HIV・エイズ



HIV除去体外受精111組

エイズウイルス(HIV)に感染した夫の精液からウイルスを除去し、体外受精する生殖補助医療を国内で受けた夫婦が110組を超えたことが、治療の窓口を担う荻窪病院(東京都)の調査でわかった。71人の子供が生まれ、母子ともに感染例はないが、現在治療を実施している医療機関は2ヵ所だけだ。ウイルス除去技術の習得が難しいことなどが理由で、実施機関の拡大が課題になっている。治療がこれまでに実施されたのは、新潟大、慶応大、杏林大。治療法が開発された2000年から08年までに、111組の夫婦で計267回の治療が行われた。その結果、延べ59人の母親が計71人の子供を出産した。杏林大は担当医師がいなくなったため、現在は中止している。治療を待つ夫婦は現在、約80組。荻窪病院では、全国の医療機関に協力を呼びかけているが、「母子に感染したら責任を負えない」「産婦人科医が不足し新しい治療を行う余裕はない」などとして、引き受けるところはないという。同病院の花房秀次副院長は「治療法の安全性は確立したと思う。だが、医師が安全に実施するための技量を身に着けるには研修が必要で、各病院は二の足を踏んでいる」と話している。(平成21年2月28日 読売新聞)

HIV、国内感染者、累計で1万人超える

厚生労働省のエイズ動向委員会は、国内のHIV感染者が累計で1万人を超えたと発表した。厚労省は「先進諸国が横ばいの中で日本の感染率上昇は目立っており、啓発が遅れている」と警戒を強めている。厚労省によると、7〜9月に報告があった新規感染者は294人で、四半期ベースでは過去最多。血液製剤で感染した薬害被害者を除く感染者は累計で1万247人(男性8305人、女性1942人)に達した。85年の最初の感染報告から5000人突破までは17年かかったが、ここ数年でペースが急激に上がり、03年1月以降の5年9ヵ月で5107人の感染者が見つかった。(平成20年11月20日 毎日新聞)

HIV感染、過去4番目 「増加傾向は変わらず」


厚生労働省のエイズ動向委員会は、今年1月から約3カ月間に新たに報告されたHIV感染者数を過去4番目の251人と発表した。4半期ごとの新規感染者は前回報告(277人)まで3期連続で過去最高を更新しており、岩本愛吉東大医科学研究所教授は「増加傾向に変わりはない」としている。新規のエイズ患者は94人で過去9番目だった。感染者の感染経路別では、同性間性的接触が165人と最多で、このうち日本国籍の男性が159人。患者では同性間の性的接触の44人中、43人が日本国籍の男性だった。感染者、患者ともに20−50代に広がりがみられるが、感染者では特に20、30代で計170人と、全体の7割近くを占めた。(平成20年5月21日 中国新聞)

HIV、昨年の感染、初の1000人超(10年で2.6倍、延べ1万人目前)


07年に国内で新たにエイズウイルス(HIV)に感染した人は1048人に上り、初めて1000人を超えたことが12日、厚生労働省エイズ動向委員会の集計(速報値)で明らかになった。10年間で約2.6倍になり、延べ感染者数も9392人と08年中に1万人を突破するのが確実になっている。新規感染者は5年連続の過去最多更新で、うち93%が男性。感染経路は同性間の性的接触が約7割、異性間接触が約2割、不明が約1割。年齢別では30代が全体の4割超、20代が約3割を占めるが、伸び率が高いのは40代で、7年間で61人から192人に増えた。厚労省は「感染が拡大しているのは事実で、今後は薬物注射の乱用なども警戒する必要がある」と分析している。一方、07年の新規のエイズ患者数は400人で、前年の406人から微減した。厚労省は保健所などでのHIV検査件数が前年より約4万件多い過去最高の21万4347件に達したことを理由に「検査で発症を防げているケースもある」とみている。(平成20年2月13日 毎日新聞)

HIV、昨年の感染、初の1000人超(10年で2.6倍、延べ1万人目前)

07年に国内で新たにエイズウイルス(HIV)に感染した人は1048人に上り、初めて1000人を超えたことが12日、厚生労働省エイズ動向委員会の集計(速報値)で明らかになった。10年間で約2.6倍になり、延べ感染者数も9392人と08年中に1万人を突破するのが確実になっている。新規感染者は5年連続の過去最多更新で、うち93%が男性。感染経路は同性間の性的接触が約7割、異性間接触が約2割、不明が約1割。年齢別では30代が全体の4割超、20代が約3割を占めるが、伸び率が高いのは40代で、7年間で61人から192人に増えた。厚労省は「感染が拡大しているのは事実で、今後は薬物注射の乱用なども警戒する必要がある」と分析している。一方、07年の新規のエイズ患者数は400人で、前年の406人から微減した。厚労省は保健所などでのHIV検査件数が前年より約4万件多い過去最高の21万4347件に達したことを理由に「検査で発症を防げているケースもある」とみている。(平成20年2月13日 毎日新聞)

国産エイズワクチン開発

日本のベンチャー企業「ディナベック」が、世界最大のエイズ予防研究機関の協力を得て、エイズワクチンを開発する。同社のワクチンは動物実験で高い効果をあげており、改良して3年後の臨床試験実施を目指す。エイズワクチンは世界中で研究開発が進んでいるが、まだ実用化されたものはない。臨床試験が始まれば、国産ワクチンでは初となる。国内で発見された「センダイウイルス」と呼ばれるウイルスに、病原体の遺伝子の一部を組み込んでワクチンを作る技術の特許を持つ。この技術を基に作るエイズワクチンは、鼻に噴霧できるため、鼻粘膜を通じ、多くの免疫細胞を活性化させる働きがあるうえに、DNAに入り込まないので人体に悪影響を及ぼさないなどの利点がある。同社が、国立感染症研究所などと共同でワクチンをサルに投与したところ、エイズウイルスのサルへの感染を阻止しただけでなく、すでに感染しているサルのウイルス増殖を抑えることができた。ディナベックに協力する「国際エイズワクチン推進構想」は、マイクロソフト社のビル・ゲイツ会長らの巨額の支援を原資に活動する機関で、ワクチンの設計から承認申請を行うまでにかかる数十億円の開発費を負担する。IAVIはタイなどで6種のエイズワクチンの臨床試験を始めているが、ディナベックのワクチンは、より長期にわたって予防効果を発揮できるとみられる。ディナベックによると、3年後に米国、アフリカなどで臨床試験を始め、8年後に実用化するのが目標。(平成19年7月7日 読売新聞)

HIV感染者・エイズ発症者、昨年過去最高1358人

2006年の1年間で、エイズウイルス(HIV)に新たに感染した人とエイズを発症した患者の合計が、過去最高の1358人に上ったと、厚生労働省のエイズ動向委員会が22日発表した。 同委員会によると、昨年の感染者数は952人、患者数は406人で、いずれも過去最高。同年末までの感染者数と患者数の累計は1万2394人となった。年齢別では05年に比べ、30、40歳代の感染者数が大幅に増加。30歳代が約21%増えて390人、40歳代が約36%増の164人となった。患者数も30歳以上の中高年で増えていた。感染経路は、同性間の性的接触が768人、異性間の性的接触が363人。感染地域は、感染者の約87%(828人)、患者の約78%(315人)が国内感染と推定された。同委員会委員長の岩本愛吉・東京大医科学研究所教授は「エイズ検査の普及と、感染者の増加によって、過去最高を更新したのだろう」と話している。(平成19年5月23日 読売新聞)

人工リンパ節、免疫力20倍

人工的に作成したリンパ節を免疫力の低下したマウスに移植し、免疫機能を正常マウスの約20倍に高めることに理化学研究所が成功した。高い免疫力は1カ月以上持続した。免疫力の強化は、エイズなどの重症感染症やがんなどの治療に有効だという。リンパ節はわきの下や頚部などにあり、ヒトの体に入ったウイルスなどの異物(抗原)が運ばれてくる組織だ。リンパ節中の免疫細胞が異物と結合すると免疫反応が始まり、異物を排除する抗体を作り出す。研究チームは、たんぱく質の一種のコラーゲンを3ミリ角のスポンジ状にし、免疫反応に重要な2種類の細胞を染み込ませた。これを正常なマウスの体内に移植すると、リンパ節に類似の組織ができた。複数の免疫細胞が本物と同じ比率で存在し、血管も形成された。この人工リンパ節を、免疫不全症を起こしているマウスに移植したところ、異物に対する血中の抗体量が正常マウスの約20倍にも高まり、1カ月以上持続した。(平成19年3月19日 毎日新聞)

免疫効果高めるエイズワクチン

経口投与を繰り返すと、着実にエイズに対する免疫力が高まる新しいエイズワクチンの開発に、順天堂大や近畿大などの共同研究グループがマウスを使った実験で成功した。よく効くエイズワクチンの開発は世界的な課題で、将来の臨床応用が期待される。このワクチンは、天然痘の予防接種に使われていた安全な種痘ウイルスに、エイズウイルスの遺伝子の一部を組み込んだもの。投与するとエイズウイルスのたんぱく質が作られ、それをもとにエイズウイルスへの免疫ができる。エイズウイルスは増殖時に変異しやすいため、それに対抗できる免疫を複数回の投与でつけることが望ましいが、これまでの研究では、1〜2回投与すると種痘ウイルスに対する免疫ができてしまい、エイズウイルスに対するワクチン機能が低下する欠点があった。順天堂大医学部は、種痘ウイルスを生体物質の薄い膜で包んだ。すると、種痘ウイルスに対する免疫ができにくくなり、その結果、投与回数を増やすことでエイズウイルスに対する免疫力を高めることに成功した。(平成18年11月26日 読売新聞)

HIV感染最多 

1日1.14人。東京都内でエイズがじわじわと増えている。 昨年1年間にエイズウイルス(HIV)に感染した人と、エイズを発症した患者の合計数は、過去最多の417人。15年前に比べて8倍に増えた。一方、感染の有無を調べる検査の受診者数は、伸び悩みぎみ。危機感を抱く都は、今年から始まった「検査普及週間」(1〜7日)に合わせ、啓発に力を入れる。 「感染者は、実際には報告数の4〜5倍はいる。エイズ患者が増え続けているのは先進国では日本だけ。爆発的な流行につながるおそれがある」 新宿駅南口にある都南新宿検査・相談室で、10年近く検査に携わる医師の山口剛氏(73)は指摘する。 都内で検査を受け、感染や発症が明らかになった人は年々増え続け、90年の51人から昨年は417人になった。すでに感染が分かっている人も加えると計3938人で、全国の感染者の累計約1万1000人の4割になる。 一方、検査そのものの受診者数は、社会問題化した92年に3万1千人以上だったのが、昨年は2万2千人。 休日に検査をしたり、即日で結果が分かる検査も実施したりするなど様々な工夫が奏功し、ここ数年、増加傾向にはある。 ただ、「手は尽くし、頭打ちになりつつある」と都の担当者は懸念する。 HIVの増殖を抑える薬物治療の進歩で、エイズは致死的な病気ではなくなった。それだけに早期発見が重要だが、山口氏は「安心してしまっているのか、関心は薄れている」と嘆く。 昨年、新たに感染が分かった人の9割は日本人男性。6割が外国人だった92年から状況は大きく変わった。感染源は同性間の性的接触が目立つ。 年齢別では20代、30代が72%を占め、HIV感染の危険性が高まるクラミジアなどの性感染症の若者が増えていることも懸念材料だ。一方、全国では昨年1年間にHIV感染832人、エイズ患者367人が新たに報告された。 合わせて過去最高の1199人となり、2年連続で千人の大台を超えた。(平成18年6月3日 朝日新聞)

HIV感染者・患者、2年連続で1000人突破

2005年の1年間に新たに報告されたエイズウイルス(HIV)の感染者、発症した患者の合計は1124人で、2年連続で1000人台となったことが厚生労働省の集計(速報値)でわかった。4月に発表される05年の確定値は速報値よりも増えるとみられ、過去最多だった04年(1165人)とほぼ並ぶ見通し。同省は「同性愛者や青少年に対する予防啓発活動をさらに進める必要がある」としている。 05年の感染者数の速報値は778人で、過去最高だった04年の確定値(780人)を更新するのは確実とみられる。発症した患者数の速報値は346人。 04年の確定値(385人)よりも39人少なく、発症患者数は1998年以来7年ぶりに減少に転じる可能性があるという。(平成18年1月28日 日本経済新聞)

HIVが熟年女性に拡大

50歳以降に初めてエイズウイルス(HIV)感染がわかる女性のうち、体調不良などで偶然見つかる場合が4割強に上ることが、エイズ治療の基幹的病院である東京都立駒込病院感染症科の調査でわかった。エイズは性行動の活発な若者の病気というイメージが強いが、調査を担当した看護師は「中高年にも新たな出会いが広がり、リスクが低いとされた熟年以降に感染が広がる懸念もある」と警告している。日本エイズ学会で発表した。1986〜2004年に、同病院でHIV感染が初めて確認された50歳以上の女性は14人で、50歳代が8人、60歳代が6人だった。このうち「夫などのエイズ発症、感染」をきっかけに感染がわかったのは57%。「自分の体調不良」「他の疾患の治療」がそれぞれ21%と、自ら進んで検査を受けた例はなかった。 閉経前後の女性は、寝汗、微熱などのエイズ関連症状を加齢に伴うものと医師も本人も判断しがちで、見落とされる可能性があるという。50歳を過ぎた女性のHIV感染は、日本ではまだ少ないが、欧米では増加傾向にある。感染予防に有効なコンドームも閉経後は「妊娠しないから」と使用継続が難しいのが実情だ。(平成17年12月12日 読売新聞)

エイズ新薬開発

副作用がほとんどなく、従来の薬が効かなくなった人にも効果の高いエイズ新型薬を開発したと5日、熊本大の満屋裕明教授(内科学)が神戸市で開かれたアジア・太平洋地域エイズ国際会議で発表した。細胞に入り込もうとするエイズウイルス(HIV)を入り口でシャットアウトするこれまでにない働きを持つ。現行の薬は、耐性ウイルスができて、早ければ数日で効かなくなるが、新型薬は耐性ウイルスが極めてできにくいという特徴もある。 製品化されれば、治療の新たな切り札として期待される。 同教授によると、コードネーム「AK602」というこの新薬は、細胞の表面にあるCCR5というたんぱく質にくっつく。このたんぱく質は、HIVが人間の細胞に入り込む入り口。 ここに異物がくっつくことで、ウイルスは細胞に入れなくなる。 米国のエイズ患者計40人を対象に臨床試験を実施。 1日2回、1回600ミリグラムを10日間のんだ結果、ウイルス量が平均約100分の1に減り、600分の1まで減った患者もいた。 副作用は、便が軟らかくなった人がいた程度だった。 AK602は、CCR5の全体ではなく、HIVの入り口部分を選んでふさぎ、人間にとって必要な働きをする部分はあまりふさがない。 さらに、従来の薬がウイルスを攻撃するタイプなのに対し、新型薬は人間の細胞に反応する。 このため副作用が出にくいという。 また、今回対象にした40人のほぼ半数は、薬のほとんどが効かなくなった多剤耐性エイズの患者で、この人たちにも大きな効果を示したことになる。(平成17年7月6日 朝日新聞)

エイズ孤児、アジア・太平洋で150万人

アジア・太平洋地域で、親がエイズで死亡した「エイズ孤児」が推計で約150万人にのぼると、国連児童基金(ユニセフ)などが3日、神戸市内で開かれているアジア・太平洋地域エイズ国際会議で発表した。親がエイズウイルス(HIV)感染者であるために差別を受けたり、家族の生計を得るために働いたりしている子どもも約350万人にのぼると推計している。 ユニセフと、NGO(非政府組織)の「英国セーブ・ザ・チルドレン」と「ファミリー・ヘルス・インターナショナル」の3団体が記者会見で明らかにした。 孤児の数は、同地域で出産可能な年齢の女性人口や出生率、エイズ罹患(りかん)率などに基づいてユニセフが推計した。国別ではインド、タイ、カンボジア、ミャンマー(ビルマ)などで多く、中国での増加も懸念されている。 一方、同地域の子どもでHIV感染しているのは12万1000人で、04年の新規感染者数は4万7000人にのぼる。(平成17年7月4日 朝日新聞)

エイズ新薬開発、体内ウイルス「激減」

副作用がほとんどなく、従来の薬が効かなくなった人にも効果の高いエイズ新型薬を開発したと5日、熊本大の満屋裕明教授(内科学)が神戸市で開かれたアジア・太平洋地域エイズ国際会議で発表した。細胞に入り込もうとするエイズウイルス(HIV)を入り口でシャットアウトするこれまでにない働きを持つ。現行の薬は、耐性ウイルスができて、早ければ数日で効かなくなるが、新型は耐性ウイルスが極めてできにくいという特徴もある。製品化されれば、治療の新たな切り札として期待される。 同教授によると、コードネーム「AK602」というこの新薬は、細胞の表面にあるCCR5というたんぱく質にくっつく。このたんぱく質は、HIVが人間の細胞に入り込む入り口。ここに異物がくっくことで、ウイルスは細胞に入れなくなる。 米国のエイズ患者計40人を対象に臨床試験を実施。 1日2回、1回600ミリグラムを10日間のんだ結果、ウイルス量が平均約100分の1に減り、600分の1まで減った患者もいた。副作用は、便が軟らかくなった人がいた程度だった。 AK602は、CCR5の全体ではなく、HIVの入り口部分を選んでふさぎ、人間にとって必要な働きをする部分はあまりふさがない。 さらに、従来の薬がウイルスを攻撃するタイプなのに対し、新型薬は人間の細胞に反応する。 このため副作用が出にくいという。また、今回対象にした40人のほぼ半数は、薬のほとんどが効かなくなった多剤耐性エイズの者で、この人たちにも大きな効果を示したことになる。(平成17年7月6日 朝日新聞)

HIV感染防ぐ遺伝子発見

エイズウイルス(HIV)が体に侵入した時、強い免疫反応を起こして感染を予防する遺伝子群があることを、近畿大医学部の宮沢正顯(まさあき)教授(免疫学)とイタリア・ミラノ大の研究グループが突き止め、英医学誌に発表した。エイズワクチンの開発に役立つ研究として注目される。宮沢教授らは、HIVに対し強い免疫反応を示し、体からHIVが検出されないイタリア人のHIV感染抵抗者と、抵抗者と4年以上性交渉をしてきたHIV感染者のカップル計42組84人、同じ地方に住む非感染者の市民47人の遺伝子を調べ、それぞれの違いを比較した。その結果、感染抵抗者は、22番目の染色体にある複数の遺伝子に、特定のDNA配列を持つ人の割合が高いことがわかった。このうち一つの遺伝子は感染抵抗者の3人に1人に見られ、感染抵抗者でない人の4・2倍に上った。22番目の染色体には、免疫細胞の働きを調節する複数の遺伝子がある。宮沢教授は「HIVが体に侵入しようとした時にいち早く反応して細胞への侵入をストップするか、感染した細胞を早い時期にたたく遺伝子があるため、感染しないと考えられる」と話す。(平成17年7月2日 読売新聞)

HIV感染防ぐ遺伝子発見、強い免疫反応

エイズウイルス(HIV)が体に侵入した時、強い免疫反応を起こして感染を予防する遺伝子群があることを、近畿大医学部の宮沢正顯(まさあき)教授(免疫学)とイタリア・ミラノ大の研究グループが突き止め、英医学誌に発表した。エイズワクチンの開発に役立つ研究として注目される。宮沢教授らは、HIVに対し強い免疫反応を示し、体からHIVが検出されないイタリア人のHIV感染抵抗者と、抵抗者と4年以上性交渉をしてきたHIV感染者のカップル計42組84人、同じ地方に住む非感染者の市民47人の遺伝子を調べ、それぞれの違いを比較した。その結果、感染抵抗者は、22番目の染色体にある複数の遺伝子に、特定のDNA配列を持つ人の割合が高いことがわかった。このうち一つの遺伝子は感染抵抗者の3人に1人に見られ、感染抵抗者でない人の4・2倍に上った。22番目の染色体には、免疫細胞の働きを調節する複数の遺伝子がある。宮沢教授は「HIVが体に侵入しようとした時にいち早く反応して細胞への侵入をストップするか、感染した細胞を早い時期にたたく遺伝子があるため、感染しないと考えられる」と話す。(平成17年7月2日 読売新聞)

イズ感染者・患者数、昨年初の1000人台

エイズは欧米先進国では感染拡大に歯止めがかかったとされるが、国内では若い世代を中心に拡大傾向が続いている。厚労省エイズ動向委員会によると、昨年1年間に新たに報告された感染者・患者数は計1165人と初めて1000人台に。累積報告数は4月時点で1万人を突破した。新規感染者の年代別では20代以下が約35%、30代が約40%と、若い世代が多い。感染経路別では性交渉の感染が大半で、男性同性間の性的接触が約60%。異性間の性的接触の感染者数は、24歳以下では女性が男性を上回る。エイズは感染から発症まで10年程度の潜伏期間があり、「エイズを発症した後、初めて感染に気づく」という事例が全体の約3分の一に上り、検査での早期発見が感染拡大の鍵とされる。(平成17年5月19日 日本経済新聞)

HIV2型、2例目

世界で広がるエイズウイルス(HIV)とは遺伝子タイプの違う「2型」と呼ばれるウイルスを、大阪府立公衆衛生研究所などが、国内に住む外国人男性から検出していたことが2日わかった。 国内で2型感染者として確認されたのは、2002年の韓国人男性に続き2例目だが、感染が拡大しているのか実態は不明。 同研究所などによると、2型ウイルスの感染者は、国内に住むアフリカ系外国人の30代男性。2型ウイルスは、西アフリカ地域に限局的に流行しているとされるタイプ。 1型に比べ感染から発症までの潜伏期間が長く、感染力も弱い(平成16年12月3日 読売新聞)

HIV感染者の5人に1人が、C型肝炎にも感染

日本国内のエイズウイルス(HIV)感染者の5人に1人がC型肝炎ウイルス(HCV)にも感染し、特に血液製剤による薬害エイズの被害者はほぼ全員が重複感染していることが28日までに、厚生労働省研究班の全国調査で分かった。 治療法の進歩でエイズ発症を抑えられるようになった結果、薬害被害者の死亡原因の半数以上を肝硬変などの肝疾患が占めるとのデータもある。研究班主任の小池和彦・東大医学部教授は「重複感染者は肝炎が急速に悪化する。HIVだけ注目して肝炎を軽視することなく、治療法を全国に周知して対策を急ぐべきだ」と警告している。調査は1月、全国のエイズ拠点病院を対象に実施。 2003年に受診したHIV感染者について尋ね、176施設(回収率48%)から4877人分の回答があった。HIVの感染ルート別にHCVとの重複感染率を尋ねた結果、薬害被害者811人中786人(96.9%)が、HCV感染を示す抗体検査で陽性だった。 HIV感染者全体でも19.2%に上った。(平成16年11月29日 日本経済新聞)

HIV感染者3940万人

世界保健機関(WHO)と国連エイズ計画(UNAIDS)は23日、世界のエイズウイルス(HIV)感染者(エイズを発症した患者を含む)が、年末までに3940万人に達するとの推計を発表した。今年1年間で新たに感染した人は490万人、エイズによる死者は310万人にのぼるとみられ、いずれも過去最多になるという。UNAIDSがまとめた報告書によると、過去2年で感染者・患者の増加が著しかった地域は、東アジアと東欧、中央アジア。特に東アジアが多く、34万人(45%)も増加した。中国で売血や薬物使用により感染が急拡大していることが主因と分析している。 日本については、1999年以降、男性の同性間感染が急に増え、献血時に感染が判明する比率も上昇していると記している。 報告書は、世界のほとんどの地域で女性の感染者・患者の割合が増えていると指摘。性行為では女性は男性よりも感染しやすいため、「エイズの流行を抑えるために女性の感染率を低下させることが重要」と強調している。 昨年の報告書には「感染者計4000万人、新規感染500万人」と記載されているが、誤差が大きかった。より詳細なデータを基に計算した結果、今年が「過去最多」と判明したという。(平成16年11月24日 読売新聞)

エイズウイルス感染者、患者数ともに過去最高

今年9月までの約3カ月間に国内で新たに報告されたエイズウイルス(HIV)感染者は209人、エイズ患者は126人で、いずれも過去最多だったことが厚生労働省エイズ動向委員会のまとめで分かった。20歳代の新規患者が急増、同委は「10年前後の潜伏期間を考えると中高生時代に感染した可能性がある」と感染の若年化を警戒している。今回の報告期間は6月28日―9月26日。感染者数は10人、患者数は20人、四半期ごとの最多記録を上回った。特に感染者数は今年4―6月期に続く最多更新で、増加に歯止めがかかっていない。感染者の4人に3人が20―30歳代。感染経路は男性同士の性的接触が全感染者の6割弱を占める。一方、患者は特に首都圏や東海で急増。20歳代は17人で、うち日本国籍は13人(女性4人)と「おそらく過去最多」(厚労省)。20歳代前半も目立つという。献血の際、HIV感染が発覚するケースも急増している。今年1―9月の献血者のうちHIV検査で陽性になったのは73人。昨年同時期は48人だった。(平成16年10月21日 日本経済新聞)

エイズ新治療薬、患者の26%からウイルス未検出

スイスの製薬会社ロッシュの研究チームは12日、バンコク北方のノンタブリで開会中の第15回国際エイズ会議で、エイズウイルス(HIV)の免疫細胞への侵入を防ぐ、新タイプの治療薬が、臨床試験の結果、従来の薬よりもかなり高い効果をもたらしたと発表した。 新治療薬は、細胞侵入阻害剤「エンフューヴィルタイド」(T20)。 この薬と従来の抗ウイルス薬2種類を組み合わせ、エイズ患者約1000人に対し投与したところ、約26%が2年間、HIVが検出できないままで維持されていた。 従来の抗ウイルス薬の3剤併用療法では、検出限界以下でウイルス量が維持される患者はT20の半分程度。 また、免疫機能を示す指標(CD4値)も従来の抗ウイルス薬に比べ、増加が顕著だった。 1日2回注射するのが患者には負担で、皮膚が炎症を起こしやすい、下痢などの副作用もあるが、米国では最近、エイズ治療薬の標準薬のリストに、この新治療薬を追加している。 現在使用されている抗HIV薬は、ウイルスが免疫細胞内に侵入後、ウイルスが増殖する際に必要な「逆転写酵素」と「タンパク質分解酵素」を阻害するものだったが、T20は、HIVが細胞に侵入する際に活動する特殊なたんぱく質を働かなくする作用がある。(平成16年7月13日 読売新聞)

エイズ死者、累計2千万人超える 

国連合同エイズ計画(UNAIDS)は6日、世界のエイズウイルス(HIV)感染者が03年末に3780万人にのぼり、同年の新たな感染者が480万人、エイズによる死者は年間290万人とする最新推計を発表した。また、81年に最初の患者が報告されて以来の死者累計が2000万人を超えたことも明らかにした。 昨年11月時点の03年末推計(感染者4000万人、死者年間300万人、新規感染者500万人)よりも低い数字となっている。 地域別の感染者はサハラ砂漠以南のアフリカが2500万人で最多だが、頭打ちの傾向にある。 一方、アジア地区では伸びが目立ち、感染者数が740万人、うち03年の新規感染者数が過去最高の110万人に達した。中国では、感染者が01年末の66万人から03年末には84万人に増加。UNAIDSは、同国で効果的な措置が取られなければ10年に感染者数が1000万人に達する可能性があると警告している。 また、ベトナムの感染者は03年末に22万人、日本は1万2000人、米国は95万人、ロシアは86万人という。(平成16年7月7日 朝日新聞)

HIV治療ワクチン“日本人向け”に開発

東大医科学研究所付属病院(東京都港区)が、エイズウイルス(HIV)の治療用ワクチンを実際に感染者に投与する臨床試験を、国内で初めて開始した。 遺伝的によく似た免疫細胞を持つ国民が多い日本人に狙いを絞ったワクチンで、実用化に成功すれば、発症予防のために副作用の強い薬の服用を強いられる感染者の金銭的、肉体的負担を大きく軽減できる。

HIVは、病原体を体内から取り除く免疫の仕組みを巧妙に逃れながら、免疫の司令塔となる細胞を少しずつ破壊していく。 同病院の岩本愛吉院長らは、感染者から取り出した健全な免疫細胞とHIVの断片を体外で混ぜ合わせ、標的とすべきウイルスの特徴を覚え込ませたうえで免疫細胞を体内に戻し、攻撃を促す方法を考えた。 免疫細胞がHIVを見分ける目印として、HIVに含まれる7種類のペプチド(たんぱく質のかけら)を人工合成した。

目印のペプチドは免疫遺伝子の型で異なるが、日本人の7割は同じ遺伝子を持つ。 臨床試験では、現在の標準的な治療法である3種類の抗ウイルス薬服用と同時に、このワクチンを2週間おきに計6回接種。抗ウイルス薬の服用を中断しても発症を防げるウイルス量に抑え込めるかどうかを、副作用とあわせ、2年間にわたり調べる。 ワクチン本来は、毒性を弱めた病原体などをあらかじめ接種し、感染を予防することが目的。天然痘根絶にも大きな役割を果たした。免疫力を刺激するだけで薬としての効果はないため、副作用の恐れは比較的小さく、近年は、感染後の治療としての利用法が注目されている。(平成16年1月4日 読売新聞)

輸血でHIV感染、日赤が検査体制見直し

日本赤十字社が献血血液に対して高感度の検査を導入後に初めて輸血を受けた患者がエイズウイルス(HIV)に感染したことで、29日に緊急に開かれた厚生労働省の委員会では検査体制の強化を訴える指摘が相次いだ。日赤は50人分の血液をまとめて行っていた「核酸増幅検査」(NAT)を20人分に減らし精度を高める方針を打ち出した。「恐れていたことがついに起きた」。29日に開かれた厚労省の血液事業部会運営委員会で、厚労省の担当者が説明すると、薬害エイズの被害者ら委員は、日赤などに詳しい状況の説明を求めた。 厚労省や日赤によると、HIVに感染しながら献血した男性は昨年11月にも献血をしていた。検査が目的の献血者も多いとされるが、今回の献血者が「検査目的かどうかは分からない」(日赤)。 同省は「今年5月の段階はすり抜けたが、潜伏期間を考えると、その半年前の献血ならばまだ感染していなかったとみられる」と説明した。 すり抜けた血液からは輸血用製剤ほか、血漿(けっしょう)分画製剤の原料と赤血球製剤が製造されていたが、日赤は原料血漿については回収、赤血球製剤は廃棄した。 今後、日赤は保管血液と患者の血液から検出されたウイルスの遺伝子型を分析して、輸血と感染の詳しい因果関係を調べる。(平成15年12月30日 日本経済新聞)

1日1回の投与で済むHIV薬を来月発売

米系製薬のブリストル・マイヤーズ(東京・新宿)はエイズウイルス(HIV)感染症治療薬「レイアタッツカプセル」を来年1月6日に発売する。他のHIV治療薬と併用するプロテアーゼ阻害剤というタイプ。1日1回の投与で済むため、患者の利便性が高い。 一般的な成人の場合、200ミリグラムのカプセルを1日1回2カプセル服用する。同じプロテアーゼ阻害剤に属する既存のHIV治療薬は1日2―3回の投与が必要だった。新薬剤は服用量が少ないうえ、脂質濃度への影響が少なく、健康に悪影響を及ぼす可能性が低い。 米国では7月から販売され、売り上げを伸ばしている。日本でも25日に薬価(薬の公定価格)が決定する見通し。英系のグラクソ・スミスクラインも別タイプで1日1回投与のHIV治療薬「エピビル」を日本で10月に発売している。(平成15年12月24日 日経産業新聞)

HIV感染者への初回HAART療法、AZT+3TC+EFVが最良の組み合わせ

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者に対する初回の多剤併用療法(HAART療法)を比較した米伊の無作為化試験で、検討した6通りの組み合わせの中では、ジドブジン(AZT、わが国での商品名:レトロビル)、ラミブジン(3TC、わが国での適応商品名:エピビル)とエファビレンツ(EFV、わが国での商品名:ストックリン)の3剤併用療法が、最も優れていることがわかった。

一方、初回治療としてジダノシン(ddI、わが国での商品名:ヴァイデックス)とスタブジン(サニルブジン、d4T、わが国での商品名:ゼリット)を含むレジメン(治療薬の組み合わせ)を用いた場合、副作用が問題となるケースが明らかに多かったという。研究結果は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌12月11日号に掲載された。

HAART療法では通常、ヌクレオシド系の逆転写酵素阻害薬(NRTI)2剤に、プロテアーゼ阻害薬(PI)または非ヌクレオシド系の逆転写酵素阻害薬(NNRTI)のどちらか1剤を組み合わせる。初回のレジメンが効かなくなったり、副作用のため続けられなくなった場合には、3剤とも前とは違う薬剤に切り替える。例えば、初回の3剤をNRTIの2剤とPIにした場合、次の3剤はNRTIの別の2剤とNNRTIにする。また、NRTI2剤にPIとNNRTIの両者を併用する4剤併用療法を最初から試すという考え方もある。

切り替えを前提とした3剤併用療法と、最初から4剤を組み合わせるという戦略は、どちらが優れるのか。切り替えを前提に3剤併用療法を行う場合、PIとNNRTIはどちらを先に処方した方が良いのか。NRTIの初回の組み合わせは−−。そうした様々な臨床上の疑問に答えるために計画されたのが、「ACTG 384」(AIDS Clinical Trial Group 384)研究だ。

ACTG 384研究では、抗HIV薬治療を受けたことがないHIV感染患者980人を、まず3剤併用療法群(620人)と4剤併用療法群(360人)に無作為に分けた。次に、3剤併用療法群を、先にPIのネルフィナビル(NFV、わが国での商品名:ビラセプト)を含むレジメンを処方する群と、先にNNRTIのEFVを処方する群とに分け、さらにそれぞれを、先行NRTI2剤としてAZT+3TCを処方する群と、先行NRTI2剤としてddI+d4Tを処方する群に分けた。一方の4剤併用療法群は、PIのNFV、NNRTIのEFVに加え、NRTI2剤としてAZT+3TCを用いる群と、ddI+d4Tを用いる群に分けた。

かなり込み入った設計の試験だが、要するに3剤併用療法が4群、4剤併用療法が2群の、計6群間で比較を行った。具体的には、1.初回AZT+3TC+NFV群(まずAZT+3TC+NFVを処方、効果不十分または副作用のためにこの3剤が使えなくなったらddI+d4T+EFVに切り替える)、2.初回AZT+3TC+EFV群(ddI+d4T+NFVに切り替え)、3.初回ddI+d4T+NFV群(AZT+3TC+EFVに切り替え)、4.初回ddI+d4T+EFV群(AZT+3TC+NFVに切り替え)、5.AZT+3TC+NFV+EFV群、6.ddI+d4T+NFV+EFV群−−の6群。

中央値で2.3年追跡したところ、「3剤併用を切り替える」戦略の4群中では、初回にAZT、3TCとEFVの3剤を用いた群で、初回の組み合わせが使えなくなるまでの期間、2回目の組み合わせが使えなくなるまでの期間の両者が、最も長いことが判明。抗ウイルス効果が現れるまでの時間も、最も早かった。

さらに、3剤併用を切り替える群と4剤併用群との間には、HIVコントロール期間に差がないことが判明。結局、今回検討した6通りの組み合わせの中では、AZT、3TCとEFVの3剤併用療法が初回治療として最も優れることが明らかになった。

また、副作用に関しては、初回治療にddI+d4Tを含むレジメンを用いた群で、麻痺や膵炎など臨床上問題となる副作用が多いことがわかった。以上から研究グループは、今回検討したレジメンの中から初回治療を選ぶ場合、AZT、3TCとEFVの3剤併用療法を行うべきで、ddI+d4Tを含むレジメンは採用すべきではないと結論付けている。(平成15年12月12日MedWave)


HIV感染最大4600万人、中国など急増懸念

国連は25日、エイズウイルス(HIV)感染に関する年次報告を発表した。今年末の世界の感染者数がおおむね4000万人、最多で4600万人に達する可能性があると推計。サハラ砂漠以南のアフリカで危機的な状況が続いているうえ、中国やベトナム、インドネシアなどアジアでも感染が急増していると警告、早急な対応を訴えた。年次報告によると、大人と子供を合わせたHIV感染者数はこの1年で少なくとも420万人、最も厳しく見積もった場合で580万人も増加した。累計の感染者数は少なくとも3400万人、最悪で4600万人までの間だとみている。(平成15年11月26日 日本経済新聞)

妊婦のHIV感染増加、年間推計100人超 

妊娠時の検査でエイズウイルス(HIV)感染に気づく日本人の妊婦が99年以降に目立って増えたことが、厚生労働省研究班(班長=稲葉憲之・独協医大教授)の調査でわかった。大都市圏だけでなく、地方都市でも確認され、外国人を含めると全国で年に100人以上と推計されている。ただ検査実施率は都道府県によって33〜100%近くと差が大きく、見逃されている恐れもある。結果は27日から神戸市で始まる日本エイズ学会で発表される。

国内で報告された感染者が99年に500人を超えるなど感染拡大が背景にあり、研究班は、若者への感染予防策の普及や啓発を呼びかけている。 調査は、国立成育医療センターの塚原優己医師(産科)らが、産科を掲げる約1670病院を対象に98年から実施(回答率64〜82%)。それ以前についても尋ねた。 その結果、87〜02年に感染が判明した妊婦は275人。 回答で国籍が確認できず「不明」な人もいるが、国籍がわかった人のうち日本人は102人。日本人の感染者は98年までは年に10人以下で、おおむね1〜5人だったが、99年に17人と急増して以降は16人、11人、14人と10人を超え、外国人より多くなった。 地方都市でもわかる例が増え、外国人を含めると、02年までに東北、四国、九州など31都道府県で確認されている。 99〜02年の4年間を平均すると妊婦10万人あたりの感染者は10.5人で、年間推定感染者は125人としている。一方、出産件数あたりの検査実施率は昨年は85%。静岡のほぼ100%など17都府県が90%以上だったのに対し、7県は50%以下。最も低い県は32.5%。感染の増加は検査の普及も一因とみられるが、元々実施率が高い地域でも増えている。

妊婦がHIVに感染していても、妊娠中から抗HIV薬を飲む 、帝王切開する 、母乳を飲ませない、などの対策で母子感染はほとんど防げる。 研究班の調査では帝王切開で出産した場合の母子感染率は1.6%。複数の薬を飲んでいた場合は感染していなかった。 通常の出産では17例中5例で母子感染が起きていた。5例とも薬を飲んでいなかった。 以前は感染がわかると3〜4割は中絶したが、対策の普及で出産例が増え、01、02年は1割に減っていた。 研究班は感染がさらに深刻化しかねないと懸念する。10代、20代の一般妊婦への調査で性感染症のクラミジアの陽性率が10〜25%と高いからだ。若者の無防備な性行動がうかがえ、クラミジア感染で2〜5倍もHIVに感染しやすくなる。 塚原医師は「感染しても薬で発症を抑えられるし、母子感染を防ぐこともできるようになった。感染に早く気づくよう検査の大切さを訴えたい」と話している。(平成15年11月25日 朝日新聞)

HIV陽性の妻2人妊娠、感染防ぎ出産 2児に感染なし

エイズウイルス(HIV)感染が分かってから子どもを産むことを希望した30代前半の女性2人が、東京の国立国際医療センターで出産していたことがわかった。 2児とも感染はないという。感染者の夫の精子からウイルスを除去して妻子への感染を防ぐ手法はすでに実現しており、今回は、妻が感染者でも子どもに感染させずに妊娠・出産できることを示した。国内で初めてだという。 2人は93年と96年に感染が判明。 抗HIV薬を組み合わせた多剤併用療法により、ウイルスが少ない状態を保ってきた。 2人とも非感染の夫の精液で人工授精し、それぞれ妊娠36週の昨年11月と同37週の今年3月、子どもへの感染防止に役立つとされる帝王切開で出産。 子どもには、出産直後に抗HIV薬シロップを飲ませた。 帝王切開など出産前後の手法は、HIV感染を知らずに妊娠してから感染が分かった女性に対してすでに実施されている。 同センターなどによると、HIVに感染しても発症を抑えて健康な人に近い生活を送ることが可能になり、子どもを希望する夫婦が増えている。今回の手法は、ウイルスを抑えられている女性を対象に時期を見極めて実施することができるため、妊娠後に女性の感染が分かった場合より、子どもへの感染の危険を低くできるという。 同センターは、不妊治療の技術の対象を拡大することになるため、同センター内の倫理委員会の承認を得て実施した。 夫婦の一方が感染者と分かると、医師からは感染する可能性のある形での性交を禁じられるのが通例で、子どもを持つには大きな困難が伴う。同センターの五味淵秀人医長(産科婦人科)は「感染予防の経験を積み、体制の整った施設でする必要がある」としている。 10月1日から東京で開かれる日本不妊学会で発表する。(平成15年9月23日 朝日新聞)

薬効かないHIV、国内で拡大 

発症を抑えるための薬が効かないエイズウイルス(薬剤耐性HIV)が国内でも広がっていることが分かり、厚生労働省の研究班による対策会議は6日、対策の柱を決めた。発生状況の把握、検査態勢の整備と精度向上、感染者の中途半端な服薬を防ぐための支援、適切な薬を医師が選べるようにする指針作りの4項目が中心になる。厚労省は来年度から、約1億円を出して耐性対策を具体化させる。HIVは完全に消滅させることはできないが、ウイルスの増殖を抑えることで、エイズの発症を遅らせることができる。日本には現在、抗ウイルス薬が20種類近くあり、97年以降、3、4種類を同時にのむ多剤併用療法が治療の主流になっている。この療法により、感染者の死亡率は大幅に低下したが、薬剤耐性HIVが広まれば、治療が困難になる恐れがある。 薬剤耐性HIVは治療中の感染者の体内で突然変異により生まれ、薬ののみ忘れなどで増える。欧米ではすでに新規感染者の1〜2割が耐性ウイルスを持っているとみられ、問題化している。 日本でも数年前から特定の薬が効かず、薬の選択に行き詰まる例が出てきた。この8月、全国14のHIV治療ブロック拠点病院を対象にした調査では、約半数の病院が「耐性ウイルスは増えていると思う」と答えた。 薬剤耐性HIVは治療前の感染者からも見つかり始めている。 国立国際医療センター(東京)が01年と02年に治療前の感染者138人でウイルスの遺伝子を調べたところ、4%から薬剤耐性を引き起こすと見られる変異が見つかった。 耐性検査は健康保険が適用されず、治療効果が上がらないときに医師が任意で実施している状態。検査精度にもばらつきがあり、検査数が増えれば対応できなくなる恐れがある。 このため、国立感染症研究所エイズ研究センターの杉浦亙・第2研究グループ長が中心になり、この8月、医師や看護師、患者らで対策作りを検討してきた。 日本のHIV感染報告者は1万人近くに上り、ここ2年間、毎年約600人ずつ増えている。現在、約4000人の感染者が治療を受けている。国のエイズ対策予算は年間約100億円。(平成15年9月6日 朝日新聞)

国内初エイズ予防学センター設立へ 

先進国で唯一、エイズウイルス(HIV)感染者が増えている日本に、予防対策の拠点となる「エイズ予防学研究センター」を設立する動きが進んでいる。大学教授らが中心になり、医学だけでなく社会学や心理学、教育学も含めた学際的な「エイズ予防学」を確立し、効果的な予防対策を考えていく。来春にも設立する予定で、国内初の「エイズ予防」を専門とした研究機関になる。 設立の中心となるのは京都大大学院医学研究科の木原正博教授(国際保健学)と妻の木原雅子助教授(同)。国内にエイズの臨床や基礎研究の機関はあるが、欧米のように予防を主目的とした組織はなかった。そのため木原教授らは民間主導でのセンター設立を構想。一般からの寄付が約2000万円集まり、これを資金に、国内外の研究者を数十人規模のネットワークで結んでスタートする。 センターの活動の柱は(1)日本の文化に適した予防モデルの構築(2)国内外の予防対策専門家の養成(3)疫学情報の収集・発信の三つ。 例えば「エイズの知識があってもコンドームを使わない若者が多い」という状況の背景には「使うのは軟弱」という風潮や、「未成年者へのコンドーム奨励」に否定的な考え方もある。こうした社会状況を勘案しながら効果的な予防教育のあり方を考える。 木原教授は「啓発パンフレットやイベントだけでなく、若者のニーズに合った科学的な予防対策が必要」と話す。 国内のHIV新規感染者数は増加傾向にあり、95年の277人が02年には614人に倍増した。特に10〜20代の割合が増えており、予防教育の必要性が指摘されている。(平成15年8月18日朝日新聞)

4〜6月の新規HIV感染者は135人、10代の感染者3人の報告あり

厚生労働省のエイズ動向委員会が8月1日付けで発表した2003年4〜6月(3月31日〜6月29日)のHIV新規感染者数は135人、後天性免疫不全症候群(AIDS)新規患者数は81人だった。前回報告期間(1〜3月)のHIV感染者146人、AIDS患者68人、前年同時期のHIV感染者149人、AIDS患者77人と比較すると、HIV感染者数はやや減少したが、AIDS患者数は増加している。年齢別では、新たに10代のHIV感染者が報告されたことが注目される。ほかの年代では20代が44人、30代が48人、40代が21人、50代以上が19人だった。HIV感染者数は、同性間性的接触によるものが76人で、次いで異性間性的接触によるものが33人となっている。AIDS患者では同性間性的接触によるものが31人で、前回の12人から大きく増えている。異性間性的接触によるものは27人で前回と同等だった。これらのAIDS患者について、委員会では、「HIV感染しても発症するまで受診しない人々であり、自発的な検査へ導く啓発の充実が必要」としている。2003年1〜6月に献血によって陽性が判明したのは、総献血件数281万8053件のうち22件で献血10万件当たり0.78件だった。(平成15年8月7日medwave)

治療薬効かぬHIV、国内で急速拡大

治療薬の効かない性質(耐性)を持つエイズウイルス(HIV)が国内で急拡大していることが、国立名古屋病院の調査で分かった。耐性HIVの増加は東京でも最近報告されたが、大規模な今回の調査で急速な拡大ぶりが確実になった。耐性HIVは、エイズの死亡率を高めるため世界的に問題化しており、厚生労働省も事態を重視。耐性HIVに関する専門家プロジェクトを8月に発足させ、具体策の検討に乗り出す。同病院で、未治療の新規感染者から採取したHIVを分析した。耐性HIVの検出率は、1999―2001年は計75人中4人(5・3%)だったが、2002年は41人中7人(17・1%)と急増。日本人に限ると、1999―2001年の56人中1人(1・8%)から2002年は30人中6人(20・0%)になった。発症を抑える抗ウイルス剤で、体内に耐性HIVが発生することがある。 こうした患者の一部が他人に性行為などで感染させ治療前から薬の効かない感染者が増えているらしい。(平成15年7月30日読売新聞)


国内のエイズ感染者 5年で倍増、2006年「2万人突破」

「国内のエイズウイルス(HIV)感染者は3年後2万2000人に、エイズを発症した患者は5000人に達する」との予測結果を厚生労働省研究班がまとめ、12日発表した。 感染者数は2001年末時点の推計値のほぼ2倍となる。 班長の橋本修二・藤田保健衛生大教授は「国内のHIV感染者数は欧米に比べ急激に伸びている。 危機感を持って対策を強化すべきだ」と警鐘を鳴らしている。 予測の根拠は、各都道府県から報告された1985―2001年のHIV感染者数とエイズ患者数。 この間、感染者、患者ともに増加傾向にあった。 安全意識の薄い若年層を中心に予防措置を講じない性交渉が広がっていることなどが原因とみられ、研究班は2006年までこうした傾向が変わらないと仮定して計算した。(平成15年6月13日読売新聞)

HIVの増殖防ぐたんぱく質、米大チームが特定

米ロックフェラー大学のリンキ・ジャン研究員らのグループが、エイズウイルス(HIV)が人体内で増えるのを防ぐ血液中の特殊なたんぱく質を突き止めるのに成功、27日付の米科学誌サイエンスに発表する。 今後研究が進めば、革新的なエイズの発症予防薬や治療法などの開発につながる可能性があるという。 HIVの感染者のなかには、いつまでたってもエイズの症状が表れない人がいる。免疫細胞の一種(CD8陽性T細胞)が特殊なたんぱく質を分泌し、HIVの増殖を抑え込んでいるとみられていたが、正体がわからなかった。(平成14年9月27日日本経済新聞)

新タイプのHIVキラー、大阪大研究グループが発見

人間の免疫細胞に感染したエイズウイルス(HIV)の持つたんぱく質を細胞核の内部に閉じ込め、ウイルスを死滅に追いやる物質を、大阪大薬学研究科のグループがオミナエシの仲間から見つけた。現在使われている治療薬とは全く異なるメカニズムのもので、実用化されれば他の薬と相乗効果をもたらす新たな治療薬になると期待される。 HIVは、免疫細胞(リンパ球)に侵入し、細胞核内にあるDNAに自分の遺伝子を組み込む。ウイルスの遺伝子が核内で作ったRNA(たんぱく質の鋳型)は、核の外へ出て、細胞の働きを利用してたんぱく質を作り、増殖する。 村上啓寿(のぶとし)助教授らは、HIVに特有のRevというたんぱく質がHIVのRNAにくっつき、核内にある「運び屋」の物質に導かれ、「たんぱく質製造工場」のある核外の細胞質に出てくることに着目。運び屋物質とRevの結合を抑える方法を探った。 生薬の成分などを試したところ、オミナエシ科のカノコソウの根から結合抑制物質を発見。試験管内で、HIVに感染させたリンパ球に混ぜたところ、RevとRNAは核外へ出られなくなり、HIVは生存に必要なたんぱく質を作れず、81%の高率で死滅した。 これまでのエイズ治療薬は、ウイルス遺伝子の組み込みを妨害する逆転写酵素阻害剤と、HIVたんぱく質を正常に作れなくするプロテアーゼ阻害剤の2タイプ。これらの併用で、発病を遅らせる効果を上げてきたが、完治はせず、薬が効かなくなる耐性や、強い副作用の出る場合もある。 村上助教授は「従来の薬とは仕組みが違うので、相乗効果で治療効果が高まる可能性がある。耐性の克服や副作用の緩和などにも役立つだろう」と話している。(平成14年8月3日読売新聞)

エイズウイルス増殖阻む遺伝子

エイズウイルス(HIV)が体内で増殖するのを防ぐ遺伝子を、英米の共同研究チームが発見し、15日、英科学誌「ネイチャー」電子版に発表した。HIVが作り出す「Vif」というたんぱく質が、この遺伝子の働きに対抗していることも判明。研究者らは「Vifの働きを抑える方法を開発すれば、新たな治療法につながる」と期待している。 英王立ロンドン大のマイケル・マリム教授らは、実験用の様々な細胞の中に、Vifの量が少ないとHIVが増殖しない「非許容細胞」が数種類あることに着目。この非許容細胞には「CEM15」という遺伝子が必ずあることを発見した。また、他の細胞にCEM15遺伝子を注入すると、HIVが増殖しない非許容細胞に変わることも分かった。 実験結果から、同教授らは「VifがCEM15の働きを抑制している」と判断し、「従来の治療薬と全く違った仕組みで働くエイズ治療薬を作れる可能性が出てきた」としている。(平成14年7月15日読売新聞)

エイズ予防にワクチン治験へ

エイズ発症を予防するワクチン開発を進めてきた国立感染症研究所とタイの科学者グループが、サルを使った動物実験に成功した。専門家の国際ミーティングでも、このワクチンの安全性と有効性は認められ、人間に投与する臨床試験の実施が了承された。早ければ来年中にも、タイで試験を開始する。 世界各国でエイズワクチンの開発競争が行われているが、国内プロジェクトで臨床試験への移行のめどがついたのは初めて。今回のワクチンは安価で製造も比較的簡単なことから、実用化に成功すれば、世界に約4000万人と感染拡大が進むエイズの予防に大きく寄与すると期待されている。 研究グループは、本多三男・エイズ研究センター第1研究グループ長を中心とした同研究所などのメンバーとタイ側研究者の計約30人で構成。1992年から基礎研究に取り組み、98年からは科学技術振興事業団(JST)のプロジェクトとして共同研究を進めてきた。 開発中のワクチンは、結核予防に使われるBCGワクチンと、天然痘ワクチンの一種「ワクシニアDIs」に、それぞれHIV(エイズウイルス)の遺伝子を組み込んだもの。広く使用実績のあるBCGや人間の体内で増殖しないDIsを使うことで、安全性も高いという。 昨年春以降のサルを使った実験では、BCG、DIsの順に半年置いてワクチンを投与した3頭にSIV(サルのHIV)とHIVを組み合わせたSHIVを接種したところ、3頭とも一時的にウイルス量が増加したが、その後、2頭は検出限界を下回るレベルにまで低下した。残る1頭もエイズを発症しない程度の量を保った。ワクチンを投与しない対照群や1種ずつを投与した群、投与の順序を変えた群は、いずれもウイルスを抑制できなかった。 研究グループは今年2月、WHO(世界保健機関)やCDC(米疾病対策センター)などのエイズワクチンの専門家をタイに招いて動物実験の成績について評価を求めた結果、人間に実際にワクチンを接種する臨床試験の実施が妥当とする見解を得た。 世界的にも、HIVのDNAの一部を使うなどの方法で、様々なエイズワクチン開発のプロジェクトが進行している。約10グループがすでに臨床試験段階に入っているが、今回のワクチンは「サルの実験では、現段階で最も有効とされるグループのワクチンと比べても、そん色のないデータが出ている」(山本直樹・エイズ研究センター長)という。 WHOで世界天然痘根絶対策本部長を務めた蟻田功・国際保健医療交流センター理事長の話「本多ワクチンの特徴は、世界中で接種されているBCGを使用していること。安全性が高く世界に広めやすいという利点があり、期待できる。将来、製造段階に入ることも視野に入れて、今から準備を進めるべきだ」(平成14年5月28日 読売新聞)

母子感染防げ、妊婦へエイズ検査の勧め

日本産科婦人科学会は、妊婦に対するHIV(エイズウイルス)の抗体検査を推奨することを決め、近く全国の産婦人科医に周知する。厚生労働省研究班の調査によると、妊婦から子へのHIVの感染率は、通常の出産では約33%とされるが、抗ウイルス薬を使い帝王切開すれば約2%まで減らせることが判明。出産前に検査するメリットが大きいと指摘されていた。 ただし、HIV感染はプライバシーにもかかわることから、同学会は、医師らに対し、妊婦に<1>母子感染の予防対策ができる<2>妊婦本人の早期発見と治療ができる<3>感染判明後もプライバシーは保護される――などを十分に説明し、同意を得るよう強調している。 まず感染の可能性を大まかにみる抗体検査を各病院で受けてもらい、陽性だった妊婦には、各地区のエイズ拠点病院などに相談しながら、確認検査を受けるよう勧めていく。 国内でHIVに感染している妊婦は、1999年1年間で39人に達し、2000年10月までに延べ217人を数えるなど年々増える傾向にある。98年には、妊婦1万人に1人の割合で感染しているという報告も出されている。 母親の方は、HIV治療法の開発などで、感染しても長期生存が可能となってきているが、母子感染した子供の長期生存はいまだに難しいのが現状だ。 検査を推奨することで、針刺し事故などでの医師への感染を防ぐ効果もあるとしている。同学会は今月発行の学会誌に掲載し、会員の周知徹底をはかる。(平成14年4月9日 読売新聞)