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●ステロイド注射 ステロイドは強力な抗炎症作用があります。関節内注射、腱鞘内注射、滑液包内注射、神経管内注射として用いられます。 「ステロイド関節内注射」は、激しい疼痛を認める関節炎、頑固な関節水腫(関節に水がたまる状態)を有する関節炎に使用されます。「腱鞘内注射」は、腱鞘炎に用いられ、「滑液包内注射」は滑液包炎に用いられ、「神経管内注射」は神経炎の治療にも用いられます。ステロイドの種類は、持続時間によって短時間型、中時間型、長時間型に分けられます。 適応については、年齢や患者さんの生活様式、趣味、運動量を考慮し、糖尿病や緑内障、心疾患、肝疾患、腎疾患などの併存症に留意して使用します。また、使用部位が加重関節(膝や股、足のように体重がかかる関節)か非加重関節(肩や肘、手など体重がかからない関節)かによって使用頻度を検討します。 ●ヒアルロン酸注射 関節の軟骨はヒアルロン酸とタンパクなどを豊富に含む関節液で栄養されています。(軟骨には血管がないので、血液が軟骨の栄養源にはなりません)。ヒアルロン酸は関節包(関節の袋)の内面にある滑膜より分泌され、軟骨の合成や関節の潤滑作用に関与しています。したがって、関節内にヒアルロン酸注射することで軟骨が保護され関節症の進行を遅らせる作用があります。 また、関節内に水が溜まりヒアルロン酸の濃度が低下すると、潤滑作用や関節の動きが悪くなります。ヒアルロン酸を注入することで関節内のヒアルロン酸の濃度が高められ、関節可動域(動き)の改善や関節水腫の改善をもたらします。あたかも、車のエンジンオイル(ヒアルロン酸)がエンジン(関節)の磨耗と摩擦を軽減し歯車の動きを滑らかにする作用に似ています。 さらにヒアルロン酸は滑膜に反応して発痛物質である炎症性サイトカインやプロスタグランジンなどの発生を抑制し、痛みを緩和する作用があります。副作用はほとんど無く非常に安全で使いやすい注射剤です。医療保険の関係で使用回数は連続週5回投与となっています。症状の改善度に応じて使用回数を増減します。 変形性膝関節症や肩関節周囲炎、関節リウマチの3疾患が保険適応になっております。他の部位の関節炎に使用しても同様な効果はあると考えます。ただし、保険適応にはなりません。また、潤滑作用を有するので腱鞘炎にもよい効果があると思います。腱鞘炎にも保険適応はありません。 ●飲むヒアルロン酸について 関節軟骨は柔らかいスポンジのような硝子軟骨で、軟骨細胞と軟骨基質(水分+プロテオグリカン+U型コラーゲンなど)からなっています。ただし、関節軟骨には血管や神経がありません。そのため、軟骨の栄養源は血管からではなく関節の袋の滑膜から分泌される関節液です。 関節液には軟骨の栄養素となるヒアルロン酸やタンパク質などがたくさんあります。軟骨はスポンジのように柔らかいものですから、歩行などの荷重時(体重がかかる時)は軟骨は潰されます。荷重から解放されると元の大きさの軟骨に膨らみます。その際、関節液内のヒアルロン酸が軟骨内に吸い上げられ、軟骨に浸透し栄養源となります。 これの現象は、バケツに水を入れて手でスポンジを潰した状態で手を離すとスポンジの中に水が注入されるイメージです。軟骨には血管がありません。したがって、ヒアルロン酸を飲んでも食べても軟骨の栄養源になりません。
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