保険適用の対象とする方針を決めた。これまでは、1000万円以上の自己負担が必要なケースがあり、患者には朗報だ。生体肝移植は、既に小児への移植については保険が適用されており、これで生体肝移植は一般医療として認められたことになる。16歳以上については、C型肝炎の悪化による肝がん患者らに対する移植が急増。

同省は、主に成人を対象とした移植の実績が1000例を超え、5年生存率が約70%と好成績を収めていることから保険適用することにした。これまで保険適用だった、先天性胆道閉鎖症などの先天性疾患に加えて、新たに16歳以上の肝硬変や劇症肝炎、肝細胞がんを対象疾患とする方針肝細胞がんについては、がんの直径が5センチ以下のものが一つ、または3センチ以下が3個以内の場合に限定した。ただ、一般医療化したことで、倫理的に問題のある移植や無謀な手術が増える恐れがあるため、保険適用の条件として臓器売買などを禁じた世界保健機関(WHO)や日本肝移植研究会の指針を順守するように求めた。(平成15年12月12日 産経新聞)

肝臓再生の臨床研究開始 

山口大病院(山口県宇部市、沖田極病院長)は18日、重い肝硬変にかかった山口県内の60代男性の肝臓に骨髄の細胞を注入し、肝臓組織を再生する治療を実施したと発表した。沖田病院長によると、肝臓の再生で骨髄細胞を投与する治療は世界で初めて。自己の骨髄細胞を体内に戻すため、拒絶反応を起こさない利点があるという。沖田病院長らは2000年から東京大と共同で、約3000匹のマウスを使って実験。肝障害を起こさせたマウスの血管に骨髄の細胞を注入すると、1カ月後には、骨髄の細胞から分化、成長した細胞が肝臓全体の20−25%を占め、傷んだ肝臓が修復された。4カ月後の生存率も注入前の約40%から約70%になったという。(平成15年11月18日中国新聞)

C型肝炎ワクチン試験へ 

血液を介して感染し、肝硬変や肝がんになる恐れがあるC型肝炎の予防ワクチンを、人間に投与して安全性と効果を確かめる臨床試験を始めると米セントルイス大が17日、明らかにした。原因ウイルス感染を防御するワクチンで、担当医師は「このワクチンが人間に投与され、試験されるのは初めて。効果が確認できれば、感染まん延を防ぐ技術になる」と話している。

実用段階にあるC型肝炎ワクチンは現在ない。患者は日本だけでも約150万人といわれ、実用化が期待される。ワクチンを作ったのは米バイオ医薬品企業カイロン社。C型肝炎ウイルスを発見し、ウイルスの検出薬を開発した実績を持つ。セントルイス大は同社や米国立衛生研究所と協力、量などを調節してワクチンの強さを3段階にして投与し、安全性などを調べる。(平成15年11月17日 中国新聞)

C型肝炎に有望飲み薬 体内ウイルス量、急減

C型肝炎ウイルス(HCV)の増殖を阻害し、体内のウイルス量を急速に減らせる飲み薬を開発したと、製薬会社べーリンガーインゲルハイム(本社ドイツ)が27日、英科学誌ネイチャー電子版に発表した。C型肝炎患者に飲んでもらったところ、血液のウイルス量は100分の1−1000分の1以下になったという。安全性や効果が確認されれば、有望な治療薬になると期待される。

開発したのは、HCVが増殖する際に欠かせないNS3プロテアーゼと呼ばれる酵素に結合し、働けなくする物質。同酵素の立体構造に基づいて設計し、合成した。液体に混ぜて飲み薬にして、日本人にも多いHCV1型の感染者8人で効果を試した。2日間に計4回服用したところ、全員のウイルス量がすぐ減り、24時間後にはウイルスが検出できなくなった人もいた。(平成15年10月27日 中国新聞)

免疫抑制剤併用でC型肝炎に効果 難治型の治療にも

C型慢性肝炎の治療で、通常の治療薬インターフェロンにある種の免疫抑制剤を併用すると効果が大きく向上することが分かった。日本人に多い難治型のウイルスで肝炎になった人にも効果が高く、新治療法として期待できるという。この薬がウイルスの増殖を抑える仕組みも解明し、昭和大と京都大の研究者が27日から京都市で始まる日本ウイルス学会で発表する。

この薬は移植臓器の拒絶反応防止などに使うシクロスポリン。昭和大藤が丘病院の与芝真教授や井上和明・助教授らは、C型慢性肝炎の患者44人にインターフェロンだけで、別の患者76人には免疫抑制剤も加えて、それぞれ半年間治療した。その半年後、C型肝炎ウイルス(HCV)が血液中から消えて効果を確認できた患者は、インターフェロン単独の場合32%、免疫抑制剤と併用の場合55%だった。インターフェロンが効きにくい難治型とされる「1b」タイプのHCVに感染した患者でウイルスが消えたのは単独治療で22%、併用治療で52%だった。併用で効果が上がった原因は京都大ウイルス研究所の下遠野邦忠所長や渡士幸一研究員らが解明した。

人の肝細胞にHCVを感染させ、シクロスポリンや似た化学物質約100種類の働きを比較した。肝細胞内で作られたたんぱく質が立体的に本来の形になるのをシクロスポリンが妨げることで、HCVが増殖できなくなることが分かった。 井上助教授は「日本のC型肝炎患者の約7割は1bタイプに感染しているだけにこの治療効果は朗報だ。ただしシクロスポリンは血圧が上がるなど副作用が強く、血中濃度の管理が大切だ」と話している。(平成15年10月26日 朝日新聞)

コーヒーに胆石予防効果か 

コーヒーを飲むと胆石症になりにくい。とくに男性でこの傾向が顕著という疫学調査の結果を、産業医科大の産業生態科学研究所グループ(責任者・吉村健清教授)が24日、東京での講演会で発表した。同グループの徳井教孝講師(栄養疫学)によると、コーヒー摂取量と胆石の発症率との関係を調べるため、福岡県内で男女約7600人(30〜79歳)を対象に87〜93年の間、追跡調査をした。この間に胆石を発症した人は男女合わせて128人。男性では、コーヒーを全く飲まない人の発症率に比べ、コーヒーを時々飲む人はその5割、1日に1杯以上飲む人では4割だった。女性でははっきりした差がみられなかった。徳井講師は「コーヒーに含まれるカフェインや繊維などが作用している可能性がある」と話す。コーヒーの胆石症予防効果は動物実験では指摘されていた。(平成15年9月24日 朝日新聞)

40歳以上の60〜80人に1人がB型、C型肝炎ウイルス感染者

厚生労働省は9月12日、老人保健法に基づいて2002年4月から実施している40歳以上の肝炎ウイルス検診の実績を発表した。 それによると、C型肝炎ウイルス検診では、節目検診と節目外検診で合わせて192万3480人が受診し、うち3万1393人が、「現在、C型肝炎ウイルスに感染している可能性が極めて高い」と判定された。 感染者率は1.6%と約60人に一人が感染している計算になる。 また、B型肝炎ウイルス検診では、192万3113人の受診者のうち、2万4430人(1.3%)、およそ80人に一人がHBs抗原検査陽性と判定された。 検査結果を年齢別に見ると、C型肝炎ウイルス検診では、高年齢になるほど感染者率が高かった。 5年ごとの節目検診では、40〜55歳では感染者率が0.5〜0.8%と低いが、60歳では1.0%、65歳では1.4%、70歳では2.1%と高い。節目外検診でも40〜59歳では1.1〜1.7%と低いが、60〜64歳では2.2%、65〜69歳では3.2%、70歳以上では4.0%と高い傾向だった。一方、B型肝炎ウイルス検診では、50歳前後が最も感染者率が高い。 節目検診では40歳と65歳、70歳では1.0%だが、50歳1.4%、55歳1.5%と高い。 節目外検診では、40〜44歳では1.5%、60歳以上では1.1〜1.4%だが、45〜54歳では2.0%、55〜59歳では1.9%と高かった。都道府県別では大きな差が見られた。 C型肝炎ウイルス検診では、節目検診の総平均が1.1%だったのに対し、佐賀県だけが3.9%と飛び抜けて高かった。 節目外検診でも傾向は同様で、全体の平均値が2.6%だったのに対し、1位は佐賀県の9.4%、次いで鳥取県の8.2%が多かった。 B型肝炎ウイルスの節目検診では、平均が1.2%だったのに対し、沖縄県が3.1%で最も高く、次いで北海道が2.4%で高かった。節目外検診でも、平均の1.4%に対して沖縄県の3.5%が最も高く、次いで北海道が3.4%と高かった。(平成15年9月18日 medwave)

急性B型肝炎、治癒後もウイルス残り、2次感染の可能性

急性B型肝炎が治った後も、ウイルスが血中に残るケースがあることが、国立病院大阪医療センターの結城暢一・消化器科医長らのグループの調査で分かった。本人の健康に影響を与える可能性はほとんどないレベルだが、献血での検査をすり抜けて2次感染させる可能性があり、輸血の際の安全管理体制などに影響を与えそうだという。グループは、発症から約2〜9年過ぎて、肝機能が回復し、治ったとみられる急性B型肝炎の元患者14人を検査した。その結果、3人の血液から、1ミリリットル当たり770個、同1300個、同2万4000個のウイルスがそれぞれ見つかった。また、肝臓の組織の採取に同意した9人全員の肝臓組織からもウイルスを検出した。 急性B型肝炎は体内にウイルスを攻撃する抗体ができれば治ったとされる。 しかし、生体肝臓移植の際に、急性B型肝炎が治った提供者から移植を受けた患者に感染することがあり、医療関係者の間で「肝臓にはウイルスが残る場合がある」と言われてきた。結城医長は「急性B型肝炎に感染したことがある人らは、献血の対象から除いたり、血液中のウイルスを不活性化する措置などが必要だ」と話している。 京都大医療技術短期大学部の福田善弘教授(肝臓病学)の話 輸血後にB型肝炎に感染するケースはまれに報告があり、「原因がよく分からない」とされてきたが、献血の検査の精度以下の微量のウイルスが残っていたのかもしれない。献血の際の検査態勢や、輸血の際のインフォームド・コンセント(十分な説明に基づく同意)のやり方に検討が必要かもしれない。(平成15年8月17日毎日新聞)

市販の豚肝臓からE型肝炎ウイルスの遺伝子検出

市販された豚の肝臓からE型肝炎ウイルス(HEV)の遺伝子の一部を自治医大の岡本宏明教授らが検出し、9月に英専門誌に発表する。遺伝子の一部とはいえ国内で流通する食肉からHEVが見つかったのは初めて。ただ感染力があるかどうかは分かっていない。 岡本教授らは、北海道で豚の肝臓363個を購入して調査。 1.9%から遺伝子の断片を検出した。 岡本教授は「HEVは熱で死滅する。十分に加熱すれば問題はない」と話している。(平成15年8月9日 朝日新聞)

野生ジカの刺し身食べE型肝炎感染 

国内の野生ジカを刺し身で食べ、4人がE型肝炎になったことがわかり、東芝病院(東京都品川区)の三代俊治・研究部長らが英医学誌ランセットの最新号に発表した。 E型肝炎は動物から感染する可能性が指摘されていたが、これまで直接的な証拠がなかった。 三代さんは「E型肝炎が人獣共通感染症であることがはっきりした。シカ肉を生で食べるとE型肝炎に感染する危険性がある」と警告している。E型肝炎に感染したのは兵庫県内の2家族の4人。今年4月にまず、44歳の男性が発熱やだるさの症状がでて、急性肝炎と診断された。さらに男性の父親(69)と弟(42)、友人の男性(61)も同様の発症をした。4人の血清検査ではA型、B型、C型のどの肝炎ウイルスも陰性だったが、E型肝炎ウイルス(HEV)に対する抗体が陽性で、HEVの遺伝子も検出され、E型肝炎と診断された。 4人は発病の6〜7週間前、2頭の野生のニホンジカの肉を3回にわたって刺し身で食べていた。冷凍保存されていたシカ肉のうち一頭分から患者とほぼ同じHEVの遺伝子が検出され、この肉が感染源とわかった。これまでブタやウシ、ヤギ、ネズミなどからウイルスや感染歴を示す抗体が見つかっているが、今回のように動物から人に感染する証拠は見つかっていなかった。 野生のシカは、山間部の料理店などで刺し身として提供されることがある。 E型肝炎はB型やC型と違って慢性化しないが、妊婦がかかると死亡率が高いとされる。 今回、野生のシカの生食で感染することがわかったことで、三代さんは「E型肝炎を人獣共通感染症としてとらえ、シカだけでなく、イノシシなどほかの野生動物の感染の実態を調べる必要がある」としている。(平成15年8月1日 朝日新聞)

E型肝炎 感染の疑い「1000人に4人」、輸血で拡大の恐れ

健康な人の1000人に4人程度がE型肝炎ウイルスを持っている可能性があることが、厚生労働省研究班(主任研究者=菊地秀・国立仙台病院副院長)の調べでわかった。 血中にE型肝炎ウイルスがある人が気づかずに献血すると、輸血された人へ感染が拡大する恐れがある。 今回の調査は限られた地域が対象だったが、同研究班は「調査対象を全国に広げ、早急に実態を解明する必要がある。 その上で、輸血の安全性を高めるための対応を検討すべきだ」と指摘している。 研究班は中部地方の478人(平均年齢56・2歳)から血液を採取し、数か月以内にE型肝炎に感染したことを示す抗体(IgM)について調べた。 その結果、2人(0・4%)から抗体が見つかった。 2人は採血の時点で、血中にE型肝炎ウイルスを持っていた可能性がある。 中部地方の別地域の775人(同57・1歳)についても、同様に調べたが、抗体は見つからなかった。 また、両地域とも過去にE型肝炎に感染したことがある人は5%前後だった。 E型肝炎は、主に飲食物を通じて感染する一過性の急性肝炎で、ウイルスは発症後1か月ほどで血中から消える。ただし、症状が出るまで潜伏期間が約6週間あり、感染者が気づかずに献血する可能性がある。[抗体] 体内に侵入したウイルスや細菌などの病原体に対抗するために、生体が作り出す特殊なたんぱく質。 病原体に取り付いて殺す働きがある。抗体は病原体ごとに違うため、血中にある抗体の種類を特定することで、感染している病原体がわかる。(平成15年6月20日読売新聞)

E型肝炎 出荷直前のブタ9割に感染歴

出荷時期に達したブタの90%にE型肝炎の感染歴があることが、岡本宏明・自治医大教授らの全国調査で明らかになった。 いずれも、すでに体内からE型肝炎ウイルス(HEV)は消えていたが、より若いブタからは高い頻度でHEVを検出、人間の患者から検出されたものとほぼ一致するHEVも見つかった。岡本教授らは「ウイルスが増殖、維持される『宿主』として、ブタに注目する必要がある」と指摘する。 HEVそのものは出荷時のブタから検出されておらず、食用豚肉は安全という。岡本教授らは、全国25か所の養豚場で計2500頭分から採取された血清を分析。その結果、過去にHEVに感染したことを示す免疫物質(抗体)の検出率が、生後2か月のブタは7%なのが、同3か月は40%、出荷が近い5―6か月のブタでは90%に上り、発育するにつれ次々と感染している実態がわかった。 抗体ができれば2度とHEVに感染しないため、ウイルスそのものは、生後6か月のブタからは見つからず、同3―4か月のブタの15%程度から検出された。 ウイルスの遺伝子は農場ごとに違ったが、北海道内の1頭のHEVは、1997年に札幌市内で発病した男性患者のウイルスと遺伝子の99%が一致した。 岡本教授らは「ブタと人間を結ぶ何らかの感染経路があるはず。ブタの感染率は全国的に高いが、人間の患者は北日本に多いといった特徴も見られ、感染経路の解明が待たれる」という。(平成15年6月4日 読売新聞)

輸血でE型肝炎に感染 国内で初の確認

北海道室蘭市内の病院で昨年7月、心臓手術を受けた60代の男性が輸血が原因でE型肝炎ウイルス(HEV)に感染、発病していたことが日本赤十字社の調査でわかった。輸血によるHEVの感染が確認されたのは国内では初めて。 ウイルス性肝炎の疫学調査をしている厚生労働省研究班は日赤と共同で、献血者に感染させる恐れのある人がどれくらいいるかを知るため、全国調査を実施する。研究班長の吉沢浩司・広島大教授は「輸血で感染する確率は極めて低いと考えられる」と話している。 吉沢教授によると、この男性が手術後にE型肝炎を発病したため、輸血した23人分の血液を調べたところ、そのうちの1人からHEVが検出され、遺伝子の型が男性のものと一致した。男性はすでに完治している。 献血血液の検査では、感染が持続するC型肝炎ウイルスやエイズウイルス(HIV)、劇症肝炎を引き起こす危険のあるB型肝炎ウイルスなどについて調べているが、主に飲食物を介して口から感染し、感染が持続しないHEVやA型肝炎ウイルスは検査の対象になっていない。 肝炎などになると血液中に増える酵素(ALT)は検査しており、HEVで肝機能に異常が出ていれば、献血しても除外される。今回は献血者に自覚症状はなく、ALT検査でも異常値を示さなかった。 HEVは急性肝炎を発症しなければ数カ月で血液中からなくなる。輸血でHEVに感染する危険があるのは、献血者が感染してから数カ月以内に献血し、ALT検査もすり抜けてしまう場合という。 ALT検査で除外された献血血液を全国から集めて、どれぐらいの割合でHEVが検出されるか調べる。この結果をもとに、献血時に新たな安全対策が必要かどうか検討する。<E型肝炎> 汚染された水や食べ物からウイルスに感染する。感染後5〜6週間で発熱、だるさ、黄疸(おうだん)などの急性肝炎症状が起きる。ほとんどの場合、水分や栄養の補給と安静によって1カ月ほどで回復する。症状が出ないことも多い。死亡率は0.4〜4%。C型肝炎のように慢性化することはない。(平成15年1月18日朝日新聞)

肝硬変による生体肝移植、16歳以上にも保険適用検討

坂口力厚生労働相は13日、超党派の国会議員でつくる「ウイルス性肝炎対策研究会」(会長・家西悟衆院議員)と面談、肝硬変と劇症肝炎による生体肝移植の保険適用の対象について、現在の15歳以下から16歳以上への拡大を検討する方針を示した。 国内の生体肝移植は2000例を超えているが、肝硬変と劇症肝炎による移植の保険適用は15歳以下に限られている。輸血や血液製剤投与など医療行為を主な感染源とするC型肝炎ウイルス(HCV)感染者は200万人とも推定される。長期の潜伏期を経て肝硬変に進む危険があるため患者団体が保険適用の拡大を要望している。(平成14年12月14日 日本経済新聞)

飲み過ぎで肝硬変 10年前の1.6倍

日本酒にして5合以上のアルコールを毎日飲む「大量飲酒」の肝障害患者に対する調査で、飲み過ぎが原因で肝硬変になる人の割合が、10年前の1・6倍に増えていることがわかった。調査した慶応大消化器内科の石井裕正教授のグループは「ワインや発泡酒ブームで酒の消費量が増えたことや、働く女性が増えて飲酒機会も多くなったことなどが原因ではないか」と分析している。 日本酒5合のアルコール量は、ビール大瓶4本強、ワイン1本強にあたる。この量を毎日飲む人は、全国に240万人いるとされる。石井教授らは全国約140の医療機関を98―2000年に受診した大量飲酒の肝障害患者約7800人を調査した。 その結果、肝炎ウイルスに感染しておらず、「酒の飲み過ぎ」だけが原因の肝障害は72%で、91年の調査に比べ11ポイント増加。特に肝硬変まで悪化した2700人余では「飲み過ぎ」が80%を占め、「肝炎ウイルス感染」と「飲み過ぎ」が各49%、51%で半々だった91年を大きく上回った。 「飲み過ぎ」の割合が増えたのは、ウイルス感染者への禁酒指導が徹底し、感染者の肝障害発症が減った反面、度をこした飲酒をする人が増えていると推測させる結果となった。(平成14年12月10日 読売新聞)

肝臓がん再発危険性、ビタミンK2で3分の1に

肝臓がんを治療した患者に、安全な骨粗しょう症治療薬として普及しているビタミンK2剤を投与すると、がん再発の危険性を3分の1に抑えられることが、山本匡介・佐賀医科大助教授(内科)らによる臨床研究で明らかになった。これと別に東大などが行った臨床研究でも、転移の予防や生存率向上に効果があることを確認。研究者らは「今のところ副作用は全くない。肝臓がんの治療に広く使えるのではないか」と期待している。 佐賀医大は、患部を電磁波で焼くなど様々な治療法によって「患部を完全に死滅または除去させた」と判断できた肝細胞がん患者32人に、「メナテトレノン」(商品名グラケー)を1日45ミリ・グラムずつ内服してもらい、内服しなかった29人と比較した。 3―4か月ごとに再発の有無を調べた結果、グラケーを内服した患者、内服しなかった患者の再発率はそれぞれ、1年後が12・5%と51・7%、2年後が39・1%と84・5%、3年後が65・5%と92・2%。統計的に再発の危険性を計算すると、内服によって3分の1に減少することが分かった。特に、C型肝炎から進展したがんは、約4分の1となった。 小俣政男・東大教授(消化器内科)らも、患部を焼くなどの治療を受けた患者60人に同量のグラケーを投与。転移につながる門脈へのがん細胞の広がりを、1年後は2%(内服しなかった60人は21%)に抑制でき、2年後の生存率は59%(同29%)に向上した。(平成14年11月18日読売新聞)

40歳未満でもC型肝炎検査費用補助

C型肝炎ウイルス(HCV)の抗体検査について厚生労働省は12日、40歳未満でも希望があれば検査を受けてもらい、費用を補助する方針を決めた。同省は今年度から老人保健法に基づく健診で40歳以上を対象に検査を実施していたが、早期治療を促すために対象を拡大する。来年度から実施、約200万人とされる国内の感染者の実態把握にもつながりそうだ。 対象は血液からHCVをほぼ除去する方法を導入した1992年以前に輸血や血液製剤の投与を受けた人。保健所を窓口とする予定。現在、検査費用は約3000円だが、補助して自己負担分を1000円程度にしたい考え。 日本赤十字が献血で実施しているHCV検査制度を利用、抗体検査で感染の疑いがあった場合、ウイルスそのものを検出する感度の高い核酸増幅検査(NAT)を実施して感染の有無を判定する。(平成14年11月12日日本経済新聞)

原因不明の急性肝炎、13%実はE型

原因不明とされていた急性肝炎のうち、13%が実はE型肝炎だったことが自治医大などによる共同研究でわかった。途上国で流行しているE型は、最近まで日本には存在しないと考えられ患者の検査項目から外れていたが、E型による死者が国内でも出たことを受け患者の保存血清を調べた結果、判明した。分析した血清の約30%からE型肝炎ウイルス(HEV)が検出された病院もある。 国内でどのようにE型が広がったのか分かっていないだけに、感染源を特定し予防や適切な治療につなげるには、急性肝炎の患者を診る医師がE型を常に念頭に置く必要があるという。 勤医協中央病院(札幌市)、岩手医大、いわき市立総合磐城共立病院(福島県)、国立療養所東京病院、山梨医大の5病院で1992―2001年に原因不明の急性肝炎と診断された90人の保存血清を再検査したところ、12人分からHEVが見つかった。特に勤医協中央病院では16人中5人(31%)、岩手医大では25人中4人(16%)の高率だった。患者の大半は海外の流行地への渡航歴がなく感染経路はわからない。 研究チームによると、この研究以外にも、手稲渓仁会病院(札幌市)で原因不明の急性肝炎患者26人のうち5人、川崎医大川崎病院(岡山県)で15人中1人から同様にHEVが見つかっている。全体に北日本ほどHEVの感染例は多い。研究者らは「地域によりかなりの割合でE型が発生していることがはっきりしてきた。特に北日本を中心に感染源を突き止める必要がある」としている。(平成14年11月5日 読売新聞)

E型肝炎、国内初の発生報告

発熱やおう吐などの急性症状を起こすE型肝炎に国内で感染した患者の発生が、初めて国に報告され、厚生労働省が近く発表する感染症発生動向調査に記載されることが明らかになった。E型肝炎は長く「日本には存在しない」とされ、医師もE型肝炎ウイルスの検査をしなかったため、これまでは海外で感染した患者しか報告されたことがなかった。 この患者は、長野県で7月に急性肝炎を発病したが、通常行う血液検査では、原因が分からなかった。E型肝炎が流行する発展途上国へ最近旅行したこともなかったが、読売新聞などで「E型肝炎が国内に定着して死亡例も出ている」との研究成果が報道されたことから、主治医が念のため、E型肝炎の検査を行っている米国の機関へ血液を送付。その結果、E型肝炎感染直後に体内で作られる抗体が検出された。 1999年施行の感染症法は、ウイルス性肝炎患者の発生を必ず保健所へ報告するよう医師に義務づけている。専門家らは「海外渡航歴のない患者でもE型肝炎を疑って検査すべきだ」と医師に注意喚起しており、国立感染症研究所にも7月下旬以降、各地の医療機関から検査依頼が相次いでいる。(平成14年9月6日 読売新聞)

欧米系B型肝炎が拡大

出生時に母親から感染した場合などに慢性化する日本在来のB型肝炎と異なり、成人での感染でも慢性化して肝硬変や肝臓がんに進む恐れがある欧米系のB型肝炎が性感染により国内で勢力を拡大していることが、2つの研究グループの調査で明らかになった。 B型肝炎はワクチンの普及で母子感染対策が確立、慢性肝炎を根絶に追い込めるとみられていたが、新たなタイプの拡大は撲滅にブレーキをかける恐れもある。研究者らは「母子感染だけに的を絞った従来の予防策では、B型慢性肝炎は防ぎ切れない」と警鐘を鳴らしている。 血液など体液を通じて感染するB型肝炎ウイルスは、遺伝子の構造でAからGまで7タイプに分類され、日本のB型慢性肝炎は大半がCタイプ。アジアに多いBタイプも数%を占めるが、他のタイプはほとんどない。在来型は成人で感染しても急性肝炎にとどまり慢性化しなかった。ただ、7タイプの中でAタイプが唯一、約1割が慢性化する。 全国21の国立病院・療養所による「肝疾患共同研究班」が、1990年以降に入院した254人のB型急性肝炎患者について、病原体の肝炎ウイルス(HBV)遺伝子を分析したところ、母子感染や免疫が正常でない人が慢性化するこれまでのタイプとは異なり、欧米とフィリピンに多いAタイプが24人(9・5%)に上っていた。男性が88%を占めていた。 さらに、東京女子医大(東京都新宿区)の長谷川潔講師(消化器内科)らが、96―2000年に診察した25人のB型急性肝炎について、HBVを分析した結果、男性ばかり14人がAタイプだった。このうち感染経路が判明した8人は、すべて性感染だった。 こうした結果から、国立病院長崎医療センターの八橋弘・臨床研究部長は「都会で外国人などから性感染した例が多いのではないか」と推測。長谷川講師は「最初は外国から持ち込まれたAタイプが、今や性産業などを通じてまん延している可能性もある」とみる。 国立病院・療養所の患者24人のうち、2人は発症から6か月後もウイルスが体内から消えず、慢性化している可能性があった。フィリピンで急性肝炎になったことのある夫から感染した女性もいた。 同研究班の調査では、Aタイプの割合が、2000年は14%、2001年は18・5%と、上昇傾向にあり、八橋部長は「肝炎もグローバル化の影響を受けている」とみている。(平成14年8月13日 読売新聞)

食用豚肉は安全

E型肝炎の国内感染の実態が次々と明らかになり、養豚業界を中心に波紋が広がっている。病原ウイルス(HEV)がブタから検出された栃木県では、生産者や流通団体から県農務部に問い合わせが相次ぎ、一部に「栃木産の豚は出荷停止」との誤報まで流れる混乱ぶりだった。このため、ブタからウイルスを検出した自治医大の研究者らは「食肉に危険はない」と強調し、冷静な対応を呼びかけている。 研究者らが「食用豚肉は安全」と強調するのは、「HEVは世界各地のブタから検出されているが、若い時期、一過性に感染するものの、出荷月齢に達したブタからの検出例は一つもない」(真弓忠教授)からだ。また、たとえ食肉に混入することがあっても、通常の加熱調理で死滅するので、専門家らは「豚肉を避けるよりも、手洗いや十分な加熱という基本が大切。食中毒一般の予防を心がけることの方が重要だ」と話している。 今回、栃木県内のブタからHEVが検出されたのは、同県の養豚農家の安全意識が高いため、という面もある。 「農家が研究に協力してくれたおかげで、感染実態がわかってきた」(真弓教授)からだ。(平成14年7月23日 読売新聞)

E型肝炎、国民の5%が感染

感染者の死亡が確認されるなど、国内でのまん延が疑われているE型肝炎に、国民の20人に1人が感染している可能性が高いことが、国立感染症研究所(感染研)の全国調査でわかった。 様々な年代の健康な人から採取した血液を検査したところ、E型肝炎への感染後にできる“証拠”と言える抗体が、900人中49人(5・4%)から検出された。E型肝炎は、感染しても発症せずに終わる「不顕性感染」が多いといわれ、感染者本人が気づかないうちに感染が広がる恐れもある。感染研では「今や、医療現場がE型肝炎をもっと疑って対処する心構えが必要となっている」と警鐘を鳴らしている。 感染研が調べたのは、1993年に日本の北部、中部、南部でそれぞれ約300人の健康な人から採取し、保存していた血清。武田直和・ウイルス第2部第1室長が開発した高精度の抗体検査薬を使い分析した結果、49人から抗体が見つかった。抗体保有率は地域差が大きく、最も高率だった中部地域では7人に1人(14・1%)が感染歴を持っていた。 E型肝炎は1度感染すると免疫が体内にでき、一生消えないと考えられている。実際、年齢が高くなるほど、抗体保有率も高まる傾向があり、30歳未満では保有率がわずか0・4%だった。 またこれとは別に、全国21の国立病院、国立療養所で作る「肝疾患共同研究班」でも、90年以降に各病院で原因不明の急性肝炎と診断された患者242人の血清について調査したところ、18・6%にあたる45人からE型肝炎の抗体が見つかっていたことも判明した。実際の分析は、血清を感染研に持ち込んで行われた。 感染研より抗体の保有率が高かったのは、高い年齢層が多かったためと考えられる。(平成14年7月23日 読売新聞)

E型肝炎、ブタから酷似ウイルス検出

日本でも感染が広がり、死者まで出ていたE型肝炎について、東京都内の患者から検
出された病原ウイルス(HEV)と、極めてよく似た遺伝子構造を持つHEVが、栃木県内の養豚場のブタから検出されていたことが、21日わかった。 E型肝炎は、人間と動物の間で感染し合う「人畜共通感染症」だが、国内の動物から実際にウイルスが検出されたのは初めて。国内での感染拡大を裏付けるもので、研究者らは「ふんが感染源になる可能性があり、動物の感染状況などを広範に調べる必要がある」と指摘している。 ブタからHEVを検出したのは、自治医大(栃木県)の岡本宏明助教授ら。同県内の12か所の養豚場で、計186頭から血液を採取して分析した結果、3か所の養豚場で1頭ずつ、HEVを持つブタが見つかった。3頭は生後2―3か月だった。 岡本助教授らが、このうち1頭分のHEVについて、全遺伝情報を解析し、国内や海外の患者・ブタなどから検出されたHEVと比べたところ、一昨年に都内で確認されたE型肝炎の患者のものと構造が極めて似ていることが判明した。 両者が結びつくのかどうかは不明だが、国内のブタと人間のHEVが、共通の祖先をもつ“親類”である可能性が高く、同助教授らは「人とブタを結ぶ何らかの感染経路がある」とみている。海外では、ブタのほかにヒツジ、ヤギ、ネズミなどからも、HEVに感染すると体内にできる免疫物質(抗体)が検出され、感染源の候補に挙がっている。ふんに混ざったウイルスが飲料水などを汚染して、人間に感染するとみられる。(平成14年7月22日読売新聞)

E型肝炎ウイルスで3人死亡

これまで海外で感染すると考えられていたE型肝炎に、海外渡航歴の無い人が感染し、この10年余りで3人が死亡していたことが、東芝病院(東京都品川区)などの調べでわかった。感染ルートは不明だが、国内に感染源がある可能性が大きい。厚生労働省は、ウイルス性肝炎研究班で、感染実態の詳細な調査を進めていく。E型肝炎は、E型肝炎ウイルス(HEV)が原因で、腹痛や食欲不振など他の急性肝炎と同様の症状が現れる。B型やC型と違って慢性化はしないが、妊婦がかかると死亡率が高いとされる。死亡したのは、東北地方の60歳代男性2人と、北海道の若い女性。このうち女性は昨年発症し3カ月後に死亡した。東芝病院の三代俊治研究部長らが血液を分析したところ、HEVが検出された。男性2人は岩手医科大の患者で、同大などが、92年から10年間の劇症肝炎33例のうち、原因不明だった19例の血清を再検査してみつけた。また三代部長らは原因不明の急性肝炎にかかった患者7人の保存血清からHEVをみつけた。E型肝炎は患者の便で汚れた水や食べ物などから感染するケースが多く、途上国などで流行する肝炎とみられていた。しかし、今回確認された患者は海外渡航歴は無く、感染経路はわかっていない。(平成14年7月21日朝日新聞)

肝臓がん引き起こす遺伝子発見

細胞の異常増殖にスイッチを入れ、肝臓がんを引き起こすと見られる遺伝子を、東京大学医科学研究所の中村祐輔教授らが発見し、27日から札幌市で始まった「がん分子標的治療研究会」で発表した。この遺伝子の働きを抑える物質を作れば、がん組織だけに効き、副作用の極めて少ない新世代の薬剤になると期待される。 中村教授らは、12例の肝臓がんの組織を調べ、約2万3000個の遺伝子の働き具合を見た。この結果を正常な肝臓と比較したところ、ほとんどのがん組織で働きが強まっている遺伝子「ZNFN3A1」を見つけた。この遺伝子が、異常な細胞増殖をもたらす別の遺伝子に指令を出し、細胞のがん化のスイッチを入れているとみられる。(平成14年6月27日 読売新聞)

C型肝炎ウイルス検査:都道府県に今年度から実施要

全国の市区町村が今年度から5年以内に実施する老人保健法に基づくC型肝炎ウイルス(HCV)検査について、厚生労働省は9日までに、今年度内に実施するよう求める文書を各都道府県に出した。多くの自治体が「予算措置ができない」などを理由に今年度からの実施を決めていないが、HCVは放置すると肝がんに進行する恐れもあり、同省は「緊急性がある事業なのに『予算がない』では理由にならない」と今年度からの実施を強く求める構えだ。この文書は、厚労省老人保健課長名で各都道府県の担当者に出された。管内の市区町村が今年度内に実施できるよう、「助言等必要な援助をお願いしたい」と要請している。約200万人と言われる国内のHCV感染者は輸血や血液製剤の投与などで感染した場合が大半で、感染を知らず生活している人が多数いるとされる。厚労省は今年度から始めたC型肝炎等緊急総合対策の一環で、40歳以上を対象とする老人保健法の基本健康診査にHCV検査を導入した。実施主体の市区町村は国や都道府県から3分の2の補助金を受け、希望者を検査する。受診者1人当たりの市区町村の負担は1000〜2000円程度。受診者が多数になることに備え、実施期間は今年度から5年の間とされている。同省が先月に全市区町村の実施状況を調べたところ、40歳から5歳ごとの人に対する「節目検診」は全体の11%に当たる364市区町村、血液製剤を投与された経験があるなど感染の疑いがある人に対する「節目外検診」は35%の1121市区町村が「予算がとれない」「検査後のフォロー体制がない」などの理由で今年度の実施を決めていなかった。厚労省の外口崇老人保健課長は「市区町村の財政負担がそれほど重いとは言えず、補正予算を組むなどして対応してほしい。夏までに再び実施状況を調べ、年度内の実施を決めていない自治体にはさらに理由を聞きたい」と話している。(平成14年5月10日 朝日新聞)

門脈注入療法で腹水量が減少

小児の先天性肝疾患だけでなく、劇症肝炎や肝硬変など成人の重篤な肝疾患に対しても、わが国では生体肝移植が行われるケースが増えてきた。生体肝移植は小児と成人を合わせて既に2000人近くに行われており、C型肝炎ウイルスに感染した元外相の河野洋平氏に、息子で総務政務官の河野太郎氏が肝臓を提供したケースは記憶に新しい。しかし、移植を受ける側(レシピエント)が成人の場合、大きなジレンマがつきまとう。生体肝移植では、健康な肝臓提供者(ドナー)の肝臓の一部を切り取り、レシピエントに移植する。肝臓の左葉を提供するケースが多いが、レシピエントが成人の場合、しばしば「提供される肝臓が小さすぎる」(過小グラフト)との問題が生じる。左葉より大きい右葉を提供すれば、過小グラフトは避けられるが、今度はドナーに危険が及ぶ。成人間の生体肝移植は、常にこのジレンマに直面してきた。九州大学の基本方針は「ドナーのリスクが少ない左葉を移植する」こと。しかし、腹水などの過小グラフト症候群は、右葉移植の場合よりも頻繁に起こる。そこで、同大大学院医学研究科消化器・総合外科の末廣剛敏氏らは、移植後にグラフトの微小循環を改善する薬剤を、門脈を通して直接グラフトに注入する「門脈注入療法」を編み出した。投与する薬剤は、メシル酸ナファモスタット(商品名:フサン)とプロスタグランジンE1のアルプロスタジル アルファデクス(商品名:プロスタンディン)、トロンボキサンA2合成酵素阻害薬のオザグレルナトリウム(商品名:キサンボン)、ステロイド薬のコハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム(商品名:ソル・メドロール)の4種類。門脈を通してグラフトに7日間持続注入する。末廣氏らは4月24日のパネルディスカッション1「生体肝移植の現状と将来展望」で、門脈注入療法を行った9人と、行わなかった9人とで、術後の経過がどの程度変わったかを報告した。高ビリルビン血症は不変だったが、過小グラフト症候群のもう一つの主要症状である腹水が、術後1週、2週のいずれも、門脈注入療法を受けた人でははるかに少ないことがわかったという。過小グラフト症候群は、相対的に小さなグラフトに、大量の門脈血が流れ込むために起こると考えられている。門脈注入療法は、薬剤で直接グラフトの微小循環を改善して細胞を保護し、グラフト傷害を軽減するとの戦略だ。末廣氏は「成人間の生体肝移植における、過小グラフト対策の選択肢の一つとして、門脈注入療法は有用」と結んだ。(平成14年4月25日medwave)

薬害肝炎、40歳以上の希望者全員検査

血液製剤「フィブリノゲン」による薬害肝炎問題で、坂口厚生労働相は9日、現在40歳以上で、出産や手術などで同製剤が使われた可能性の高い人や希望者全員を対象に、老人保健法に基づく「基本健康診査」(基本健診)でのC型肝炎ウイルス(HCV)検査を実施する方針を明らかにした。 フィブリノゲンを投与された人は、1980年以降だけで28万人と推定されている。フィブリノゲン製剤による肝炎被害が問題となる中、肝炎感染の早期発見が重要と判断、5歳ごとの節目検査以外の年齢でも緊急検査を受けられるようにした。自治体の受け入れ態勢が整い次第、来月にも始める。 基本健診は、企業健診を受ける機会のない主婦や自営業者などの40歳以上の人が毎年受けられる。自己負担分を除いて、国、都道府県、市町村が3分の1ずつ検査費用を負担する。 厚生労働省では今月から、40歳から70歳まで5歳刻みの「節目」の年齢の人や、「節目外」でも、基本健診で肝機能に異常が見つかった人を対象に、基本健診の中でHCV検査を行っている。 しかし、最近になって、フィブリノゲン製剤によるHCV感染問題が浮上。同省は急きょ、同製剤の投与を受けた可能性がある人について、節目以外の年齢でも検査を受けられることにした。 今回の緊急対策での対象者を含め、同省では、年間約200万人以上が基本健診でHCV検査を受けるとみている。 フィブリノゲン製剤による感染が疑われる人は、大部分が40歳以上と見られる。HCV検査は、35歳以上を対象とした政府管掌健康保険の健診でも今月から導入されているが、坂口厚労相はこの日の会見で、「こちらも、(基本健診と)同様に節目以外の年齢でも検査を受けられるようにしたい」と述べ、政管健保でも緊急対策に乗り出す方針を示唆した。 フィブリノゲン製剤は、出産や事故などで大量出血した際に止血剤として使われたり、外科手術で臓器などの組織を接着する「フィブリン糊(のり)」などとして使用された。約1万人がHCV感染したと推計されているが、同製剤を使用されたことを認識している人は少ないとみられている。(平成14年4月9日 読売新聞)

慢性炎症が2型糖尿病の誘発因子に

約1000人の健常者を追跡した観察研究で、代表的な炎症マーカーであるC反応性蛋白(CRP)値が高い人では、5年以内に2型糖尿病を発症する確率が高いことがわかった。さらに、線溶系の機能低下を反映するプラスミノーゲン活性化阻害因子1(PAI-1)も、インスリン抵抗性とは独立の糖尿病発症因子であることが明らかに
なった。糖尿病患者は虚血性心疾患に罹患しやすいが、その背景には、慢性的な炎症や凝固亢進状態という共通因子があるようだ。研究結果は、Diabetes誌4月号に掲載された。この研究は、IRAS(Insulin Resistance Atherosclerosis Study)研究の一環として行われたもの。IRAS研究の参加者1625人のうち、研究参加時に糖尿病を発症していない1047人を解析対象とした。解析対象者の平均年齢は54.8歳、女性が約6割で、平均体脂肪指数(BMI)は28.4。人種比率は白人が約4割、黒人とヒスパニックがそれぞれ約3割だった。5年の追跡期間で144人(14%)が2型糖尿病を発症したが、糖尿病の発症者では、非発症者と比べ、研究参加時のCRP値、PAI-1値や、PAI-1と同じく線溶系のマーカーであるフィブリノーゲン値が有意に高かった。これらの検査値は、人種や性別に関わらず、糖尿病の発症と相関していた。ただし、BMIなど体脂肪の指標や、インスリン感受性で補正すると、CRP値やフィブリノーゲン値と糖尿病発症との関連は弱まった。しかし、PAI-1に関しては、補正後もこうした他の危険因子とは独立に糖尿病の発症と強い相関があることがわかったという。以上から研究グループは、虚血性心疾患の誘発因子として知られる慢性炎症状態は、肥満とは無関係ではないものの、糖尿病も誘発し得ると結論。血栓のできやすさを反映し、インスリン抵抗性との関連も知られているPAI-1は、2型糖尿病の発症リスクを早期から反映するマーカーとみなし得るとしている。(平成14年4月3日 medwave)

C型肝炎のインターフェロン治療、効果予測の臨床研究へ

C型肝炎のインターフェロン治療の効果は、個人によって差がある。遺伝子を調べてその効果を治療前に予測する本格的な臨床研究が、東芝病院と東京大学医科学研究所の二つの研究チームで今夏にも始まる。全国に200万人いるとされるC型肝炎ウイルス感染者のうち、インターフェロン治療でウイルスを完全に除去できるのは約3割。この治療でウイルスをあまり排除できない人にとっては、間質性肺炎やうつ状態など重い副作用の方が問題になる。患者数もふえており、無駄な投薬も多くなる。東芝病院の三代俊治研究部長らは、ウイルス増殖を抑える特定遺伝子で、塩基配列が1カ所だけ異なるSNP(一塩基多型)に着目。患者の遺伝子を解析したところ、効果のあった人の72%は同じSNPタイプだった。効果のなかった人の62%は別の特定タイプであることがわかった。東芝病院はほかにもインターフェロンの効果に関係するとみられるSNPを複数発見。それぞれのタイプの効果予測を点数化した。私立大学病院の研究者らと協力し、精度を高める臨床研究を始める。東大医科研の中村祐輔教授らは、理化学研究所とともに大規模なC型、B型肝炎患者のSNP研究を開始。虎の門病院の協力で患者2千人の遺伝子サンプルを集め、臨床研究をする計画だ。(平成14年4月3日 朝日新聞)

薬害肝炎ホットラインがスタート

血液製剤を使用してC型肝炎に感染した薬害C型肝炎問題で、弁護士グループ「C型肝炎研究会」(鈴木利広代表)は1日、被害者からの相談を受け付けるホットライン電話を開設した。研究会は先月、「国や製薬企業に法的責任がある」として、被害の回復を求める意見書を厚生労働省に提出しており、法律面での相談に弁護士が応じる。対象は(1)出産後、黄疸(おうだん)が出た(2)止血剤を投与された後、肝機能値に異常が出た(3)大量出血をして非加熱製剤を投与された――などの経験を持ち、C型肝炎に感染した人。 C型肝炎は感染当初は自覚症状がないが、次第に進行、肝硬変などを発症して死亡する危険性がある。旧ミドリ十字が販売していたフィブリノゲン製剤だけで80年代以降、約28万人に投与され、1万人が肝炎に感染したとみられている。法律相談(電話03・5982・2150)の受付時間は午前10時から午後4時半で、5日まで。(平成14年4月1日 日本経済新聞)